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生まれて初めて東雲(しののめ)駅に行ってみた話

江東区に、東雲(しののめ)というかわいい名前の駅がある。

年末のある日、その東雲に初めて用事があり、朝からバスに乗って家族で出かけた。

バスに揺られて、いつもと違う場所に行く。ただ都営バスに乗るだけとはいえ、お弁当を先に胃袋に入れた遠足のようである(朝食は塩むすびだった)

東雲には何があるんだろう。

何もない気がする(失礼)

バスと電車の乗り換えのために降りたことはあるけれど、街を歩いたことがない。倉庫とか工場とか、あとはマンションで、街というイメージはないかもしれない。

*・*・*

 

駅前のフットサルコートで習い事のイベントが無事に終わり、暇だったのでとりあえず東雲二丁目公園へ。

公園の道すがら、面白い建物を発見した。

APITオートバックス東雲。オートバックスって、車の修理とかタイヤ交換とかをする店だと思う。自動車学校に泣きながら通い、仮免試験に落ち、一度も運転することなく15年以上が経過している永遠のゴールド免許保持者の私から、最も遠い店だと言っていい。

しかしその建物に、「本」とスタバの女神マークの看板がぶら下がっていた。どういうことだろう。これってもしかしてTSUTAYAとスタバが合体した幸せすぎて笑いが止まらないあの空間が、車の修理店と一緒に存在してるってこと?

公園で遊ばせながら、頭の中はその「?」のことでいっぱいだった。Googleマップで先に覗いたところ、間違いなく至福空間である。極寒の公園見守りもやる気が出ると言うものだ。

「ねぇ、そろそろワッフルとジュース食べにいくのはどう?」

「え?いやだ!」

「ダメ!バツ!」

というやりとりを何度か男子二人と交わしていた。容赦ない。毎日あんなに「ママ大好き」と言ってくれるのに無慈悲である。夫は傍観している。肉が食べられるわけではないから、あくまで中立の立場を守っているのだ。

何度かの声かけの後、突然のOKが出た。この好機を逃してはならない。車専門店なので歩いて入店する方法がよくわからなかったが、なんとか駐車場の脇から入ってエスカレーターで2階へ。

入って目を見張る。車関連グッズ店と、一体化したTSUTAYA&スタバがある。これは斬新!(それともよくあるの?)

本棚も「クルマと旅行」「クルマと子ども」みたいになっていて全力の車ワールド。うわぁ〜面白いし楽しそう!このとき私は、まだ恐ろしい場所に足を踏み入れてしまったことに気づいていなかった。

*・*・*

 

3歳次男がわぁっ!と歓喜した。本の合間に、たくさんの車のオモチャ(というの?摸型?大人向けの異様に高いやつ)が並んでいるのだ。

「これほしい。これ買ってよね」

7,800円、みたいな値段が書いてあった。トミカではないのだ。

「これはおもちゃじゃないよ。大人のなの。だから買えないの」

説得するがもちろん聞き入れられるわけなく、爆発が始まった。もう帰りたい。しかし長男の方はジュースとワッフルに気持ちが向かっておりスタバの席を取って待っている。

夫が次男の説得を担当することとなり、私はスタバで鬼のようにワッフルやケーキ、ジュースやコーヒーを注文して迅速な準備に努めた。しばらくして、夫が無事に次男を連れてきて着席した。

「どうやって説得したの?」

「いや、もうとにかく『お金かない』を繰り返しただけ」

3歳次男はリンゴジュースを飲みワッフルを頬張りながら、

「なんでコインがないの。クルマがほしい。コイン出してよね」

ブーっとしている。かわいいが緊張しかない。

「あれはすごーく大きなコインが必要なの」

必死で力説する。

「大きなコインって、500円玉より?」

6歳長男が目を丸くしている。このあいだ500円玉が一番大きいと習ったのに、まだ上があったとは……

「石でできてるの?」

「そうそう」

「昔のお金みたいだね」

やがて次男が大泣きし出した。

「買ってよね買ってよねコイン出してよ!クルマ欲しい!欲しい欲しい欲しいッ!」

収集がつかなくなってきたので、あらゆる食べ物を袋に詰めて撤収作業に入る。このまま店を出られたらどんなに楽だろう。しかしこの場合、何かしらの代替物で心を満たさなければ大爆発で収拾がつかなくなることは目に見えている。

我々は真剣だった。運よくトミカコーナーを発見し、必死の説得に入る。

「ほら!これ見て!しまじろうのトラックだって、こんなの見たことない!」

「こっちはおさるのジョージの車だッ!」

通常のトミカより高いシリーズだが、一万円超えの車が並ぶ中では全てが有力候補になる。昨日もトミカとプラレールを買ったし、旅行の売店でも電車のオモチャを買い、サンタクロースもプラレールを持ってきた。こんなに買い与えるのは教育上良くないのでは、などということを考えている余裕はない。修羅場を潜り抜けることが先。生きるのだ、今を。

「コレがいい」

次男はプリウスのガチャガチャに目を奪われたようだ。400円。素晴らしい。小銭がないため、長男のトミカを現金で払って、無事にガチャガチャを回す。

「コレがほしいの。黄色がいいの」

黄色のプリウスを指差している。ガチャガチャなのでそれが出るとは限らないんだよ〜〜〜でも今はそんな正論を言ってもしかたない。

黄色よ、出ろッ!

念じる。

心の中で祈るようにガチャガチャの玉が出てくるのを見守る。神よ。

出ました、黄色のプリウス。

救いの手は、間違いなく差し伸べられたのだ……

マリオのトミカと黄色のプリウスを手にした満面の笑みの男子たちを連れて、無事にオートバックスを後にする。ああ、よかった。本当によかった。おしゃれなTSUTAYAで本なんて一冊も手に取ってないけど!

*・*・*

 

「深川車庫から帰りたい」

長男の意見により、帰りのバスはは東雲駅前ではなく深川車庫というバス停から乗ることに。

無数のバスが並ぶ車庫の中に、本当にバス停があった。バス達に囲まれた空間でバスを待つ。なんか面白い。子どもと一緒でなければ、一生来ることはなかっただろう。

疲れた次男はバスの中で眠りに落ち、そのあたたかい重みを受け止めつつ、握りしめた黄色いプリウスをそっとリュックにしまっておく。

フットサルコート、公園、面白いTSUTAYAとスタバ、車車車、深川車庫、マリオのトミカ、黄色いプリウス。今のところそんなイメージの東雲である。また行ってみたい。

路線バスに乗って、知らないバス停を降りて歩く。それだけで面白いことがたくさんある。今回はあまりにスリリングだったけど、ね。

来年もたくさん散歩したい。

皆さま、良いお年をお迎えください。

Sweet+++ tea time
ayako

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