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【平家物語90 第4巻 園城寺へ入御】女房装束に身をやつし、 市女笠で顔をかくして 三井寺へ落ち行く高倉宮は、高倉小路を北にとり、更に近衛大路を東にすすんだ。月を映してさわやかに流れる賀茂川を渡れば、もう如意山である。 追われる身の宮は踏みなれぬ夜の山路をひたすら急いだ。

一方、女房装束に身をやつし、

市女笠《いちめがさ》で顔をかくして

三井寺へ落ち行く高倉宮は、高倉小路を北にとり、

更に近衛大路を東にすすんだ。

月を映してさわやかに流れる賀茂川を渡れば、

もう如意《にょい》山である。

追われる身の宮は踏みなれぬ夜の山路をひたすら急いだ。

御殿育ちの身である、宮の足は何時しか血にまみれ、

立ち止まって一息つけば、足下の砂は紅に染まった。

夏草の露は宮の裾《すそ》をぬらした。

疲労にもつれる足は一層重くなったが、

心をはげましては山路をひたすら急いだ。

宮が目指す三井寺へ到着したのは、

暁方、東の空すでに白み、

高い樹木の梢には朝陽がさしていた。

夜を徹しての山路歩きで、宮の顔はやつれ果てていた。

「この寺の衆徒を頼みに、参ったぞ」

という宮の言葉は、多くの寺の中から、

この寺だけがえらばれたという感動を三井寺の衆徒に与えた。

喜んだ寺側はただちに法輪院に御所をしつらえ、

心身ともに疲れた宮に食事を差しあげたのであった。

🌌🎼星が落ちる written by のる

 

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