
WARFARE
制作年 : 2025年 / 監督 : アレックス・ガーランド / レイ・メンドーサ
個物語ではなくありのままを。
鑑賞というよりも体験。
第二次湾岸戦争におけるアメリカ軍のイラク侵攻。アルカイダ軍勢に支配された危険地帯においてアメリカ軍の特殊部隊が体験した出来事を、当時の隊員が監督を務め、自分や仲間の隊員たちの記憶をもとに作成された作品です。
これは特定の誰かを英雄的に描こうとしたり、相手を悪に見せるようなことはせず、むしろ戦争というものの残酷さを見せています。そしてこの映画のタイトルが表すように、これは漠然と「戦争」について語る映画ではなく、その状況下においてある時ある場所で起こった「戦闘行為」そのものにフォーカスしています。
この映画は相手国の兵士との戦闘の一部始終を克明に記録しています。実際にあの場にいた米軍兵士の証言をもとに作成したと言われる通り、本作の出来事はすべて彼らの目線から語られます。ある意味で再現VTRのようでもありますが、単に過去を振り返っているというよりは、むしろあの時の「今」という瞬間が鮮明に描かれているように感じられました。
例えばIEDによって両足を負傷したサムが悲痛な叫びを上げる様子は、破裂した肉体や横たわる死体以上に戦争の恐ろしさを感じます。痛みと死の怖れからくる絶叫は、前夜までの穏やかさとは対極にある恐怖や緊張感を表していて、自分たちがいる場所がどんな場所であったかを、つまりどれほどの「地獄」であったかを思い起こさせます。どんなに残酷な光景よりも仲間の苦しみが最も痛ましく感じられましたが、実際に作り手がそう感じた体験が映像に表れているんじゃないかと思いました。
この映画はTOHOシネマズ日比谷のDolby Atmosで鑑賞しましたが、戦闘機が低空飛行する時の音は多分もっと凄まじいものなのではないかと思います。というのも、全然映画と関係ないんですが、むかし都内の某軍事基地の近くを歩いていた時に戦闘機が飛び立ったことがあって、その時の音は「バリバリッ!」というような雷が落ちたような音だったんですね。機体は見えなかったので一瞬何が起こったのか分からなかったのですが、空が割れるような、信じられないような音が聞こえた時は身の危険を強く感じました。仮に威嚇飛行の時に同じ音が鳴っていたとして、映画館でその轟音を再現するのは多分(観客の耳が持たないので)無理なんじゃないかと思いますが、そういう音の恐ろしさみたいなのはちょっと今ひとつな印象でした。