おはようございます、茅野です。
皆様お正月は如何お過ごしでしょうか。わたくしは季節感なく、いつも通り、ご覧のように書き散らかしています。
さて、昨晩はボイショイ劇場がライブ配信していたバレエ『くるみ割り人形』の配信を観ました。
Щелкунчик
↑ 何故か埋め込みリンクを読んでくれなかったので、文字リンクで失礼します。
この間はサンティアゴ・バレエ団の配信を観たので、この冬は2『くるみ』です。
今後は配信もできるだけ追いたいですね~。
今回は、備忘がてらこちらの雑感を記して参ります。
それでは、お付き合いの程宜しくお願い致します!

↑ この日の公演のものであはりませんが、公式のサムネになっているポスター。
キャスト
くるみ割り人形:アルチョム・オフチャレンコ
マリー:エリザヴェータ・ココレワ
ドロッセルマイヤー:デニス・サヴィン
ネズミの王:ミハイル・クリュチコフ
スペイン人形:クリスティーナ・ペトローワ、アレクセイ・プーティンツェフ
インド人形:アンナ・チホミロワ、イヴァン・アレクセーエフ
中国人形:マリヤ・ミーシナ、ラトミール・ジュマリエフ
ロシア人形:ニーナ・ビリュコーワ、ヴィタリー・ゲトマノフ
フランス人形:ダリヤ・ホフロワ、クリム・エフィーモフ
指揮:ヴァレリー・ゲルギエフ
管弦楽:ボリショイ劇場管弦楽団
雑感
久々のボリショイです。高校生の頃はボリショイばっかり観ているボリ厨だったんですが(?)、コロナだ侵攻だなんだで、ここ数年ご縁がなく、大分ご無沙汰な気がします。久々に観たら、なんだか古巣に帰ってきたような(?)懐かしい気持ちになりました。
前回の記事でディズニーのシオニスト政権支持を批判したので、今回も、ボリショイ劇場は侵略を続ける帝国主義政権の支持を辞めろ、と言っておきます。今回の配信でも明らかだったように、ボリは政権にベッッタリすぎて前回よりも焼け石に水感凄いが……。
以前記事にも書きましたが、ボリショイは公式サイトに「特別軍事作戦(ウクライナ侵攻)を支援してきた」ってガッツリ書いてますからね。
舞台芸術は上演にお金が掛かりますし、ボリショイは歴史的に政権と強く結びつくことでその地位を確立し、ソフトパワーとして強い影響力を保ち続けたという事実があるので、離脱は難しいとは思いますが、それはそれとして批判は続けます。
ボリショイが政権から離れることより、政権が真っ当になることの方が現実的な気がする。まずは侵略戦争をやめろ。
わかりませんが、今回は反戦を表明しようとしていたオフチャレンコ・チホミロワ夫妻が出演ということで、一応配慮したつもり……なんだろうか?
わたしは特に影響力もない一般字書きですけども、こうして日本語圏で情報をお伝えすることくらいはできるので、自分にできる形で世界に貢献できたらな、と思います。
それでは本編。
第1幕
ヴァイオリンの下からのアングル凄いですね、これどこにカメラ仕込んでるんですか?
ハープの手元など、オケピにもカメラ多めです。
指揮は遅刻癖で有名なマエストロ、ゲルギー親分。今日は遅刻せずに来たんか? 配信が定刻通り始まっているということは珍しく時間を守ったのか?
今日は爪楊枝や焼鳥串ではなく、指揮棒なしの素手スタイルでした。個人的には、爪楊枝よりも指先からビームが出ているとしか思われない謎の素手スタイルの方が好きです。
← 持ってる →持ってないけど出てる pic.twitter.com/w7zWpmJ4H6
— Elaine of Astolat (@galahadgrail) 2025年1月2日
↑ とか言っていたら相互さんがクソコラ作ってくださいました(笑)。
最近親分に色々思うところがありましたが、ほぼ一ヶ月ぶりという事実に驚いています。随分昔のことのように感じる。
何回か書いていますが、親分といえば、踊らせる気皆無な「爆速・『くるみ割り人形』」。
↑ マリー救出RTA+ショートスリーパーマリーを堪能いただけます。
しかしそこはマエストロ、バレエ公演の際はきちんとダンサーに合わせてくれます。親分の自由な解釈では先程のように爆速なので、実は不本意なのかもしれないけど。
……それでも今回も序曲は平均より速いと思う!!
フルートはもっと歯切れがいい方が好みかな~。ストリングスももうちょっと統率が取れていて欲しいです。毎日上演しているのだし、もっと練度高くてもいいよね?
幕が開いてもテンポ速めです。『くるみ』に限らず、『スペード』とかもそうなんですけど、全体的に親分ってテンポ速いですよね? わたしもうちょっと遅い方が好みです。
雪の舞い方が綺麗です。キエフだけでなく、ドイツもパウダースノー。ゆっくり落ちてきます。
女の子たち、地味にポワントで立ったまま手を引き合うの難しそうだなといつも思います。
行き交う(というより、みんなシュタールバウム家に行くんだろうけど)人々は、みんなステップが特徴的です。大人もパーティ楽しみなんだな~。
グリゴローヴィチ版は大人が子供を演じるのが特徴です。従って、1幕から全体的に難易度高め。
しかし、「無理難題をこなしています!」というような難易度の高さではなく、何て言ったらいいんでしょうね、「あっグリゴローヴィチだな」って感じの振付というか。彼も結構わかりやすいですよね。
今日のヒロインはエリザヴェータ・ココレワさん。現在24歳の新星で、従ってわたしも初見です。ちなみにご本人の自己紹介を聞く限り、ウダレーニエは最初で、もっと正確に音写するならコーコレヴァらしい。アーカニエしていなかったけどモスクワのご出身らしい。
子供役のダンサーさんに混じっても明らかに小さい! 違和感なし。丈の短いスカートもよくお似合いです。と思ったら、身長は163cmとのこと。それで小さく感じるボリショイって……という気持ちと、お姫と身長一緒か……という気持ちと……。
彼女を観て、「やっぱりボリだよな!」という気持ちを新たに。ピタッッと止まります。堂々としていて華やかで、身体全体を使っているのが観ていて気持ちいい。このパキッとした踊り口は完全に正統派ボリのプリマです、ありがとうございました、すきです(早い)。
ボリのメソッドは、「大見得を切って、歌舞伎みたい」なんて言われることもありますが、わたしはバレエは舞台芸術なのだから見せ場はしっかり見せつけて欲しい派閥なので、歌舞伎で何が悪い、と思っています。ダンサーさんには「見てるかお前たち、これがバレエだぞ」くらいの強い気持ちで来て欲しい。
ボリの『くるみ』は、髪型や衣服が凄く18世紀ですよね。『スペード』を想起します。ポソホフ版の『スペード』も観たいよ~。後述しますが、葦笛なんかまんまステパニュク演出の「羊飼いの真心」ですし。
キャラクターダンス、パパは覚束無い足取りです。既にビール飲みすぎた?
魔法使いの弟子ミッキー帽ことドロッセルマイヤーはみんな大好きデニス・サヴィン氏。

↑ 完全に一致。この帽子が最も似合うネズミの王VSこの帽子が最も似合う人類。
長らく「名脇役の帝王」としての地位をほしいままにしていたサヴィン先生ですが、2020-1シーズンにプリンシパルに昇格しました。おめでとう!!
昔インタビューで「自分がクラシックの王子様向きの体付きではないことはわかっているし、今更『王子様が踊りたい!』とも思わないよ。寧ろ無理に王子様なんかやったら、自分の良さを殺すと思う(要約)」と話していた彼が、世界最高峰のバレエ団の一つであるボリショイのプリンシパルになったという事実は凄く希望が持てますよね。
実際、モダン・コンテンポラリーの演目や、キャラクターダンスでこの地位に上り詰めました。今でもクラシック偏重なバレエ界に於いて、それって超カッコよくないですか?
実際ファーストながら根強い人気があったダンサーさんですし、この昇進に喜んだ人も少なくないはず(←one of them)。昇進後もめっちゃドロッセルマイヤーやってくれて嬉しいです。
ボリショイは何回かグリゴローヴィチ版の『くるみ』を配信していますが、毎回サヴィン先生がドロッセルマイヤーをやるので、カンパニーからの評価も安定しているのでしょう。
しかし毎度キャストが同じだと、国外の観客からしたらもうサヴィン先生の専売特許にしか見えないのも事実。一方で、キャスト表を見てみると、最近は弊ブログでは「胸毛」の愛称でお馴染みのスクヴォルツォフ氏もドロッセルマイヤーやるみたいですね。
え~……あんまりイメージ湧かないなあ。どんな感じなんだろう。それはそれで気になります。胸毛ボーボーのドロッセルマイヤー、どう思う?(※ドロッセルマイヤーは脱ぎません)。
ボリで観ているからかもしれませんが、ちょっと『オネーギン』2幕1場みたいだなと感じるのはわたしのセンサーが過敏すぎるだけでしょうか。
お屋敷でパーティしてますし。寝巻きでロウソク持ったりするのは1幕2場っぽくないですか?
ボリのダンサーは2幕も含め、みんな人形振りが上手いですよね。流石伝説のコッペリア・カプツォーワ姐様を輩出しただけのことはある。
アルレキンとコロンビーナの後は悪魔2人組です。毎度ハブられるムーア人。ドロッセルマイヤーの帽子と同じ柄の屏風から登場します。
現実世界のくるみ割り人形は、体が細くて心配になります……。いやバレエを観ながら何言ってんだ、という感じなんですが、こう、幼い子が細すぎると不安になりませんか?
舞台裏映像でも練習していて頑張っていました。
幕が開いているのにドアップで顔面抜かれる親分で笑ってしまった。そんなことある? 親分特別仕様?
ビールを飲んでいるのがドイツですね~。ロシアでは伝統的にビールの消費量は少なく、時期や場所にもよりますが、ヴォトカはビールの8~15倍消費されていたとか。アルコール度数が低いものとしては、蜂蜜酒が飲まれていました。
↑ ……とここに書いてあった。
カメラワークは独特で、俯瞰やアップの他、上階上手からのアングルもあります。マジでどこにカメラ仕込んでいるんだ。
場の切り替わりで減速します。親分、『くるみ』ゆっくりも振れるんだ(毎回ここで驚く)。
鐘は12回鳴り、12時になったことを示します。毎回ポーズを取ってくれるドロッセルマイヤーが可愛い。幕間のインタビュー曰く梟時計らしいですが、緑の目が光るの怖い。
マリーは寝間着姿でほとんど体のラインが見えないのにアラベスクが美しすぎることだけはわかります。怖い。後半でも思いましたが、アラベスクの形の美しさに関しては彼女は今世界最強なのではないか?
グリゴローヴィチ版の特徴として、ドロッセルマイヤーは完全なる味方ではないところが挙げられ、トリックスター的な側面が強調されています。ネズミの王を召喚するのも彼です。
いやそれにしても、ネズミ体細っ! この間のサンティエゴのネズミがもっふもふでしたので、格差がひどい。ボリのネズミはあまり食糧にありつけていないのかもしれません。人類の肌はツルツルが好ましいですが、ネズミの肌がツルツルだと気持ち悪いな……(ディズニーやポケモンを敵に回しそうだ)。
グリゴローヴィチ版は戦闘シーンが踊りがいがありそうというか、疲れそうというか……。「あっグリゴローヴィチだな」ってなりますよね。二人とも仮面付けてこれやるの大変すぎませんか? その腕立て伏せとバク宙何?
蝋燭を剛速球に変えるマリー。多分彼女が戦った方が強いと思います。
そんなわけで人形が王子に変身。最初、「なんでくるみ割り人形が王子になるねん」と誰もが疑問に思いますが、曰く、くるみ割り人形って元々権力者をかたどって作る風習があるからなんですって。「普段圧政を敷く権力者に面倒くさい仕事(くるみ割り)をやらせよう」という想いからだとか。今はその文脈が共有されていないから、わかりづらいですよね。
↑ 聖ニコラオスの日を祝おう。
だからマリーが貰ったくるみ割り人形は、モデルが王子様だったんでしょうね。このくるみ割り人形を作った人(ドロッセルマイヤー?)は、現実の王子様が好きじゃなかったのかも。
『くるみ』って絶対そこで終わるだろというところで終わらないのが面白いですよね。サムネになっている、変身して一段落付いたところで普通は一回終わるだろうと。
何故かそのまま続き、松林、雪へと移ります。
今回の王子はアルチョム・オフチャレンコ氏。ウクライナのドネプロペトロウシク出身のプリンシパルです。ちなみにレンスキーダンサーです。
↑ ボリショイでの初演時にオネーギン役のラントラートフ先生とレンスキー役のオフチャレンコさんにインタビューした動画。前者が明らかにこの作品に懸念があるのに対し、後者は気に入っていて温度差が面白い(笑)(それでもヴラドのオネーギンが好きだ)。
個人的なオフチャレンコさんのイメージは、「ミスター・安定」。飛び抜けた長所があるタイプではなく、バランスの取れた優等生型の印象です。それが逆にキャラの濃いダンサーの多いボリショイの中である種の個性になっています。言うなれば、「120点を叩き出すことは稀だけど、60点以下も出さない」というか、失敗はないので安心して観ていられるダンサーという認識です。レパートリーはクラシックがメインです。
今回改めて、華々しいソロよりもサポートが得意で、動きが柔らかいな~と思いました。ジュテのサポート観ました? ジゼルのような浮遊感です。小柄で愛らしいココレワさんとの相性も良いのではないでしょうか。『くるみ』という演目なのも合っている気がしますね。
ウクライナ侵攻が始まった頃、やはり立場上難しいのか、言葉にすることは稀ですが絵文字や画像などを使って言外に色々伝えようとされていて、ウクライナ侵攻で最も苦しい立場にあったプリンシパルだと思いますが、干されたりはせず活躍を続けられていて、それだけは救いですね。
歌声的に、聖歌隊も比較的年齢層高そうだな~と思いました。少なくとも新国よりは高い。
雪の精は18+追加6人の編成。何度でも言いますが、ボリのヒストリカルステージは舞台がデカい。物凄くデカい。これを観て育ってしまったせいで、他の全ての劇場が狭く見えます。流石、「ボリショイ」を名乗るだけのことはある(「大きい」という意味。つまり「Большой театр(ボリショイ・テアートル)」で「大劇場」)。
そのお陰で、コール・ドもせまこましていなくて、みんな動きがダイナミックで素敵です。これがボリショイだ!
親分、最後は随分溜めました。全部アクセントかテヌート入り。
幕間時のインタビュー
ボリショイ名物:サービス精神旺盛なのはいいが、客を絶対に休ませないスタイル。休憩の30分間、めいっぱいにコンテンツを詰め込んできます。
だからいつもボリショイのライブビューイングを観るときは必ず先にお手洗いを済ませておけと口を酸っぱくして申し上げています。
最初はロシア文化省大臣のオリガ・リュビーモワさん直々にご挨拶。芸監とかではなく文化省大臣っていうのが、ね!
そして、英語字幕がついています。ボリはコロナ渦あたりから積極的に英語字幕を付けるようになったのですが(それまでひたすらロシア語垂れ流しだった)、「ようやく!」と思った矢先に侵攻を始めて日本にあまりボリの映像が入ってこなくなるというね。ハードパワーじゃなくてソフトパワーで外交しろ。
親分ってバスのいい声してますよね。歌って欲しい。
「2024年はロシアオペラいっぱいやった」と仰っていました。それな!! もう羨ましくて仕方なかったもん。『オネーギン』などのみならず、ムソルグスキーの歴史オペラ3つに、『チェレヴィチキ』とかやってたんですよ。そうやってセルフ鎖国して自分たちだけで自国の素晴らしい演目を楽しみよって。抱えてないでもっと輸出しろ!
次いで、我らがアキーモフ先生登場! 御年78歳、まだまだ現役! お元気そうでなによりです。
受講生にチホミロワさんとかいますね。一番ボリを観ていた頃は半分くらいは顔がわかったものですが、知らない顔ばっかりで怖かったです。数年の間に世代交代が……進んでいる……。
下品で恐縮ですが、アキーモフ先生の「おっぱいコール」は健在でした。説明しよう! 「おっぱいコール」とは、アキーモフ先生がレッスン中に掛ける掛け声なのだが、本当の本当に冗談抜きに、日本人には「おっぱい!」と叫んでいるようにしか聞こえないのである! 恐らくは "up, и!(アップ、イ!)" ではないかと推測されるが、明確に途中にアに聞こえる音があるので、違うかもしれない。真偽のほどは定かでない。アキーモフ先生が日本語の「おっぱい」と言っているわけではないのは間違いない。有識者、誰か真相を教えてください。本当に「おっぱい」にしか聞こえなくて困っている。
現実世界のくるみ割り人形の髪はフェルトっぽいですね。
コスチュームセクションのイリーナ・ヴェシシェワさんのインタビューへ。
ボリの金平糖のチュチュめちゃめちゃ綺麗ですよね。一目でも質がいいのがわかる。切り返しが細かいといいますか。
『チッポリーノ』への言及もありましたね。こちらは子供向けのアニメのバレエ化なんですけど、言ってしまえばロシア版『やさいのようせい』です。今回のドロッセルマイヤー、サヴィンさんはレモン王子やります(レモン王子違い)。演者側も楽しいらしく、豪華キャストがノリノリで難易度高い振付をこなすので、全然大人も観ていて楽しいやつです。いや普通に観たくなってきたな。
次いでツヴィルコ・クレトワ夫妻から新年のご挨拶。
ツヴィルコさんも長年人気のあるファーストでしたが、2022年にプリンシパルに昇格! おめでたいです! ボリはファーストの時点で人気が高いダンサーさんが揃っているのも強いですよね。クレトワさんはいつ上がるか……。
今回はオフチャレンコ・チホミロワ夫妻といい、団内ラブラブ夫妻を観て和んでね、ということらしい。
アルテミー・ベリャコフさん回の『くるみ』のカーテンコール映像が挿入されています。
この時もドロッセルマイヤーだったサヴィンさんに "Тёмка, поздравляю!(テョームカ、おめでとう!)" とハグされてましたね。愛称テョームカなんだ、初めて知った。
アゼルバイジャンご出身の歌手、ソプラノのディナーラ・アリエワさん、バリトンのエリチン・アジゾフさんからのご挨拶です。勿論、前者はタチヤーナ歌いです。
↑ 強い!
音楽監督アレクサンドル・コシェヴォイさんが、1幕での鐘を実演してくれます。
クレムリンのスパスカヤ塔の12連のベルのお話も。この連なったベルがロシア正教を感じますよね~。年が明ける瞬間に鳴るらしいです。
Ура!!(ウラー、万歳)と叫んでいる観客のおばさま登場。そこ Браво(ブラーヴォ)ちゃうんか。全部 Ура でええんか。
アン・オーでの手首について、コール・ドの一人が鬼詰めされています。ロシアのバレエ団、未だにめちゃくちゃスパルタ・パワハラ気質で普通に怖いですよね。観ていて辛い(以前ヴラドが団員が辞めることについてインタビューで「うちブラックだししょうがないんじゃないですか(要約)」と言っていて普通に引いた記憶)。
コール・ドは他の団よりも命削ってる感があり、なんというか凄みがあります。労働環境改善してくれ。
バレエ監督のマハル・ヴァジーエフさんからも挨拶がありました。無いわけ無かった。
チェロのマスター、ボリス・リファノフスキーさんからもご挨拶が。「もっとバレエを観て、もっとオペラを観て、もっとクラシック音楽を聞けば幸せになれるでしょう」ですって。わかる。
ソプラノのアンナ・アグラートワさん、メゾソプラノのアグンダ・クラエワさんからもご挨拶が。後者はオリガもポリーナも歌います。めっちゃ合っていると思う。
プリンシパル、デニス・ロヂキン氏へのインタビューも。今日は変なレオタード着てなかった……私服だった……(※彼は普段奇天烈なレオタードを着ていることで有名)。
彼はクラシックの王子様を得意としますが、演技が壊滅的なお大根さんで、オフチャレンコさんとは異なり一点特化タイプです。わたしの好きな演目は全面的に苦手であり(彼の為にもクラシックだけやらせてあげればいいと思う、本当に)、正直わたしは普段好んで観ないダンサーさんなんですけど、「グリゴローヴィチはチャイコフスキーの音楽をより感じられる」と仰っていて、今回は珍しく(?)同感です。
わたしもグリゴローヴィチ版の良さは、チャイコフスキーの音楽をしっかりと捉えていることだと思っています。振りと音楽がズレません、常に合致します。そこが魅力。
今回の主演お二人からもご挨拶がありました。ココレワさんは крепкое, крепкое здоровье と、「健康でいること」を強調。今回、みんな揃って健康を強調しますよね。思い当たる節が多すぎますが、何はともあれ皆様健康に!
オフチャレンコさんはこの日(12月31日)お誕生日だそうで! おめでとうございます。38歳になったそうで。もうすっかりベテラン枠ですね~。時の流れって怖……。
最後にダメ押しで再び親分です。
Хочется чтобы страна шла вперёд って仰いましたよね……、それどういう意味!? 親分!! (「国を前進させたい」という意味)。
子供合唱の映像も。有り得ないくらいのロングトーン、大変そうだ……。
第2幕
というわけで休憩を挟まず第2幕。ここまでで既に字数が凄いことになっているので、サクサク進めたい所存です。
第2幕の序盤は、なんだか美術が南国調ですよね。やはり北国の民にとって楽園とは暖かい地域なのか。
マリーと王子の乗るヨットには、お腹を支える安全バーのようなものが見えますね。吊り物の安全、大事。
途中で羊の置物を引いてくる葦笛の男性。
最初に観た『くるみ』がボリショイだったので「そんなもんか」と思ってなんの疑問も抱きませんでしたけど、これ大分シュールですよね。
おとぎの国までネズミが潜入し、第2幕にも出てくるのがグリゴローヴィチ版の特徴です。戦闘継続。それにしても、煙こんなに出ましたっけ? むせない?
サーベルを持ったオフチャレンコ王子、グランド・ピルエットも安定しています。回転スピードが遅めで軸足も動足もブレないので、正にお手本のよう。
戦闘中の周りの動きは、ロシアの女性がよかったですね。頭を抱えてキョロキョロしたり、ネズミの王に向かってゲンコツを掲げてみたり。かわいい。
グリゴローヴィチ版では、お菓子の精こと民族舞踊組は「各国のお人形」という設定になっています。従って、全員意図的に少しぎこちない動きをしたりします。
そもそもくるみ割り人形がお人形なのだし、みんなお人形で揃えた方が統一感があっていい気がしています。わたしはこの設定の変更は正解だと思う。
まずはスペイン。ボリのスペイン人形の振り大好き~。ほんとにソリストにやらせる難易度じゃなさすぎる。そしてこの振りはボリのような大ステージでやるから更に映えるのだと思っています。最後のフェッテはバチッと決まると超カッコイイです。
中盤のステップは一々クペを入れるのがポイントで、良かったと思います。
後半の見せ場・フェッテは、1回転→2回転→ジャンプ→1回転をハイテンポで繰り返す高難易度な振りです。回転の向きは揃えるのがデフォルトですが、今回は男女とも外回りの逆向きで、こっちの方がダイナミックで好みかも! ただ、男性が走り気味なのに対し女性は遅れ気味で、タイミングが合わなかったのが残念。後者がジャンプの時に少しバランスを崩したのが原因かと思いますが、ここ難しいよな~。
終盤の2番からのジャンプは、男性が右足から片足ずつ上げていて、それ初めて観たな……となりました。そこは揃えてもいいかも?
グリゴローヴィチ版では、「アラビア」ではなく、「インド」です。そもそもこの曲はグルジア民謡ですし、振付はナンチャッテ・インド風で、「どこがアラブやねん」とツッコまれまくっていましたから、グリゴローヴィチはいっそのことインドということで割り切りました。英断だと思います。曲がグルジアなのは変わらないけどな!
インド人形の女性はアンナ・チホミロワさん。ボリショイ随一の美女であり、ロシアで特に人気の高いファースト・ソリストです。そして、今回の主演・オフチャレンコさんの奥様で、二児の母です(オフチャレンコさんの方がプリンシパルなのに、「オフチャレンコの妻」より「チホミロワの夫」という表記の方がよく見かける気がする)。
ちなみにボリショイ初演時のオリガでもあります。ご本人がパリピ美女なので、凄く似合うと思う。ほぼそのまんま(オフチャレンコさんがレンスキー役をやるというのがなんか悲壮感漂ってますけど、実際のお二人は超ラブラブ夫妻ですのでご安心ください)。
最初に思ったこと。おっっっそ! いや、前述のように、CDでの親分、インドでも容赦なくカッ飛ばしていますから……こんなゆっくり振れたんだと思って……。
ロシア人のチホミロワさんが着ているからというのもあるかもしれませんが、お衣装や髪型もインドというよりカフカースのムスリマ風に見えますよね。『現代の英雄』のベーラみたい。
とにかくバランス力が試されるインド人形。最難関・腿に乗るリフトでは拍手を貰ってました。いやこれ難しいよな(2回目)。それでも余裕の安定感がありました。流石。
続いて中国人形。ローテンポで耐久が求められるインドとは対照的に、アップテンポの鋭い跳躍で魅せます。
2人とも元気いっぱいでいいですね~! 誰がどこからどう見ても凄い男性のとんでもない跳躍力が目を引きますが、女性もよかったです。ピルエットは3回転で攻めます。
首をゆらゆらさせてお人形要素も。昔こういうお人形流行りましたよね。
ピンクのお衣装が可愛いロシア人形です。ココシニクとウシャンカ。絵本のタイトルみたいですね。誰か描いて欲しい(?)。
ロシアはこれまでの3組に比べると振付の難易度が低めで、お衣装に違わず可愛い枠です。どの組よりもお人形感の強い振りになっていて、腕をピンと伸ばすのがポイント。
ユニゾンが多い振りで、今回息があっていていいですね~。地味に終盤のマネージュの最後、減速して徒歩になるの難しそうですよね。グラン・バットマンのステップから、音楽のアッチェレランドに合わせてジュテ・アン・トゥールナンに変わっていくの、振付の大勝利だと思う。音楽にぴったりです。
みんな大好き葦笛、改めフランス人形です。
おっっそくてビックリした。冗談抜きに、親分のCDだと倍速です。話盛ってません。
ステパニュク演出の『スペードの女王』の「羊飼いの真心」にしか見えないことでお馴染みのフランス人形組。完全に一致である。
↑ 近世フランスの田園劇のテンプレ。ステパニュク演出の『スペード』大好き。
男性は四肢が長くて細身で、体型がTHE・ダンスールノーブルといったところ。まだソリスト相応という感じですが、上達すれば売れそう。女性は音の取り方が若干遅めですが、甲が伸びてて綺麗ですね。ただ二人とも、ディヴェルティスマンとはいえ、もうちょっと愛情などの感情が見えた方がいいかも。
フランス人形は、フランスというだけあって一番クラシックなので、クラシックに合いそうな人選でいいと思います。
お人形組、今回のベスト・デリゲーツはやっぱり中国ですかね~。あの跳躍力すごいわ……。
民族舞踊組がみんなで踊るプルチネッラのコーダは、動きは同じだけれどもそれぞれちょっとした違いがあっていいですよね。フランスはクラシックにアンオー、中国は指立て、ロシアは腕を伸ばして真っ直ぐ、スペインは内向き、インドは手首を曲げています。
中盤、女性が後ろ向きに倒れて男性が支える振りのところ、中国の男性が倒れてきた女性に「ワワーッ!」っと驚くのめちゃくちゃ好きです。そういう細かい演技大好き。
グリゴローヴィチ版はお人形という設定になっていることもあって、「お菓子の国の冒険」じゃなくて、『トイ・ストーリー』って感じですよね。グリゴローヴィチお人形セットが売っていたら、ちょっと欲しいかも。かわいいし。
空飛ぶドロッセルマイヤー。カメラが寄りすぎてワイヤー丸見えではあります。安全第一なのでそれでいいですが、『ハリー・ポッター』でこれやったら怒られるかも。
飛ぶ際にマントを触れられてましたけど大丈夫でしょうか? 間違っても引っ張るなよ!
花のワルツ。何度でも言いますが、舞台が広~い。これだけの人数でこの余裕です。
1サビでの上手側の女性のエカルテ高すぎてビビりました。男性組はアン・ナヴァンが一列に揃っていて綺麗です。勿論、ある程度身長揃えているんでしょうけど、それにしても凄い。
優雅にロマンティック・チュチュが広がって花に見えますし、ボリらしく豪華ですね。
さて、グラン・PDDです、ここまで長かった。
王子の髪は、1幕だと金色だけど、2幕だと銀色っぽいですね。王子は冒頭、白鳥よろしく両手を広げるとき、背中から動かしているのが見えてよかったです。その後、マリーが本当にお祈りしているように自然で優雅なのも素敵でした。
ココレワさん、脅威のバランス! エカルテもパッセも信じられないくらい高く、それでいてサポート不要というくらい一人で立ちます。ちょっとバレエが上手すぎる。余裕を感じさせ、「こんなもん朝飯前だが?」って顔をしておられる。以前、アイグル・アクメトチナさんが「カルメン歌うのなんて朝飯前」とか仰っていて「怖っ!」と思いましたが、多分ココレワさんはバレエ界のアクメトチナさんなんだと思う。多分彼女も「金平糖なんか朝飯前」って思っておられる。定期的にロシアからはこういうバケモンが出る。よく知っています。
中盤のエカルテ→サポートでアラベスクへ→後方へ下がる振りでは、ココレワ姫が毎回「あら、支えに来たの?」みたいな感じで後方のオフチャレンコ王子の方をチラッと振り返るのがめちゃくちゃ好きです。なんというか、振付に踊られていないんですよね。新鮮味があると言うか、「ダンサーがその先の動きを知らず、毎度初めて踊るかのように踊る」というのが正に「表現力」だと思う。彼女は既にそれを持っています。すきです。
一番盛り上がるグリゴローヴィチ版PDDの最大の特徴・二人同時リフトですが、男性群舞、上げるタイミングも高さもバッチリです! Bravi!
これは謎の注文なんですが……、最後のピルエットは余りにも余裕がありすぎて逆にやっつけ仕事感が多少あるので、もう少し丁寧だと更に良いかもしれない。
PDDは非常に完成度が高く、多幸感があります。ふたりが笑顔で楽しそうなのもポイント高い。やっぱり『くるみ』はこうでなきゃね。
王子のVa.。軽やかですね~、単に前に進むだけで軽い。フェッテは最初は安定していましたが、後半ちょっと崩れそうになったのが少し勿体なかった!
金平糖のVa.。最初の指を弾く振り好きです。ココレワさんはかなりピン! としっかり弾く派。
アティテュードで回る時、動足の上げ方がもっと滑らかな方が好みですが、カプツォーワ姉様でさえもっと柔らかくていいな~と感じたので、限度があるのかもしれない。
ポワントで立ってアティテュードでトントントンと回るところ、2回目で地面に降りてしまいました。ここ地味に難易度高いらしい。
その後は持ち直し、エカルテで鬼のようにビタッッと止まるのが驚異的です。第一主題に戻り、ピルエットの後のポーズでも綺麗に止まってくれます。なんならクペでも止まっていてくれます。最高。「踊るのが楽しくてしょうがないんです!!」という感情が溢れ出ているのも良いですね。こっちも幸せになれます。
ザハロワ姫の引退が危ぶまれ、スミルノワ様が移籍した今、ボリショイの新女王の座は誰の手に!? と懸念されていましたが、彼女たち高身長白鳥組とはまた毛色が違うものの、これは新女王候補としての最有力候補なのではないでしょうか。
コーダです。この時の登場シーン、今まで観たオフチャレンコさんの映像の中でいちばん良かったかも。何その右手の動き? それ初めて見た。すき。
ココレワさんはもう何やっても簡単そうに見える。彼女の強みの大きな一つはアラベスクの綺麗さだと今回思ったので、最後のポーズが画になりすぎています。
フィナーレ。オフチャレンコ王子にマントを付けるチホミロワ人形の表情見ましたか? もうこれ以上ないくらいの満面の笑みで、超ノリノリ。顔に「嬉しくてしょうがない」って書いてある。出てる! 出てるよ素が! いいですか皆さん、これがボリショイが誇るラブラブリアル夫妻である。スペイン人形との温度差凄いよ。
途中でマリーが入れ替わります。注視していないと見逃すと思います。カメラが俯瞰になったお陰で逆によく見えたという。
人形組は各踊りの見せ場を再現してくれます。まだまだ回るスペイン人形、とにかく可愛いロシア人形、相変わらず跳躍が凄い中国人形、テンポが速くてもバランスを保つインド人形、回って跳ねて地味に一番疲れそうなフランス人形。
待機中のお人形たちが2番ポジションに足を開いて待っているの、ほんとうに『トイ・ストーリー』っぽくて好きです。ここ多分人間に見られている。やっぱりお人形セット欲しいかもしれん!
最後の王子のマントさばきも巧みです。今ならオネーギンもできる! たぶん!! きっとレンスキーの方がお似合いだとは思うけど!!
最後、くるみ割り人形たちが現実という中幕を越えられないのがなんだか凄く寂しくて切なくて、なんか泣きそうになります。
マリーは夢を受け入れてこれから現実世界でもくるみ割り人形を可愛がって生きていくんでしょうけど、いや全然観客の方がロスります。強制的に現実に立ち返らせないで~。こうやって『くるみ』公演通っちゃうんだな……通い勢の気持ちがわかっちゃったぞ……。
カーテンコールでは、お人形組が雪を投げていて可愛かったです。お人形組マジで最後まで可愛い。可愛いしか言ってない、どうしよう。
最後は親分も召喚して大団円でした。
こんなところでしょうか!
わたしはやっぱりボリショイ劇場や、『くるみ』といえばグリゴローヴィチ版に親しんでいたので、「やっぱりこれだよ、これ~」という気持ちになりました。現実に目を背ければ多幸感マシマシな上演で最高ですね。やはり舞台芸術って夢を見るためにあるのかも。そして自分がボリ派なのを再確認しました。
幕間の特典映像も豪華で、お腹いっっぱいになりました。可及的速やかに侵攻を辞め、幾らでもボリが観られる環境に戻って欲しいですね。
以上!
最後に
通読ありがとうございました。1万5000字……えっ書きすぎでは!? 『くるみ』だよね!? 我ながら驚いています。ボリショイ、怖い。
この間、モスクワの文学オタク仲間(普段バレエは観ない)と『巨匠とマルガリータ』の話になったので、ラントラートフ先生のヴォランドを布教したところ、こちらの想定以上に沼ってしまい、「同じ町に住んでいるのに今まで知らなかった! 今『くるみ』やってるから、あの素敵なダンサーさんの日チケット取れたら行くわ!(直訳)」と宣告されました。ご……ごめんその沼深いから……気をつけて……な……(←遅い)。
ちなみに先生は今シーズンは3回しか王子踊らないんですが、プレミエ、この配信の後の12月31日ソワレなど、美味しい上演日を貰っています。評価されている……のか?
ボリショイの『くるみ』のチケット争奪戦は非常に激しいので、彼女が勝利したことを願い、感想を待ちたいと思います。
ロシア正教では、クリスマスは1月7日です。従って、インタビューでもありましたが、ロシア人にとって「『くるみ割り人形』は1月の風物詩」なんですね。「1月に観る『くるみ』は12月よりも格別」という発言がありました。
日本人としては、これはちょっとカルチャーショックで、面白いな~と思いました。新国もいつまで『くるみ』やっているんだ、と思っていましたが、こうなれば1月7日まではやってほしいですね。
はい! 長く書きすぎましたので、いい加減今回はここでお開きと致します! まだ配信続いていますから、皆さんも是非観て、わたしに感想を教えてくださいね。この長文が何かしらの参考になれば嬉しいです。
それでは! また次の記事でもお目に掛かることができましたら幸いです。