以下の内容はhttps://sylphes.hatenablog.com/entry/Review_Story_of_a_Little_Mermaid_NNTT_20240729matineeより取得しました。


新国立劇場『人魚姫』2024/07/29Matinée - レビュー

 こんばんは、茅野です。

先日、26になりました。この間まで高校生だった気がするのですが、どうしたことだ。わたしが『オネーギン』に衝突したのが16歳の頃ですから、もうオタク歴10年目ということになります。そんな馬鹿な……まだ『オネーギン』のこと何もわからないのに……。

 従って、非常に残念ながら U25 に座れなくなりました。たまに席を融通してくださる読者さんがいらっしゃいますが、以後は U25 は受け取れなくなりますのでご承知おきくださいませ。

 しかしその代わり、26歳になったということは、これを言う楽しみができたということです。わたしはこの瞬間を待っていたのだ。

Дожив без цели, без трудов   目的も、務めもなく
До двадцати шести годов,    26歳まで漫然と暮らし
Томясь в бездействии досуга    無為の余暇に苦しみながら
Без службы, без жены, без дел, 仕事も、妻も、やることもなく
Ничем заняться не умел.    何にも打ち込めないでいた

  - Евгений Онегин. Глава VIII, Строфа XII.

 これまでテキトーな生き方をしてきてよかったです(?)。そういえば、以前、占い師をしている知人に「茅野は26歳までテキトーに生きてると出た」と言われたことがあり、思わず「オネーギンじゃん……」と言ってしまったことを思い出しました。大体あってた。占いすげー。

 

 さて、現在レビューマラソンを走っています。ちょっと溜めてしまったので急ぎ足で駆け抜けます。

↑ 前回のレビュー記事。

 

 今回は、新国立劇場の「こどものためのバレエ劇場」の『人魚姫』に関してになります。7月29日マチネの回です。

↑ なんか html 見えてるけど体裁大丈夫か?

 この日は元々米沢唯さんが主演される予定の日でしたが、恐ろしいニュースがあり、降板に。

心配ですね……。お大事にされて欲しいです。無理のないように復帰されたら嬉しいです。

 

 時間も経ってしまいましたし、今回は備忘がてらこちらの雑感を極簡単に記して参ります。

それでは、お付き合いの程宜しくお願い致します!

 

 

キャスト

人魚姫:廣川みくり
王子:速見祥悟
海の女王:奥村康祐
振付:貝川鐵夫
録音指揮:冨田実里
録音演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

 

雑感

 最初に思ったこと。ちゃんと客層は子供が多い!

正直に言って、「こどものための~と言いつつ、キャストファンの大人が買い占めちゃうのでは……」と穿った目で見ていたので、シンプルに意外でした。ちゃんと「こどものためのバレエ」を子供が観ている。健全だ。わたしも精神年齢は3歳児なので子供ということで宜しくお願いします。

 

 今回は2階席で観ました。U25 だと1階が多いですし、安席だと4階席になりますから、2階席で観るのは初めてかもしれません。新国はどこからでも概ね観やすくて良い劇場ですよね。

 

 子供向けということもあってか、いつもより場内アナウンスは短めで、波の音が流れ、徐々に暗くなって舞台が始まります。叙情的で良いではありませんか。

 

第1幕

 舞台は19世紀末らしいです。なるほど、結構具体的に指定してくるわけですね。近代オタクとしては嬉しい設定です。

原作のアンデルセンの童話『Den Lille Havfrue』は1837年発表なので、原作を鑑みても大分時代をズラしていることになります。

 今年はKバレエも『人魚姫』を題材に新作を作るそうですし、バレエ界では『人魚姫』がトレンドなんでしょうか。被らないように打ち合わせたりしないのか。

まあ、個人的には、デンマーク語学習もぼちぼち続けていますし、昨年は現地に行ってきましたし、アンデルセン童話が愛されるのは喜ばしいことです。

 

 さて、本編に関して。水中ということもあってか、書き割りなども殆ど無いシンプルなセット。新国君は常に予算がない水中というのは、予算面でも良いところがあったのか……。

 コール・ドのお衣装が何の水生生物を模しているのかは測りかねました。正解を教えてください。

 

 第1幕で美しいのは、ハープを基調とした音楽。ドビュッシーの『神聖な舞曲と世俗的な舞曲』です。

↑ 特に前半の神聖な舞曲は水中感がある。

 やはりハープは水中を描写するのに適した楽器ということでしょうか。我らがオースティン・ウィントリー御大も『ABZU』のコメンタリーでハープの話をされていますね。

↑ これは以前書いた英語の翻訳。我ながら頑張ったと思う。

 『ABZU』はわたしが最も好きなゲームの一つで、このブログでもかなり熱を入れて記事を書いている題材ですが(→記事一覧)、ダイバーとなって水中を冒険する作品で、夏にピッタリの名作です。

ストーリーやディテールも素晴らしいのですが、音楽が素晴らしくてですね! ハープが活躍する曲を一曲ご紹介しておきます。『ABZU』の音楽は基本ずっと水中を表しますが、ハープが7台も使われていて豪華な編成です。ウィントリー先生、自ら楽譜を公開されるとは余りにも太っ腹すぎる。

↑ ハープの文脈で申し訳ないですが、わたしは 2:48~ のファゴットが何よりも好き。

 急にダイマになってしまいましたが、夏に最もやりたくなるゲームなので、是非とも。わたしはこの作品のお陰でアッカド神話と水生生物のリサーチが進み、大変勉強になりました。

  • 505 Games

↑ 『ABZU』のお陰で水族館に行くのが本当に楽しくなりました! 夏は毎年やりたくなる。

  • T-65b Records

↑ サントラは本当にハズレ曲ないです。全部好き。

 

 さて、話が逸れましたが、音楽は様々な作曲家の曲を組み合わせた大胆なポプリ形式。

有名どころでは、『ジムノペディ』、『亜麻色の髪の乙女』、『ワルツ・ファンタジア』などが使われています。

 個人的には、複数の作曲家の曲を無作為にごちゃ混ぜにする行為は全く好まないのですが(『海賊』とか……)、今回は「"こどものための" がコンセプトなのだし、耳馴染みの良い曲を組み合わせるのは悪いことではないかな」と、我ながら意外にも好意的に受け止めることができました。子供が楽しめれば良かろう!

レッスンの音楽だって有名曲メドレーみたいなものですし、そう捉えれば意外と受け入れられるものだな……と、意外な発見。選曲も悪くないですしね。

 でも、言い方が難しいですが、「真面目な作品」でそれをやるのは辞めて欲しいですね、やっぱり。

 

 遊泳をイメージしてか、『マノン』のような3人で上げるリフトが特徴的です。ワイヤーなどを使わなくてもちゃんと泳いでいるように見える! 舞台となる海域って水深どれくらいなんでしょうね。

個人的には『アマゾンのフロレンシア』のカワイルカをちょっと想起しました。

↑ 『フロレンシア』はいいぞ。記事の後半はネタバレ注意。クリストバル――――!!!!(ネタバレにならない範囲の全視聴者の叫び)。

 

 タイトルロール、人魚姫。お衣装はサムネイルにもあるように、オレンジです。しかしオレンジだと、日本人にとっては金魚というか淡水魚を想起しやすいような気も。まあ人魚は架空の生き物ですから、鱗の色なんて知りようがないんですけれども。

鱗ではなく肌の色に関しては、是非こちらを観てください。女の子たちの反応が良すぎる。

↑ 日本の時事を学びつつ倫理観鍛えられるので、#NoHateTV よく観てます。布教。

 

 人魚姫は、急な代役で大変だっただろうと思いますが、遜色なく仕上がっていました。流石。

強いて言うなら、少し背中の動きが硬いように感じられました。まだまだ伸びやかになる気がします。

後ろ向きのパドヴレが滑らかで綺麗です。

 

 座ったり、寝そべった状態で後ろ足をパタパタしているのが愛らしいです。尾を表現しているのかな。

人魚姫は、魚類の尾を持ち、後に人間の足に変わりますが、1幕で「足が生えたよ~」というマイムがあるだけで、その明確な差異はなく、足の変化に関する表現はいまいち。しかし、それがバレエである以上は足を隠すわけにはいきませんから、まあ正直予想できたことではあります。

 それにしても、足の使い方覚えるのはやいな! 原作では歩く度に鋭い痛みがある設定なんですけどね! まあその状態では踊れないであろうから致し方なし。

 ……『人魚姫』って、一番バレエに向かない題材の一つなのでは?

 

 深海の女王はディズニー映画がモデルか、タコがモティーフ。海外ではタコやイカが不気味なものとして扱われることが多いですが、日本人にはあまり通用しないのでは? と思いつつ。いいですか? 皆さん、タコを買う時はモーリタニア産を選ぶのですよ!! あの国、経済ガタガタなのに、それくらいしか産業がないものですから、是非ご支援を下さい。

 お衣装が面白いです。ちゃんと実際の足を含めて8本足になっている。トウシューズ履いてますか? やる気満々だ。

 非常にどうでもいいのですが、個人的に、女装するバレエといえば勿論『明るい小川』。『明るい小川』といえばバレエダンサー役。バレエダンサー役といえばルスラン・スクヴォルツォフ。ルスラン・スクヴォルツォフといえば胸毛です!! バレエで女装するからには胸毛ください!!(?)。

※絶対に自室で一人の時に観ること。

圧倒的出オチ。これで笑わない人類いる?? 是非最後まで観て。

 ルスランのせいで、男性ダンサーが女装するときに黒々とした胸毛がないとどうしても物足りないと感じる呪いに罹ってしまった……。皆さんもこれで罹患したはずです、おめでとうございます!

(高校生の頃、これにハマりすぎてフォロワーに胸毛フェチだと勘違いされていたことは内緒だ。)

 

第2幕

 休憩を挟みまして第2幕。

 

 コール・ドは演技をもっと頑張りましょう。新国のコール・ドは演技に関して特に印象を持っていなかったのですが(「白のバレエ」系など、統一感ある動きはお上手だなあと思っていましたが)、あまり慣れていないのか、今回だけなのか?

 

 特に2幕1場で感じましたが、音が小さいのもあって、音楽面は少々迫力に欠けますね。下手な演奏を聴くくらいなら録音でよいという気もしますが、生音ではないのはやはり少し寂しいところだ。

 折角『ルスランとリュドミラ』序曲もあるのに! あの曲ちょっとアップテンポで騒がしすぎて、ちょっと場違いな感じもありましたけど!

選曲はフランスものとロシアものが多い印象です。良いですね。←フランス専攻ロシア趣味

 

 2幕冒頭の設定は、オレンジとレモンのどちらが優れているかで論戦し、それら果実を投げ合います。へ、平和な戦いだ。オレンジ革命

どちらも壊血病に効くし、どちらでもいいのでは?(そこ?)と思いつつ、わたしはオレンジ側で参戦しよう……。

↑ オレンジを育てている人。

 

 そういえば、人魚姫って何を食べて生きているんでしょうね。ネモ船長的な? 分類によっては共食いになりませんか?

↑ 海が舞台の物語はロマンがあって楽しいですよね。

ノーチラス号グルメ再現レシピとか誰か既にやっていそうな気もする。食べてみたい。

 

 2幕1場で登場する深海の女王の変装が余りにも不審者すぎる。これはバレないほうがおかしい。

海の女王は、意外に心配性で優しい(?)です。ナイフを差し出すことが優しいのかどうかは議論の余地がありますが。悪役っぽくない。なるほど、「こどものための」。

 

 さて、考証ですが、柑橘類が育ち、タコを食べる地域となると、確実に地中海ですよね。2幕1場の書き割りの町並みや、王国であること、軍服が青であることなどを踏まえ、真っ当に考えれば、イタリア王国が最有力候補になるでしょう。

しかし、19世紀末のイタリアって、結婚適齢期の王子様いないんですよね。ワンチャン、ウンベルト王子のご子息だったりして、とか思ったのですが。

或いは、スペインのアルフォンソ13世とか? 19世紀スペインの政治、ゴチャゴチャなんだけれども面白いんだよな……。

 ちなみに、原作『Den Lille Favfrue』でも、レモンとオレンジの木の描写があるんですよね。やはり北国の民にとって、柑橘類は憧れの象徴なのだ。

 

 記者ちゃんズはお衣装も動きもとても可愛いです。好き。新聞の党派性を教えて欲しい。

 

 さて、相方の王子です。若々しく軽やかで、フレッシュな印象。一方で、王子が何を考えているかという解釈は見えづらいように感じました。

これはどうしようもない側面もあるのですが……、日本人が軍服風のお衣装を着ると、どうしても脳裏に明治天皇の影がよぎるのですが、今回は明治天皇に見えなくて良かったです(?)。若者っぽい解釈が吉と出たか。

 

 群舞が邪魔で一緒になれない人魚姫と王子。これぞ正に「モブロック」である。ここのフォーメーションを考えるの、楽しかっただろうな、と推察します。

 

 最後は『タイス』の「瞑想曲」で PDD。「普通に美しい PDD だな~」というところで、ぶっちゃけ可も無く不可も無く……。ドラマティックであるなら、もっと物語性が欲しいところですね。

 終わり方も随分あっさりしています。心に響くオチではないかも。

ここまで割と「静謐且つシンプルで、ところどころポップに」というような方向性だったのに、最後は普通に悲劇エンドなんだ、という一抹の驚き。でも照明で泡を表現しているのは洒落ていました。

 

 今回のカーテンコールは写真撮影可(わたしは撮らなかったけれども)。写真撮影を許可すると、拍手がショボくなることがわかりました。みんなカメラに集中しすぎだよ~。拍手しようぜ。

 

 こんなところでしょうか。

個人的には、「こどものための」というコンセプトを思えば、誰もが知る物語をベースに、短く、耳馴染みの良い音楽で纏まっていて、良かったのではないかと思いましたが、世間的にはかなり不評のようです。

 確かに、短いのにダレるシーンが多いことや、足の変化を描くことの難しさ、物語があるのにドラマ性が弱く、表現しきれていない点は指摘できると思います。いやしかし、オペラやバレエで『人魚姫』を描くのは無理があるんだってば……何か代替案ありますか、と逆に訊きたい。ねえ、ドヴォルザーク先生?

 子供向けでありながら、静謐なシーンもあるのは「真の子供のニーズ(※ピンクが好きであろうみたいなステレオタイプの思い込みではなく、本当に女児が好きそうなものの意)」を汲めていると思うんですけどもね、と心の中の女児が申しております。

 本物のお子様方のご意見も伺いところですね! 以上!

 

最後に

 通読ありがとうございました。6000字強。

『ABZU』の考察を書いていたことや、水と芸術については色々リサーチしていたことなどもあって、こういう題材だとつい熱が入ってしまいますね。殆ど雑談に終始してしまったような気もしますが。

 

 それにしても、ご覧になりましたか、こちらの記事は? 一体全体、なんなんです?

こんなに堂々と無知自慢をされるなんて、なんと痛々しい……。

 人魚そのものは、民話などで見られる架空の生物ですが、「人魚姫」として他人の作品の名前やアイディアを借りているのに、それをリスペクトする姿勢さえ見せようとしないというのは、クリエイター側の人間からしたら恐怖しかないですね。おぞましいです。『セクシー田中さん』事件を思い、アンデルセンも草葉の陰で泣いておろう!

 その点、新国版の方がずっと好感が持てます。

 

 さて、まだ消化しきれていないレビューが残っているので、マラソン継続です。7月末~8月初頭、劇場に通いすぎだと思う。好きな記事を書かせてくれ~、と泣き言言いつつ。

 

 それでは、今回はここでお開きと致します。また次の記事でもお目に掛かることができましたら幸いです。




以上の内容はhttps://sylphes.hatenablog.com/entry/Review_Story_of_a_Little_Mermaid_NNTT_20240729matineeより取得しました。
このページはhttp://font.textar.tv/のウェブフォントを使用してます

不具合報告/要望等はこちらへお願いします。
モバイルやる夫Viewer Ver0.14