
一方、女房装束に身をやつし、
市女笠《いちめがさ》で顔をかくして
三井寺へ落ち行く高倉宮は、高倉小路を北にとり、
更に近衛大路を東にすすんだ。
月を映してさわやかに流れる賀茂川を渡れば、
もう如意《にょい》山である。
追われる身の宮は踏みなれぬ夜の山路をひたすら急いだ。
御殿育ちの身である、宮の足は何時しか血にまみれ、
立ち止まって一息つけば、足下の砂は紅に染まった。
夏草の露は宮の裾《すそ》をぬらした。
疲労にもつれる足は一層重くなったが、
心をはげましては山路をひたすら急いだ。
宮が目指す三井寺へ到着したのは、
暁方、東の空すでに白み、
高い樹木の梢には朝陽がさしていた。
夜を徹しての山路歩きで、宮の顔はやつれ果てていた。
「この寺の衆徒を頼みに、参ったぞ」
という宮の言葉は、多くの寺の中から、
この寺だけがえらばれたという感動を三井寺の衆徒に与えた。
喜んだ寺側はただちに法輪院に御所をしつらえ、
心身ともに疲れた宮に食事を差しあげたのであった。
🌌🎼星が落ちる written by のる
少納言のホームページ 源氏物語&古典 少納言の部屋🪷も ぜひご覧ください🌟https://syounagon.jimdosite.com
🪷聴く古典文学 少納言チャンネルは、聴く古典文学動画。チャンネル登録お願いします🪷