
内大臣と源氏は大体は仲のよい親友なのであるが、
ずっと以前から性格の相違が原因になったわずかな感情の隔たりはあったし、
このごろはまた中将を侮蔑《ぶべつ》して
失恋の苦しみをさせている大臣の態度に飽き足らないものがあって、
源氏は大臣が癪《しゃく》にさわる放言をすると間接に聞くように言っているのである。
新しい娘を迎えて失望している大臣の噂《うわさ》を聞いても、
源氏は玉鬘《たまかずら》のことを聞いた時に、
その人はきっと大騒ぎをして大事に扱うことであろう、自尊心の強い、
対象にする物の善《よ》さ悪さで態度を鮮明にしないではいられない性質の大臣は、
近ごろ引き取った娘に失望を感じている様子は想像ができるし、
また突然にこの玉鬘を見せた時の歓《よろこ》びぶりも思われないでもない、
極度の珍重ぶりを見せることであろうなどと源氏は思っていた。
夕べに移るころの風が涼しくて、
若い公子たちは皆ここを立ち去りがたく思うふうである。
「気楽に涼んで行ったらいいでしょう。
私もとうとう青年たちからけむたがられる年になった」
こう言って、源氏は近い西の対を訪《たず》ねようとしていたから、
公子たちは皆見送りをするためについて行った。
日の暮れ時のほの暗い光線の中では、
同じような直衣《のうし》姿のだれがだれであるかもよくわからないのであったが、
源氏は玉鬘に、
「少し外のよく見える所まで来てごらんなさい」
と言って、従えて来た青年たちのいる方をのぞかせた。
「少将や侍従をつれて来ましたよ。
ここへは走り寄りたいほどの好奇心を持つ青年たちなのだが、
中将がきまじめ過ぎてつれて来ないのですよ。
同情のないことですよ。
この青年たちはあなたに対して無関心な者が一人もないでしょう。
つまらない家の者でも娘でいる間は若い男にとって好奇心の対象になるものだからね。
私の家というものを実質以上にだれも買いかぶっているのですからね、
しかも若い連中は六条院の夫人たちを恋の対象にして
空想に陶酔するようなことはできないことだったのが、
あなたという人ができたから皆の注意はあなたに集まることになったのです。
そうした求婚者の真実の深さ浅さというようなものを、
第三者になって観察するのはおもしろいことだろうと、
退屈なあまりに以前からそんなことがあればいいと思っていたのが
ようやく時期が来たわけです」
などと源氏はささやいていた。
この前の庭には各種類の草花を混ぜて植えるようなことはせずに、
美しい色をした撫子《なでしこ》ばかりを、唐撫子《からなでしこ》、
大和《やまと》撫子もことに優秀なのを選んで、
低く作った垣《かき》に添えて植えてあるのが夕映《ゆうば》えに光って見えた。
公子たちはその前を歩いて、
じっと心が惹《ひ》かれるようにたたずんだりもしていた。
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