
「私のような男でなかったら愛をさましてしまうかもしれない衰退期の顔を、
化粧でどうしようともしないほど私の心が信じられているのがうれしい。
あなたが軽率な女で、ひがみを起こして別れて行っていたりしては、
私にこの満足は与えてもらえなかったでしょう」
源氏は花散里に逢《あ》うごとによくこんなことを言った。
永久に変わっていかない自身の愛と、
この女の持つ信頼は理想的なものであるとさえ源氏は思っていた。
親しい調子でしばらく話していたあとで、西の対のほうへ源氏は行った。
玉鬘《たまかずら》がここへ住んでまだ日の浅いにもかかわらず
西の対の空気はしっくりと落ち着いたものになっていた。
美しい童女によい好みの服装をさせたのや、若い女房などがおおぜいいて、
室内の設備などはかなり行き届いてできてはいるが、
まだ十分にあるべき調度が調っているのではなくても
とにかく感じよく取りなされてあった。玉鬘自身もはなやかな麗人であると、
見た目はすぐに感じるような、
あのきわだった山吹の色の細長が似合う顔と源氏の見立てたとおりの派手な美人は、
暗い陰影というものは、どこからも見いだせない輝かしい容姿を持っていた。
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