こんばんは、茅野です。
皆様はよきクリスマスは過ごせましたか? ロシア正教では1月7日がクリスマスなので、上手く過ごせなかった方にもまだチャンスはあります(?)(まあそもそも上手く過ごす必要なんてないんだけど)。『くるみ』を見逃した方も、まだ間に合います。
一方のわたくしはレビューラッシュです。サクサク進めたいのですが、備忘録という性質上、書かねばならないことが多くて終わらない!!
それでも可能な限りの軽量化は図っていきたいと思います。よろしくお願いします。
さて、昨日はサンティアゴ・バレエ団の『くるみ割り人形』を拝見しました。
↑ サンティアゴ・バレエ団、初めましてです。チリか~。
南米でもバレエは人気ですよね。意外と『オネーギン』を持っているバレエ団もありますし、我がレンスキー・リマさんもブラジルのご出身ですし。
今回のサンティアゴ・バレエ団の『くるみ』は、12月24~25日だけの特別配信で、期限があると「一応観ておくか……」となるのが観客心理というもの。
というわけで、サクッと観てサクッとレビューを書きます!
今回は備忘がてらこちらの雑感を記して参ります。
それでは、お付き合いの程宜しくお願い致します!
↑ クリスマスの話なのにもうイースター?
キャスト
くるみ割り人形:ルーカス・アラルコン
クララ:マルティーナ・ペッチョローニ
金平糖の女王:キャサリン・ロドリゲス
王子:エマヌエル・バスケス
雪の女王:ノエリア・サンチェス
ドロッセルマイヤー:パブロ・アーロニアン
振付:マイナ・ギールグッド
(音写は独自なので、おかしかったら教えてください)。
雑感
「バレエファンは『くるみ』を観ないとクリスマスを、オペラファンは『こうもり』を観ないと年を越せないよね」とはよく言われますが、ぶっちゃけ季節感丸無視で生きている『オネーギン』オタクとしては、意外とアニュアルイベント的な演目をすっぽかしてきました。両方音楽は大好きですけども。
『くるみ』は色々な版があるので、そろそろ見比べて知見を深めて参りたいところ。今回はその最初の一歩ということで、宜しくお願いします(以前新国の『くるみ』は観たのだけど、レビュー書いていなかった……自分のブログに『くるみ』のレビューが一つもなくてビックリした……)。
第1幕
序曲は幕を下ろしたまま。演奏は安定しています。キャスト表に指揮者の名前がなかったのが不満ですが……。
幕が開くと、まずは子供達が雪合戦。女の子が転んでしまい、横抱きで連れて行かれます。まあこの辺りはスタンダードな感じですね。
『くるみ』って単に「子供って可愛いね~」という感じだけではなくて、割とクソガキ感というか、イジワルな側面も描写されていて、ちょっとリアルなところありますよね。
プレゼントは子供だけではなく大人組も得ていて、お母様は真珠のネックレス、おばあさまは毛皮のコートでした。高級品多め。シュタールバウム家、懐温かそうです。
ドロッセルマイヤーにより3つの人形が提示されますが、それを拡大するかのような演出が入り、ダンサーが人形役を演じるようになります。ダンサー3人は葱坊主形の突起のついたの入れ物(!)に入れられていて、そこから動き出します。我々には見慣れた形状だけども……。
お人形は『ペトルーシュカ』スタイルではなく、アルレッキーノ、コロンビーナと、もう一人は兵隊に変更されています。兵隊は青緑のコートと赤いタイツ、二角帽で、一番近いのはどこだろう、イタリアかな? 有識者、考証宜しくお願いします(丸投げ)。
このギールグッド版は、クララと金平糖は別のダンサーが演じるタイプです。クララは幼い子が演じますが、ポワントは履いてます。
最初はクララの時に感じたのですが、最後まで観て思ったのは、みんなシャンジュマン綺麗すぎませんか? 開脚の幅が広くて、爪先が凄く伸びている。サンティアゴ・バレエ団は、シャンジュマンになにか拘りがあるのかもしれません。
くるみ割り人形のネジ?を巻く音はオランピアと一緒ですよね。モーリー様があれは意外と難しいと仰っていたのを思い出しました。
ドロッセルマイヤーは特徴的な上着を脱ぐとシンプルなロングテールスーツというか、フロックコートというか、という出で立ち。正直に言って、かなり地味です。そのまま街中出られます。
乱入してくる男児ですが、トランペットをマジで吹いたな?? ちょっと音出ていたぞ??
酔っ払いおじさんの転ぶ演技が上手いです。『オネーギン』でトリケ(仮)をやって欲しい。
第2場で(と言って良いものか)、夜になるとクララはお衣装チェンジ。寝間着が可愛いです。そのままターニャもいけます。
ねずみはもふもふ感強いです! こ、肥えている。今まで観た中で一番もふもふかも。かわい……くはないけど。背中だけ観たらかわいいかもしれない。
ドロッセルマイヤーは服装こそ地味ですが、身振りだけでネズミの王様を吹き飛ばしていたり、強者感があります。
ネズミは従来のバージョンよりも四足歩行しているシーンが長くて、体勢が辛そうでした。
一方の兵隊サイドは、剣が反射して文字通り輝いていました。勝利確定演出入りました。
クララは結構しっかり踊るシーンがあります。とても将来有望。リフトの時の背中の反りが綺麗です。若いというより、幼いと言っていい子特有の危うさはありますが、成長と共になくなるだろうし、優等生的で、いいんじゃないでしょうか。
くるみ割り人形は、ドロッセルマイヤーに物理的に仮面を外されたりしてアナログに変身。サポートは上手いのですが、全体的に動きは少し重たいですね。このバージョンだと、シャンジュマンやアントルシャなどの小ジャンプ系のパが多いのですが、彼との相性は悪かったかも。
雪の女王は逆に跳躍が高すぎてビックリしました!
背が高そうだし、手足も長いです。オデットとか似合いそう。観たいかも。アームスも柔らかいですし、良いダンサーだと思いました。
男性3人(新体操みたいな謎の簡素なお衣装)に引かれた、トナカイの彫刻の付いた橇で迎えに来るドロッセルマイヤー。それなんか違くない?? 色々アナログだな?
第2幕
休憩を無視しまして第2幕。
ヴィオラの1stのお姉さんはタンクトップでノリノリで弾いておられます。寒くないのか!? 12月末だぞ!? 南米は暖かいのかな?
2幕冒頭のセットはサムネの通り、3つの卵がある美術です。裏側は空洞になっているようで、卵が回り、真ん中の卵から金平糖ペアが登場します。まだイースターではないよ?
金平糖組はやはり、「私達がプリンシパルです!」というオーラがありますね。
ここではマイムが多めです。そう思うと、クラシックにしては今までマイムが少なかったな。
橇を運んでいた男性たちは、幕を挟むと兵隊になりました。最初から兵隊じゃダメだったのか?
『くるみ』のスペインは闇墜ちしていません。お菓子の国は平和なのであった。
スペインの女性がセンターですが、堂々とした座り方が好きです。その後、配置の入れ替えがあり、民族舞踊の間はドロッセルマイヤーが後方ド真ん中で彼らを見守っています。
スペインは女性1人、男性2人の三人組です。女性がメインで、男性2人はお供というパターン。所謂スペインボーイズ現象ですね。
これはこの上演の殆ど全ての民族舞踊に言えますが、振付は技巧的でバレエ的です。キャラクターダンス的な側面は僅か。
スペインに特有の、フラメンコ的なリズミカルさや派手さはなく、全体的に優雅に纏まっています。個人的に、スペインはもうちょっと派手にやってくれた方がお祭り感があって好みです。
アラビアは露出多めで、ほぼ『シェエラザード』です。こちらは男女のペア。
これは「アラビアの踊り」よりもフィナーレで顕著でしたが、意味不明な複雑なリフトが多いです。パドヴレで間合いを計って、何が起きてるんですか? みたいなリフトに繋げます。
相変わらず「アラブっていうよりインドでは……?」という振りやポーズも多く、カオスなのは否定しません。テンポ遅めで、長いですし、民族舞踊組の中では一番大変そうでした。
中国は女性ソロ。実際に、東アジア系のダンサーさんが演じていて、お衣装がよくお似合いでした。
特徴的な指を立てる要素は、指を口に当てて「シー(静かに)」とやる動作にしていて、伝統と昨今のポリティカルコレクトネスの流れの折衷案のような形になっていました。
ほとんどずっとポワントで立ちっぱなしで、こちらも大変そうでした。ギールグッド版、民族舞踊組の難易度がみんな高いぞ!
ロシアは男性3人組です。お衣装は厚手で重そう。暖かそうではある。
待って、最初下手側にいるダンサーさん、跳躍柔らかすぎませんか? 彼の周囲だけ無重力なんですけど……、う、浮いてる。えっ、怖っ、ニジンスキーが最初に出てきた時こういうリアクションされたんだろうな、と思いました。これは出世しますよ、名前もわからないけど!
中央の男性は途中から半ばブレイクダンス的なコサックダンスを始めました。いやだから、難易度高いって。でも民族舞踊組の中でロシアが一番民族舞踊していた気がする。
葦笛は対照的に女性3人組です。年少のダンサーさんが演じているのかな?(違ったらごめんなさい)。小柄な方が多かったように思います。
スティックキャンディを思わせる薄ピンクと白のチュチュに、水色のサッシュ(たすき掛けの勲章)のお衣装がめちゃ可愛いです。
最初は簡素寄りな振付だなあと思いましたが、中央のダンサーさんは途中からイタリアンフェッテを開始。結局みんな難易度が高かった。
う~ん、どれも振付の難易度が高く、そしてそれを皆踊れていましたが、今回のベスト・デリゲーツはロシアですかね! 下手側のダンサーさんが強すぎた。何者ですか? 何故ロシアなんて端役(と言ったら失礼か)やってる? 早く出世しなさい。
花ワル。男女混合の大所帯のコール・ドが踊るのは、これが最初で最後という。『くるみ』はやはり小規模に纏まっていますね。そこで思いましたが、今更だけど、舞台はかなり狭そうです。
振付は結構独自性高めです。サビ(?)二回目は完全に男性だけになってグラン・ジュテ合戦がスタート。思い切りましたね。
その後女性のみに。そこでの女性ソロの一人目のジュテがヤバすぎませんでしたか!? 綺麗すぎた。フォーム完璧。え、さっきからソリストに目を奪われているんですが、これは一体どういう……。ソリストに原石(というか既に光りまくってるけど)が多いんですか、サンティアゴ・バレエ団?
彼女のジュテが綺麗すぎて、その後ジュテするダンサーがみんな可哀想でした。
金平糖組は本当に最後だけの登場です。
頂上でロン・ド・ジャンブする高度なリフトを展開します。だから難易度高いってば、『くるみ』だぞ?
二人とも優雅で、特に女性側のバランスは見事です。
みんな大好き金平糖のVa.は、かなり振付をアレンジしています。わたしはボリショイのグリゴローヴィチ版に慣れていて(※前半の振りはマリインスキーのシモノフ版の方が好きですが、あっちは音楽に手を加えているのが許せない)、あれくらい振りが音楽に合っていないとイヤ派なので、その辺りはちょっとマイナスポイント。
特に後半はアームスが複雑で特徴的なんですが、原則的に硬めで、背中をもっと使った方がいいかな、と思いました。
王子のVa.の振付は、先程に反して伝統的です。多少前述しましたが、最初のシャンジュマンの開脚広めで爪先が伸びているのが綺麗でした。
いやしかし、金平糖組はグランPDDだけでメインとしての格を見せないといけないの大変だな~……と思いました。このギールグッド版は、民族舞踊の振付の難易度が全て高く、バレエ的な見応えがあるので、金平糖組は相当突出したところがないと埋もれます。
金平糖組は主役格として元から期待値が高いですし、越えるべきハードルは高そうです。普通に良かったけど、もっと輝きが欲しかったという気持ちは残りました。
フィナーレはアラビアがなんか凄いことになっていました(語彙力)。そのリフト何? 『Mayerling』?? 最後の最後で全部アラビアが持っていくことある? ギールグッドさんはコーヒー派なのかも。
最後はエピローグ的に現実に戻って終了です。
こんなところですかね。1幕は伝統的な形に纏め、2幕の振付は大分オリジナリティ強めでした。
ダンサーさんで一番良かったのは、ロシアの下手側の男性と、花ワルのソロの一人目の女性ですね。雪の女王も良かったです。いや何その人選、って感じですが、実際そうだったんだから仕方が無い。ソリスト層が厚いのはよきことです、サンティアゴ・バレエ団の未来は明るそうだ。彼らがプリンシパルに上がったら教えてください(そもそもお名前すらわからないのだが……)。
2幕は全体的に振付の難易度が高く、難易度で位置づけするなら『くるみ』界でもかなり上位になるのではないでしょうか。しかしその分、キャラクターダンス的な側面が少なく、『くるみ』に必要なお祭り的な華やかさには欠けました。従って、「難しいのになんか地味」というちょっとしょっぱい側面も。
同バレエ団のPVを見る限りでは、美術は同じですが、以前とは振付が少し変わっていそうです。中国は男性が踊っていたし。改訂があったばかりなのかもしれません。
新しいバージョンを観る機会に恵まれて良かったです!
以上!
最後に
通読ありがとうございました。6000字強。宣言通り、比較的コンパクトに纏められた気がします(?)。
今後、『くるみ』などのメジャーラインも色々見比べて遊べたらいいな~と思います。
突然ですが、わたしのオススメを聞いてください。忘年会の一発ギャグでは、是非フィリップスのゲルギエフ親分盤の『くるみ割り人形』を踊ってみてください。
聴けばわかりますが、演奏自体は素晴らしいんです。しかし、信じられないくらいテンポが速く、マジで踊らせる気がありません。親分の「オレの演奏で踊れるもんなら踊ってみろ」という気概を感じる(まあ、親分はそういう人だよ)。こんなの金平糖も王子も全員コケるに決まっています(お怪我はないように!)。途中で崩壊すること間違い無しで、しかもその要因が極めてわかりやすいので、余興としては絶対に笑えると思います。
↑ これ。王子のVa.なんか30秒ちょっとしかないからね、何をしろと。ところで、最近親分に思うところができて悔しいです。助けてください。
さて、次回もレビューです。レビューラッシュですからね。色々観たい映像なども溜まっているのですが、既に消化しなければいけないレビューも溜まっています。早く脱したい……。がんばります。
それでは、今回はここでお開きと致します! また次の記事でもお目に掛かることができましたら幸いです。