2026年3月17日、午後5時半を過ぎたころ。一日の作業を終えた私は、ロッカールームで仕事の後片付けと翌日の準備を済ませながら、ワイヤレスイヤホンで『伊集院光のタネ』を聴いていた。
毎週火曜日から金曜日にかけて、午後5時半からニッポン放送でオンエアされている『伊集院光のタネ』は、その名の通り伊集院光がパーソナリティを務めているラジオ番組だ。“タネ”と呼ばれているテーマに沿ったメッセージをリスナーから募集し、それらすべてに伊集院自身が目を通し、選出して紹介している。
私はこの番組のゆるいリスナーだった。放送開始当初は「あのニッポン放送と一悶着あった伊集院がレギュラー番組を始めるのか!こりゃ聴かないわけにはいかねえや!」と野次馬根性をむき出しにしながら聴き始めたのだが、一般のリスナーから送られてくるエピソードの良い塩梅の面白さ、それを受け止める伊集院のフラットなようでいて少し自己主張が強いリアクションの人間臭さ、ちょうど定時を過ぎたあたりで放送される時間帯の良さ……などなどの理由が重なって、すっかりリスナーになってしまった。
この日のタネは【思い出のラジオ番組】。リスナーから送られてきた様々なラジオ番組の思い出が紹介されていた。特に衝撃的だったのは、佐野元春のラジオ番組『元春レイディオ・ショー』のエピソード。メッセージの投稿者がライブ会場の楽屋に呼ばれて佐野元春と若き尾崎豊と三人でセッションしたという話はあまりにも強烈で、一般人から送られてきたとは思えないほどに伝説的だった。
そんなメッセージが紹介された直後のことである。
伊集院「ラストです! スガヤさん」
ラジオネームが読み上げられた瞬間、「おっ、自分と同じ名前(ハンドルネーム)の人がいるんだな」とメッセージの投稿者に対して親近感を覚えた。この数日前に、『カミナリの記録映像』でカカロニの菅谷さんをメインにした企画が配信されているのを見て、「当たり前だけれど、自分以外にもスガヤって名前の人はいるんだよなあ」と再認識していたことも大きかったのだろう。ところが。
伊集院「いつも楽しく拝聴しています。私にとって思い出のラジオといえば、『フワちゃんのオールナイトニッポン0』です」
……。
これ、俺じゃん!!!
そのことに気が付いた瞬間、数ヶ月前の記憶が一気に蘇った。
前回の【思い出のラジオ番組】回(※『伊集院光のタネ』では好評なタネについては何度か再利用されている)のときに、「読まれるかどうか分からないけれど、送ってみよう」と衝動的に番組のフォームからメッセージを投稿したのである。当時、『フワちゃんのオールナイトニッポン0』リスナーだった私は、ニッポン放送の彼女に対する処分について、強い不満を抱いていた。SNSでのつぶやきによる炎上を受けての活動自粛については確かに自業自得だが、その弁明の場を与えることなく、『フワちゃんのオールナイトニッポン0』を強制終了させることを決断したニッポン放送に不義理を感じていたのである。その感情を「伊集院なら受け止めてくれるかもしれない」と思い、番組にぶつけたのだ。
伊集院「くだんの発言をきっかけに彼女のことを嫌う人は今でも少なくないと思います。事実、彼女の下品で身勝手で自由奔放なトークは、とても褒められるようなものではありませんでした。ですが、他人と上手くコミュニケーションを取ることが出来ない私にとって、その我が道を突き進んでいく生きざまは、楽しいことがない日常に差し込む一縷の光になっていたように思います。飛行機に乗り遅れた話、ホテルに忘れ物をした話、仕事で一緒になった素人にうんざりする話を物凄いテンションで語る彼女の声が、また聴きたいです」
ちなみに、このメッセージは、フワ氏がプロレスラーに転身し、活動を再開させることが発表されるよりも以前に送ったものだ。そのため、メッセージに込められている感情は、かなり切実なものになっている。もしも今、同じような文章を書こうとしても、この熱量を保つことは出来ないだろう。
これに対する伊集院のリアクションもありがたかった。
伊集院「こういうメールがあると、ラジオが少し救われるような気がします」
私のメッセージがどうのこうの以前に、この回はシンプルに良いメッセージが多かったので、聴ける方は聴いてみてください。それにしても……ビックリした。体温が二度ほど上がった気がする。