2024年6月に東京・ユーロライブで開催された単独ライブを収録。
ファイヤーサンダーは﨑山祐とこてつによって2014年に結成された。二人が出会ったのは吉本興業の養成所「NSC」大阪校。結成当初はよしもとクリエイティブ・エージェンシーに所属していたが、コントがやりたいという思いから2015年に上京。しばらくフリーとして活動した後に、現在の事務所であるワタナベエンターテインメント所属となった。2018年に「第39回ABCお笑いグランプリ」で優勝、関東を拠点に活動する芸人としては史上初の快挙を成し遂げる。2023年に「キングオブコント2023」にて初の決勝進出を果たす。翌年の「キングオブコント2024」ではファーストステージを一位で通過、ファイナルステージに進出して総合三位の成績を収めている。
本編に収録されているネタは、オープニングコント『転売ヤー』を含め全八本。そこに幕間映像としてラジオコントなどが挟み込まれている。ネタの内容としては、テレビドラマでよく目にするような定番のシチュエーションを期待させておきながら、そこから大きく裏切られる展開を採用しているものが主。この裏切りの意外性が大きければ大きいほど笑いに転換されるわけだが、ファイヤーサンダーの場合、この意外性の部分に若干のムラがある。まったくつまらないということにはならないのだが、めちゃくちゃハマッているときと、そこまでハマッていないときがあって、その起爆力の差がちょっと広いように感じられた。
個人的に印象に残っているネタは『とりしげ』と『依存症』。『とりしげ』は居酒屋で働きながら芸人を志している青年が、店長から「社員にならないか?」と提案されるコント。夢見る青年に現実をズバズバと突き付ける店長の言葉にやたら重みがあり、芸人が売れない芸人をテーマにしてネタを作る上でのリアリティを感じさせられた。『依存症』はとある依存症を抱え込んでいる人たちの自助グループの様子を描いたコント。ある特定の芸能に対するネガティブなイメージをとことん掘り下げたものになっており、その底意地の悪さとバカバカしさのバランスがとても良かった。こういう気質のネタはどうも嫌いになれない。……ふと思ったのだが、ファイヤーサンダーは芸人をテーマにしたコントを演じると、普通の設定のコントよりもバツグンに面白さを増すタイプのコンビのようだ。芸人をメタ視点で切り取って、きちんとネタ化して昇華する。実はアルコ&ピースと同じ系統のコンビなのかもしれない。
これら本編映像に加えて、特典映像としてDVD用の撮り下ろしコントが収録されている。演じられているネタは『毒舌散歩』『会合』『養成所』『野球部と不良』の四本。『毒舌散歩』と『野球部と不良』は「キングオブコント2024」決勝の舞台で披露されたネタでもある。この二本を収録するのであれば、「キングオブコント2023」決勝で披露された『日本代表メンバー発表』のネタも収録されてほしかったような気もする。ここでもやはり芸人をテーマにしたネタが面白い。散歩番組で毒舌芸人としての才能を開花させた男の元へと刑事がやってくる『毒舌散歩』もさることながら、養成所で悪目立ちしている男が初めてのネタ見せにしゃしゃり出る『養成所』のリアリティが良い。冷静に芸人を見る目を持っているのだろう。……或いは、若手芸人を演じるこてつが、あまりにも若手芸人過ぎるところが良いのかもしれない。10年選手には見えないんだよなあ。
ちなみに、本作のところどころにブラックユーモアの要素が盛り込まれていて(『谷口選手』とか、かなり「良くなかった」)、こういう芸風だったかしらんと思いながらスタッフロールを眺めていたら、作・構成・演出のところに﨑山祐とともに上田航平(元ゾフィー)の名前が記載されていて、なにやら納得させられた。ゾフィーのアウトローな笑いは、このようにして後の世へと引き継がれていくのか……。
・本編(66分)
『転売ヤー』「オープニング」『バーテンダー』「ラジオコント「外来語禁止ゲーム」」『とりしげ』「ラジオコント「将棋の感想戦」」『タイムスリップ』「手相」『謎のおじいさん』『依存症』『お会計』「ラジオコント「高校の同級生」」『谷口選手』「エンディング」・特典映像(22分)
『毒舌散歩』『会合』『養成所』『野球部と不良』