こんばんは、茅野です。
途中まで書いたものが保存できておらず1回消えるという、初歩的ながらよくある事故を起こし、執筆のモチベーションが消失していました、すみません。PC側の問題だとは思うのですが、はてブで長文書いているとたまに固まるんだよな……、スペックが足らんのか……。
さて、先日はバンジャマン・ベルナイムさんのコンサートにお邪魔しました。1月19日マチネ、2回目です。
ちょっと書くの遅くなっちゃったんですが、というのも、前述の事故に加え、19日の方はハプニング(後述)があったのと、雑感は先にフランス語で一本書いてまして……。
↑ 観た後一晩で完全深夜テンションで拵えた。
いや~、フランス語きっついですね。学習歴はフランス語の方が長いはずなのに、体感的にロシア語よりキツかったです。フランス語、むずくない?
19日の雑感もこっちに軽く書いているんですが、改めて日本語でも書いておきます。
一回目、14日の雑感はこちらから。
↑ ほぼレンスキーの話しかしていないことでお馴染み。
今回も、備忘がてらこちらの雑感を簡単に記して参ります。
それでは、お付き合いの程宜しくお願い致します!

出演
テノール:バンジャマン・ベルナイム
指揮:マルク・ルロワ゠カラタユー
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
雑感
今日は2階から。
席の埋まりはまずまずですね。14日よりは入っていますが、満席とはいかず。まだ知名度が足りないというのか。
それでも、舞台裏側まで人を入れていましたね。裏側では、今日はあんまり聞こえなかったのではあるまいか。
初っぱなから、喉の調子が良くないらしいとのアナウンスがありました。それは大変だ。ニキーティンさんといい、やはり冬の東京は歌手には厳しいのか。
以前METでは不調詐欺があったので、不調ってどんなもんだろうと思ったら、結論、ガッツリ不調であった。いや、もう、「帰って休んでください!!!」という気持ちで一杯であった。無理しないで欲しい。
ついでに「フラ拍するな」というアナウンスも。
それではちょっと細かく見ていきます。
『オネーギン』序曲
前回は爆走した序曲、今日も爆走していました。初っぱなからストリングスがついていけずに転倒。スタート失敗。ホルンはコケませんでした、よく耐えました。
まあしかしサントリーホールマジックなのか、前回より纏まりがあった印象です。前回より低音がよく聞こえました。やはり場数を踏めば鍛えられるのか、オケは大体千秋楽が一番よいの法則。
いやしかし、この爆走ぶり、コンサートならまあ……というところですが、全幕だとどうなってしまうのだろうか? カタラユードさん(有識者曰く、最後の子音は発音するらしい)、全幕振らないんだろうか。ゲルギー親分と『オネーギン』RTA競争してんのかな。
改めて、やはりサントリー、音の響き方が文化会館とは全く違います。「お風呂場」なんて言われることもありますが、まさにその通り。演者フレンドリーなホールだな、と思います。なんでもいいからとにかく「良い演奏を聴いた~!」と思いたい聴衆フレンドリーともいいます。
ポロネーズ
指揮棒を下ろさず間髪入れずにポロネーズに突入。一瞬にして時間が年単位で飛びました。
相変わらず、若くて元気、且つ優等生的な印象です。解釈も14日と特に変わっていなかったので、特筆すべき点もないのですが、序曲に比べ、ポロネーズの方は明確に綻びも減った印象ですね。
東フィルはトランペットがいいので(と思っている)、特にポロネーズでの恩恵は大きいと思います。
「青春は遠く過ぎ去り」
さて、今日もこちらがメインディッシュ。メインディッシュが一番最初に来るのはどうなんだと思いつつ、一般的にメインディッシュとされるのは第二部のほうだから致し方ないか。
今日もオケは出から速いです。生き急ぎすぎたレンスキー。たぶん普通に速すぎるせいだと思うんですけど、チェロももっと揃っていて欲しいですよね。チェロも歌って欲しい。
ベルナイムさんはゆっくり歩いて入場。結構歌始まるまでギリギリでしたけど、間に合わなかったらどうするんだ。なんかちょっとこの時点でハラハラしたぞ。
第一声から、「うわっ、すっごい露骨にセーブしてる!!!」と思いました。皆さん、こういうのを「セーブ」といいます。なるほど、不調は嘘ではなかったらしい。
Куда の ку からもう入りが弱々しかった。体調悪い時に決闘したから死んだ説あるレンスキー。確かに1月末のロシアは東京よりも身体を壊しやすそうである。
まあでもその分、14日より柔らかさは増した印象があります。特に最初の2行。
今日の Что はまさかの ч 不在だった。そんなことある?
語末の т も控えめに。「ちょっとやり過ぎなくらい」って書きまくったから? いや、初日の方がよかったよ。今日も三人称単数にしていこ!
初日よりも流れを重視した歌い方ですね。セーブしているせいもあると思いますが。初日は変に力んでいたので、対照的です。それにしても、極端だな!
サントリーホールは響きすぎて歌詞が聴き取りづらくなるのではないかと懸念していていましたけど、その点はそうでもなかったです。ちゃんとロシア語いました。
Благословен и день забот は明瞭でよかったですね。逆に память юного поэта のくだりはもにょりました。
но, ты, ты, ~ の но に謎のアーカニエが発生。「しかし」という逆接の接続詞なので、ここはいくらでも強くて大丈夫です。
ранней урной の辺りが非常に柔らかくて弱音が綺麗でした。ボルドーでの演奏もそうですけど、この辺りの弱音超綺麗ですよねベルナイム先生。
そのあとの любил の語末はしっかり過去形であることを強調。それでいいよ!
Тебе единой ~ はしっっかりタメました。
その後の方の Ах, Ольга, я тебя любил! の途中からオケがフェードアウトしますが、オケが消えるのが速すぎてアカペラタイムが長めに取られました。
一番盛り上がる Желанный の же も消え気味でしたね。喉の不調ゆえか、最初の音がキツいのか。
二回目の приди はかなり伸ばしました。
Я жду тебя ~ の Я にポルタメントを掛け、結構速くから音程が移動。これも不調の影響なのかな?
ここはオケもいなくて目立ちますし、山なりに上がって下がるシンプルな音型なので、シンプルに四分音符でよいと思います。
最後の Куда, куда は演技重視。
моей の й を明瞭に発音し、かなり溜めました。 весны の вес と音程同じだったので、つまり八分音符が一つ増えた形に。まあここはフェルマータ掛かってますし、歌手の自由でいいとは思いますけども、なんか増えたなとは思いました。
こんなところでしょうか。「不調であることは言われなくてもわかるよ」レベルの不調だったので、14日とはかなり差があった印象です。
残念というよりシンプルに心配です。
前半・その他
また「その他」で括って申し訳ないのですが、その他の曲目についても簡単に。
『ドン・パスクワーレ』は途中からピッコロがフェードアウトしたのが少し気になりました。
ゲネラルパウゼの残響が凄まじく、改めてサントリーホールの響きの凄さを実感しました。
『人知れぬ涙』は前半で一番粗が目立ち、他の有識者たちにもそのように指摘されていました。
出から音がブレ、苦しそうな場面も多々。
しかし、14日よりイタリア語でした。サントリーの方が歌詞がよく聞こえるとは……。
『運命の力』。たぶんね、それだと名前負けします。「運命の力」っていうか「予定調和」感がある。違う意味で安心感はありますね(?)。基礎基本はしっかりしているのだろうけど、もっとオリジナリティが欲しいところです。
今回、AプロとBプロでほとんど違いがないのですが、数少ない違いのひとつがこちら、『シモン・ボッカネグラ』。
ベルナイムさんは以前インタビューで「シモン・ボッカネグラのキャラクター性が好き」と仰っていたので、本人が好きでプログラムに入れたんだろうな、と思います。プログラムを見てピンと来た。
出から強音で大変そうです。今日のコンディションでこれを歌うのは至難の業であっただろうと思います。それでも高音はしっかり張ってきましたね。ベルナイムさんって意外とアクートも力強くて張れる両刀型ですよね。柔らかい声なのに、へろへろしないのは強みだと思います。ただ、それが可能であることは知っているばかりに、高音でもその柔らかさを生かした歌い方をしてもいいよな、と思わないことは無いです。どちらでも可。
『カヴァレリア・ルスティカーナ』。カタラユードさんは休符も大切にし、楽譜上記載がないところでもポーズを入れてくれることが多々ありますが、この間奏曲では何故か旋律の切れ目を必ず繋げてきます。そこは切ってもいいんじゃないかな!? 一息入れた方がメリハリがあるように思います。
『妙なる調和』。今更なんですけど、ベルナイムさんがイタリア語で『妙なる調和』を歌うのって珍しいですよね? 初めて聴いたし。彼、いっつもこの曲フランス語版で歌ってますよね? そう考えると、レンスキーのアリアをロシア語で歌ってもらえているのって有難いことなのかもしれない。アラーニャ先生……。
まあ、ベルナイムさんが歌うなら元がイタリア語でもフランス語の方が合うとは思いますが、今日はイタリア語は存在していたし、普通に不調の中よく頑張ってくれましたと言いたい。
カヴァラドッシはボナパルティストの画家さんなので、ベルナイムさんくらい柔らかい声でもキャラクター的にはアリですよね。イタオペテノールの代名詞役の一つなので、そういった「ハマり役」イメージからは外れますけども。
後半・フランスプログラム
休憩を挟んで第二部です。
『ドン・キショット』序曲。チェロを弾くパパ上曰く、「めちゃくちゃ安全運転」。音を狙いにいっているとの評でした。まあこういうのは実際にやっている人に訊くのが早いですね。
『真珠採り』。なかなか目にかかる機会が無い演目です。過去にオペラオー君の記事で少し言及したことがありますけど、わたしも二重唱くらいしか知らないぞ……。
そんな貴重な機会でしたが、全編にわたってppで纏めてきました。いや、これはよいコンディションの時に聴かないとわかんないな。調子がいい時はどのような解釈で歌うのか気になります。またの機会に期待しましょう。
『RJ』。終始ppだった『真珠採り』の時点で不穏感満載でしたが、案の定第二部から不調っぷりが加速。一度14日に聴いているだけあって比較しやすいのが仇になったと言いますか。
もう完全に発声の方法が第一部から変わりました。どの音、或いはどの言葉を出す時なのかの特定まではこの短時間ではできませんでしたが、明確に喉か口の一部に封印されている空間があるのを感じました。多分そこが痛んで、その場所を使いたくないために迂回して、発声方法が変更されています。そこまではわかるのだけど、そんなことをしてまで無理しないでくれていいから……!! という心配と、よくまあそんな状態で歌えるもんだ……という感心と……。
ロミオはハマり役として演じ慣れているからか、ロミオになると動きがつきます。それまではほぼ直立不動でしたからね。リサイタルでどれくらい演技要素を入れてくるかは本当に人に拠りますが、ベルナイムさんはあんまり動かない派。でも演唱上手ですよね、音楽の方にちゃんと演技が乗っているのは素晴らしいことです。
いやしかし、サントリーホールでフランスものという、本来であれば最高の舞台が一番苦戦を強いられることになるとは。本当に舞台というのは何が起こるかわかりませんね……。
最後に『ウェルテル』です。
不調の中よく頑張りましたで賞としか言えないです。でもマスネって絶対ベルナイムさんにウェルテル当て書きしてますよね。オシアンが一番似合うと思う。
いつもとは違う場所にブレスが入り、そもそもブレスの量が増えました。音程のブレも散見されますが、高音は無理矢理力業で押し切った。もうひっくり返らないかヒヤヒヤものです。『オネーギン』観る時とは違う意味でとても緊張しました。怖いわ!! でもなんとか大きな疵はなく終了。
明らかに不調なのにも関わらず、アンコールも1曲歌ってくださいました。いや、もう、無理しないで帰って休んで欲しいんですけど!! ここで喉を壊されなんてしたら、我々フランス国民から殺されますから、勘弁してください。
最後にご挨拶する時の声がガッサガサで、ろくに喋れていない状態だったのに、これでどうやって歌ったんだ?
不調なときこそ素地が試されるとは言いますが、声楽有識者や、普段からベルナイムさんを聴いてる人にとっては不調は明らかであったように思います。しかし、感想を漁ってみると、「不調とは感じさせないような~」と言っている人も多数見受けられたので、ある程度リカバリーはできていたのかも。ベルナイムさんのレンスキーファンとしては、これを彼の実力だとは思って欲しくありませんが、不調でもここまでやれると証明したことはある意味でよかったのかもしれません。健康第一ですけど!
聞いたところによると、終演後にサイン会までやっていたそうな(すぐに会場を出てしまって知らなかった)。そんな、今をときめく売れっ子オペラ歌手を酷使しよる。ブラックなのか? 絶対早々に帰らせて休ませた方が良いぞ??(何回でも言う)。
休憩中には、我らが三島先生にお会いできました! 14日に続いてご挨拶できて嬉しいです!! 意見も概ね一致していてそれも嬉しいです。先生の専門的なレビューを是非読んでください。
↑ 三島先生の批評はいいぞ。全部読もう。
終演後には声楽有識者と意見交換して沢山お話できて、それもとっても幸せでした! この日は一人で感想を持ち帰っていたらモヤモヤしっぱなしだったと思います。お付き合いいただいて大感謝です。またかまってやってください!!
今回、二日目は不調の中大変だったと思いますが、また来日して貰えたら嬉しいですね。やはり一日目から二日目までの期間が空きすぎたんだ……。
またリサイタルか、フランスオペラ全幕が望まれているのかな、という気がしますし、いずれにせよお邪魔するとは思いますが、わたしは更に進化したレンスキーが聴きたいのであった。宜しくお願いします!!
最後に
通読ありがとうございました。今回は比較的短く(?)、6000字強。レビュー、最長でもこれくらいに纏めたいところなんですが……。いや、感覚がバグっている気がするな……。
来月のパリ・オペラ座のバレエ『オネーギン』は、当初行こうと思っていたんですが、諸々検討して割に合わないと判断し、削ってしまいました。
我ながら、「『オネーギン』でもパリに行かないなら、今後いつ行くんだ? 一生行かないのか?」と思いましたが、ベルナイムさんが全幕レンスキーを歌うとなったら遊びに行きたいですね~。いつ全幕やるんだ。ロシア語を鍛えてから是非やりましょう。
次回の記事ですが、『オネーギン』のレビューを予定しています。『オネーギン』ラッシュなのです。2025年、怖い! 本当に何があったんだ? 気長にお待ちください。
それでは、今回はここでお開きと致します。また次の記事でもお目に掛かることができましたら幸いです。