2001年8月・9月にシアターサンモール(東京)と近鉄小劇場(大阪)で開催されたライブの模様を収録。ソフト化されていないラーメンズの初期公演(第一回公演『箱式』から第四回公演『完全立方体』までの全四公演)で演じられていたネタの中から、厳選された名作コントが再演されている。ちなみに、ラーメンズの単独公演で演じられているコントの多くは、2017年からYouTube上で無料公開されているが、本作に収録されているコントは一本も配信されていない。
出演者は五人。ラーメンズの小林賢太郎・片桐仁に加えて、多摩美術大学時代の同期生でアーティストの三宅信太郎、初期の小林賢太郎プロデュース公演を支えた俳優の室岡悟、元芸人で後に『TIGER&BUNNY』シリーズ構成を担当する俳優・演出家・脚本家の西田征史が客演として参加している。
本編で演じられているコントは全8本。
オープニングを飾るのは、ラーメンズの初期の代表作として名高い『現代片桐概論』。片桐演じる“ニホンカタギリの剥製”を隣に立たせている状態で、小林演じる非常勤講師が現代片桐概論の講義を展開する様子を描いたコントである。『爆笑オンエアバトル』第一回収録で披露されたことでも知られているが、本作のバージョンは『オンバト』よりもコント世界におけるカタギリの生態が子細に説明されており、単なる大学の講義のパロディとしての領域を超え、不思議な異世界への誘いを感じさせられる。その一方で、非常勤講師がニホンカタギリの剥製のセンシティブなところに触れて、その反応を笑いに昇華するという、ちょっとしたおふざけのようなシーンも見受けられた。高い精度と悪ふざけ。その振れ幅の広さが、本作が初期のコントの再演であるということを再認識させてくれる。
ラーメンズの初期の代表作といえば、本作には、日本語学校の講師と生徒が教科書を読み進めるコントシリーズ“日本語学校”も収録されている。『日本語学校(フランス篇)』である。従来の日本語学校シリーズでは生徒役を片桐が務めているが、本作に収録されているバージョンでは、小林以外の出演者全員が生徒として登場している。従来の日本語学校シリーズと同様、このコントでも、日本語の意味を壊して別のニュアンスを付け加える手法が使われているが、初期のバージョンということもあってか、「バッキンガム宮殿」などのワードを男らしく読み上げるだとか、「ズボン」などのワードを擬音化するだとか、かなり単純な変化を加えているだけのボケが目立つ。『オンバト』で披露され、その音源からGIFアニメが作成されたことでネットミーム化した名作『日本語学校(イタリア篇)』のような爆発力を期待すると、ちょっと物足りなさを覚えるかもしれない(あのコントが公式でソフト化されていないのは残念でならない)。
これらの代表作と比べると、他のコントはやや弱め。速読を身につけることが出来るというカセットテープを売りつけようと目論んでいる二人組が、あんまり賢くなさそうな相手をターゲットにして小芝居を吹っ掛けていくのだが、いざ演技を始めると緊張してしまって、台本にはないようなことばかりを口走ってしまう『文庫本』。釣りに出かけるためにお弁当の準備を進めている男と、その歌声に起こされてしまった同居人のやり取りを描いた『釣りの朝』。娘に「自分の仕事は海賊だ!」と噓をついていた日曜出勤中のデザイナーが、家からかかってきた娘からの電話に対しても、その嘘をつきとおすために同僚を巻き込んでいく『小さな会社』。どのコントも決して悪くはないのだが、なんだかパッとしない。
その中でも、バツグンに面白かったのが『タカシと父さん』。勉強中の息子の前に現れた父さんが、様々な言葉を駆使してキャッチボールに誘うだけのコントなのだが、とにもかくにもバカバカしい。何も考えなくても笑えるようなギャグが次から次へと飛び出して、しかもオチのつけかたが上手い。言い回しも絶妙で、「五人分身ピッチャーだ!」「チョップ軍隊!チョップ軍隊はチョップだけで戦う軍隊!」「文明開化!文明開化!石炭を食う鉄の馬!」などのワードは、一度聞いたら忘れられない。また、ちょっとしんみりした気持ちにさせられる、終盤の展開がたまらない。ウケ量という意味でも、相方が微動だにしないという意味でも、『現代片桐概論』と双璧をなすコントといえるだろう。
本作でしか見ることの出来ない初期ラーメンズ。そのネタの出来にはややムラを感じるが、後のラーメンズへと繋がる基礎を感じさせられる瞬間も少なくない。ブレイク後のラーメンズしか知らないならば、一見の価値はある作品である。……というか、DVDの寿命を考えると、そろそろ見れなくなってしまうかもしれないので、見ておいた方が良いぞ。
・本編【87分】
「現代片桐概論」「文庫本」「タカシと父さん」「釣りの朝」「かわいそうなピンクの子犬コロチンの物語」「片桐教習所」「日本語学校(フランス篇)」「小さな会社」