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『万事快調〈オール・グリーンズ〉』全ては彼女らの意のままに?

 

万事快調〈オール・グリーンズ〉
制作年 : 2026年 / 監督 : 児山隆

茨城県東海村地方にある底辺高校の女子高生たちが、大麻を栽培して一儲けしようと企む映画です。と、この時点で何となくどういう作品のトーンなのかは察せられるのですが、青春映画でありながら犯罪映画でもあり、物語はこちらの予想を超える展開を見せます。
 
主人公の朴秀美、矢口美流紅、岩隈真子(イワクマコ)の3人は工業高校の同じ2年A組の生徒です。この3人は特に仲良しというわけではありません。朴秀美は家庭内暴力の激しい父親のせいで機能不全に陥った家庭に暮らしており、東海村サイファーという集まりに所属するラッパーでもあります。朴秀美は成績優秀でクラスの人気者である美流紅のことを嫌っていましたが、彼女にも暗い過去があることを知ります。それは東海村原発の職員であった父の自殺とそれをきっかけに精神を病んでしまった母の存在でした。そして自分の世界に心を閉ざしてしまった母から向けられる理想の娘像に応えるために美流紅は「人気者」を演じていたのです。そんな2人は共通して「この村(=世界)から抜け出したい」という野望を抱いていました。
 
意気投合した2人はある計画を始めます。それは朴秀美が地元の有名ラッパー・ノスフェラトゥの自宅で手に入れた大量の大麻の種を栽培して密売し大金を稼ぐというものです。偶然にもその事実を知ってしまったイワクマコも巻き込まれ、3人はオール・グリーンズという名を掲げ、高校の屋上庭園に残された元園芸部のグリーンハウスで大麻の栽培を始めるのでした。
 
この映画は大麻の密売という犯罪要素はあるものの、その基盤には高校生なら誰しも経験する抑圧・団結・解放をテーマにしており、その意味では至極真っ当な青春映画です。主人公たちはそれぞれ個人的な悩みを抱えています。朴秀美と美流紅は先の通り家庭内に問題があり、イワクマコも実家の農業を継ぐことを拒んでおり東海村から抜け出したいと願っています。また、大麻栽培中のグリーンハウスで体を重ねていたところを目撃されオール・グリーンズに加入することとなった先輩野球部の武智と村上のカップルは人目を憚って恋愛を公にすることができず不満を溜めている様子でした。東海村や家庭という小さな世界から受ける閉塞感とそれに対しての反抗心は高校生らしい等身大の感情であり非常に共感性が高いと言えます。なので、その点では犯罪映画の側面を持ちつつも彼らに感情移入しやすい作りになっていると思いました。
 
(ここは特に好きだったところなので話させてほしいんですが、野球部の武智(目がぱっちりしていてよく喋る方)は本当に良い味出てましたねぇ。グリーンハウスにいたところを目撃されてしまい、大麻の密売に加担させられそうになった時の動揺具合はコミカルでめちゃくちゃ面白かったです。少し前のアニメーション映画の『化け猫あんずちゃん』に出てくる”あまのじゃく”という不良グループにいた林という小学生に動きが似ていると思いました。以上、余談でした。)
 
一方でリアリティラインの低さは気になりました。これを言ったらおしまいだとは分かりつつも、大麻の栽培に学校関係者が誰も気づかない点や東京の件から無傷で帰ってこれた点とか、グリーンハウスの大爆発とノスフェラトゥへの叛逆とか、本当にそんな上手くいくだろうかとどうしても引っかかってしまいました。これは青春映画×犯罪映画の悪い部分が出ていたかなと思います。硬派でもなく、信じられる嘘でもなく、どちらにも過度に振り切れないところが結果として中途半端な印象に見えました。これがたとえば実写ではなくアニメーションであれば、突飛な事象でもうまく騙されることができるのではないかと思います。
 
基本的にこの映画は主人公たちが一番賢いような描き方をしていますよね。作中では親や教師、麻薬関係の悪い大人など彼らの上位に立つ存在がいくらか登場します。学生が非行に走る系映画といえば大抵主人公の計算を上回る人物や社会のシステムが登場して思い通りに行かなくなるというイメージがあるのですが、彼らはそういう存在をうまく躱して逃げ切ってしまいます。それを「型にはまらない物語」としていると思うのですが、言ってしまえばご都合主義的な展開な訳で、この流れにノれるかどうかで、映画の感じ方は大きく変わるだろうなと思いました。個人的にはもっと気持ちよくノせられるような、良い「映画の嘘」が欲しかったです。多分そう感じるのは、朴秀美たちの悪行があまりに綺麗にでき過ぎているからで、冒頭の交差点で赤ん坊を抱えた女性が車に撥ねられたシーンのような、支配できない外部からの力が働いてこないのが不自然に見えたからかもしれません。
 
ただ、そういう万能感みたいなのも高校生らしいとも言え、やはり全体に漂う青春映画の爽快感や疾走感は素直に良かったです。映画の最後で朴秀美たちの未来が簡単に紹介されたと思いきや美流紅が「そんな訳けねーだろ、バーカ」と観客を一蹴するシーンがありますが、未来は彼女たちも含めて誰にも分からない、ただそれでもひたすらに走り続ける若者のエネルギーは正真正銘、嘘のないメッセージだと思います。




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