リアルタイムで視聴したときの記憶だけで感想を書きます。
トップバッターのヒロ・オクムラは、就職最終面接のシチュエーションにサークルクラッシャーの構図を取り入れた一人コント。非モテ男子たちが一人の女性に振り回される有り様と面接を受ける側であるはずの女性のヤバさを軸とした内容で、設定としては割とオーソドックス。その設定をなぞったまま終わってしまった感があり、面白かったのだけれど、賞レースの決勝戦で見るネタとしては物足りない。手堅い笑いの、その先を見せてほしい。そんなヒロ・オクムラの手堅いコントの後だったからなのか、続くチャンス大城のコントがやけに面白かった。ハリウッド女優と照明係のドラマを描きながら、お得意の細かいモノマネやエピソードトークなどを挟み込んでいく、チャンス大城のベストアルバムのような内容。破天荒なストーリーもさることながら、他に類を見ない独自のパフォーマンスが無秩序に投げ込まれている姿に、地下芸人としての底力を感じさせられた。
三番手の田津原理音もこれまたコント。棚の組み立てに失敗した田津原が、最初から説明書を読み返す。説明書がスマホで表示されるところの現代性もさることながら、無機質に描かれた説明書の登場人物たちがドラマチックなやり取りを始める展開も魅力的。もっとも、そういった仕掛けや展開は割とオーソドックスで、それこそ審査員を務めていた陣内智則の芸風を想起させるものではあったのだけれど、それを見事に換骨奪胎させたコントに仕上げていた。やけに躍動感にあふれる矢印の使い方も素晴らしかった。目に嬉しいタイプのボケだ。四番手はハギノリザードマン。上京する息子の部屋を訪れた父親が、かつて息子のために作ってあげた創作物の数々を持ち出して、その思い出にふける。基本的には自作のアイテムを使って“あるあるネタ”を披露するモノボケスタイルのコント。あるあるネタの精度も自作のアイテムもやたら完成度が高く、それだけで十二分に面白いのに、その上で終盤にやたらペーソスに満ち溢れた間を用いることで、コント全体に深みが生じる結果に。この終盤の間については、意識的に取り入れた演出なのかスタッフのミスなのかという議論があるようだけれど、いずれにしても良い効果をもたらしていたのではないかと個人的には思う。
五番手のルシファー吉岡は「もしも自分が菅田将暉と同じ見た目だとしたら?」という空想について深い切り込みを入れた一人コント。「見た目が変わったとしても、中身が今のままだったら、結局は元に戻ってしまうのではないか?」というメッセージがあまりにも突き刺さってしまって、見ているときは笑うよりも感心が買ってしまった。無論、「もしも菅田将暉が俺みたいな見た目になってしまっても、俺のことを、今の古民家から古民家カフェにしてくれるんじゃないか?」というような、的確で面白い例えを次から次へとぶち込んでいて、たまらなく面白かったのだが。ちょっと撃ち抜かれてしまった。昨年のR-1決勝で披露した婚活パーティのコントと合わせて、自身のYouTubeチャンネルにアップロードしてほしい。六番手の吉住は脳内会議をテーマにしたコント。アウトドアタイプの自分、インドアタイプの自分、そんな二人の激しい主張に振り回されている自分、この三者三様の激昂がたまらなく面白かったのだが、このぶつかり合いの面白さから更なる展開を期待していたのに、その中だけの展開で終わってしまったところに、そこはかとない肩透かし。バカバカしいオチが無ければ、もっと点数は下がっていたのでは。
七番手はさや香・新山。その場その場での思い付きをそのまま喋っているような、アトランダムに細かいトークを繰り広げる漫談スタイル。舞台の中央にセンターマイクを配置しておきながら、それを音声の機械としてではなく、漫談の内容を可視化するための小道具として扱っているあたり、自身が漫才師であることを前提としたネタであることは明白。こういう小細工はどんなに面白くても評価されにくい。もっとも、そこに漫才師としての意地のようなものが垣間見えたような気がしないでもない。八番手、友田オレ。友田扮する歌手・風間和彦が授賞式で『辛い食べもの節』を熱唱する。中身のない歌を熱唱するスタイルは往年のムーディ勝山を彷彿とさせる。辛いものを好きな人間ではなく嫌いな人間の立場から歌うスタンスのバカバカしさもたまらない。ただ、ボケ数の少なさから、さほど評価されることはないだろう……と、リアルタイムで視聴している段階では思っていたので、まさかの高得点には些か驚いた。こういうネタが評価される場だったのか。
予選のトリとなる九番手になったのはマツモトクラブ。自由奔放な外国人生徒たちの発言に振り回される日本語学校の教師の滑稽と哀愁を描いた一人コント。孤独を感じている人を演じたコントといえば、マツモトクラブの得意分野だが、今回のコントはやや笑いを取りに行き過ぎている感があり、面白いのだけれども「マツモトクラブがこのネタを演じる意義はあるのだろうか?」という疑念が残った。もっとも、こういうスタイルにしなければ決勝戦に上げなかったであろう、予選の審査員によるところも大きいような気もするが。
ファイナルステージに進出したのは、田津原理音、ハギノリザードマン、友田オレの三組。一番手の田津原理音はシンプルなあるあるネタで勝負。「別にええねんけど……」というフリから、イラッとする日常のシチュエーションをフリップで表現する。安定して面白いのだが、その安定感が故に伸びしろは少なめ。続くハギノリザードマンも、これまたあるあるネタ。一本目と同様に小道具を取り扱いながら、また独自の切り口のあるあるネタを演じていく。田津原に比べて、あるあるの精度は格段に高いのだが、こちらもやはり伸びしろは少なめ。大会のトリを飾った友田オレは「ないないなないなない音頭」を披露。共通性を感じさせないワードを並列させ、最後に共通項を歌い上げるギター漫談のSAKURAIの芸風をフリにしたパフォーマンスなのだが、主軸である「それらのワードが友田オレとどのように関係無いのか」という切り口が観客の予想の範疇を絶妙に避けており、とても面白かった。優勝も納得である。もっとも、他の二人があるあるネタでなければ、もうちょっと白熱した戦いになっていただろうという意味では、やや消化不良の感は否めないところだが……。
こちらからは以上です。