
朝早く出社し、夜遅くまで働き、帰宅後に疲れた状態のまま机に向かう——。
資格試験やスキルアップのために、働きながら勉強している人は「無理がある生活」を自分に強いることも少なくないでしょう。それゆえに、
「仕事で疲れ果てて、勉強内容が頭に入らない……」
「昨夜遅くまで勉強してたから、仕事に影響が出ている」
といったことも多いはず。
ここで大切なのは、気合や根性ではなく、勉強を諦めることでもありません。仕事と勉強を両立させるための「消耗しない戦略」をもつことです。
今回の記事では、働きながら勉強を続けられる人が押さえている「消耗しないための3つの方法」をご紹介します。
1. あえてルーティンを崩す
「刺激の少ない繰り返し」は精神的に消耗しやすいかもしれません。ルーティンがマンネリ化すると新鮮さが失われ、集中力や意欲が低下してしまうからです。
そこで提案したいのは、あえてルーティンを崩してみること。
心理生理学の専門家でストレスマネジメントの第一人者でもあるAlane K. Daugherty氏によれば、「目新しさ」は快感をもたらす神経伝達物質のドーパミンを活性化させます。その結果、気分、前向きな見通し、モチベーション、そして目標設定が向上するといいます。*1
それなら、慣れ親しんだルーティンを少し崩すことでも、ちょっとした新奇感をもたらすことができるはず。
次のような「負担の少ない変化」を試し、脳に新鮮な刺激を与えてみてはいかがでしょう。
- 一日同じ量・同じタスクにせず、1週間で量やタスクの種類をばらけさせる
- 勉強する場所を固定せず、「自宅」「カフェ」「図書館」などローテーションする
- タイマーやアプリを変えて、作業開始の合図に変化をつける
どれも大きな計画変更は必要ありません。ただ、"いつもと違う刺激" を取り入れて、少し気分を変えるだけ。その小さな変化は、あなたに大きな変化をもたらすはずです。

2. 完璧な理解をゴールにしない
「すぐ理解できない」ことにストレスを感じていませんか?
完璧な理解を求めるのは消耗する原因となります。完璧ではなく「間違い」に価値を置く考え方に変えてみましょう。
米・南カリフォルニア大学(USC)ロシエ教育大学院の研究では、「エラーモニタリング」(自分の間違いに気づき、それを修正していくプロセス)が、学びの質に深く関わっていることが示されています。
同研究では、8〜12歳の児童を対象に、正解を重視する従来型教育と、間違いを学習情報として扱う教育環境を比較。fMRI解析の結果、後者の学習者では、誤答後に学習と結びつく一貫した脳活動パターンが観察されました。*2
つまり、「間違える」ことを単に「失敗」とみなさず、修正していくポイントとして学習に活かすほうがより効率的に学びが定着するのです。
大切なのは間違いを恐れないこと。以下のような姿勢を保つことが役に立つでしょう。
- 参考書の初読は4割理解でOK →浅い理解のまま1冊の本を繰り返し読む
- 知識が不十分でも、先に問題集から解いてみる →10分など早めに区切りを設けて、考え込まずに解く
- 学習内容を3行程度の箇条書きにする →AIに「この理解で合ってる?」と確認する
「間違う」箇所は「修正する」部分——つまり、ズレを理解する部分です。完璧さを手放して、「不完全な勉強法が一番効率がいい」と視点を変えてみてください。心のバランスがとれ、学習成果がグンと上がるはずです。

3.「休憩時間」を計画に組み入れる
長い時間、通しで勉強に集中できるほど、私たちの脳はタフじゃありません。消耗しないためには、あらかじめ計画に「休憩時間」を組み入れ、脳をリセットすることが必要です。
心理学者・情報科学者のグロリア・マーク氏は、人が情報を処理するときには大前提として、認知リソース(言わば「利用可能な集中の量」)が必要だと説明します。その認知リソースが補充されないままだと、長い集中時間で覚醒度や行動の質が低下し、脳内の血流が滞り、集中力と成果が落ちてしまうというのです。*3
「夕方から頭が重くなる」「仕事終わりに参考書を開いても頭に入ってこない……」という多くの人が体験している脳の疲れや集中力の低下は、認知心理学的には "認知リソースが減った証拠" と言い換えられます。
では、どうすればよいのか?
大切なのは、認知リソースを使いきる前に効率よく補充することです。意識して休憩時間をつくり、疲れる前に「タスクを切る」計画を立てましょう。
その際には、「タイムボクシング」のメソッドが役立つかもしれません。
タイムボクシングとは「1日を一定の長さの時間枠に分割し、それぞれに特定のタスクを割り当てる時間管理術」のこと。エグゼクティブ・コーチのLuciana Paulise氏は、そのメリットのひとつとして時間内に完了しやすくなることを挙げています。*4
それで、認知リソースも枯渇しない時間管理ができるのであれば、言うことなしです。
しかし――
「どの時間に何を入れるか」を考えて計画を立てるのは、なかなか大変な作業。疲れておっくうに感じる人もいるかもしれません。
そこで筆者の場合は、ChatGPTに頼んでタイムボクシングを作成してもらいました。

以下は、上画像の内容をまとめたものです。
午前:インプットと準備
8:30〜9:15|英語の勉強(インプット)
→ 集中力と作業記憶を使う学習は、認知リソースが最も多い時間帯に。
9:15〜9:30|回復行動:ストレッチ・水分補給
→ 身体を動かすと注意資源が回復しやすい。
9:30〜9:50|読書(20分)
→ 脳を「学習モード」に保つ。
仕事時間:アウトプット・執筆
10:00〜10:50|執筆(下書き・一気書き)
10:50〜10:55|回復行動:目を閉じる・姿勢を変える
10:55〜11:45|執筆(構成に沿った肉付け)
11:45〜11:50|回復行動:立ち上がって数歩歩く
11:50〜12:40|執筆(推敲・表現調整)
12:40〜12:45|回復行動:深呼吸・遠くを見る
午後:リサーチと整理
12:45〜13:35|リサーチ(資料読み・情報収集)
→ 「集める作業」に切り替えて消耗を防ぐ。
13:35〜13:40|回復行動:首・肩を回す
13:40〜14:30|構成案作成・見出し整理
14:30〜14:35|回復行動:水分補給・目を閉じる
14:35〜15:00|翌日の準備・軽微な修正
夕方:クールダウンと再学習
15:00〜15:15|回復行動:散歩・換気(リセット)
15:15〜15:35|読書(20分)
15:35〜15:45|回復行動:お茶・ストレッチ
15:45〜16:15|韓国語の勉強(軽め)
16:15〜16:25|回復行動:目を閉じる・深呼吸
余力がある日のオプション
16:25〜16:40|韓国語(復習・アウトプット)
→新規理解は避け「思い出す」作業のみ
※疲れている日はここで終了してOK
AIにプロンプトを出す際に、「具体的な休憩法」についても言及しておくと、その時々に合った回復行動もセットで作成してくれます。
時間に応じて "やるべきこと" を具体的に可視化できるため、決断疲れも防げますよ。
よろしければ一度、試してみてください。
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仕事と勉強の両立は、頭も身体も酷使するものです。しかし、「消耗しない戦略」を立てれば、両立も難しいものではありません。
ぜひ、今回の記事をヒントに、目標も人生満足度も諦めることなく進んでくださいね。
よくある質問(FAQ)
Q1. 仕事で疲れていても勉強を続けるコツは?
A. 気合や根性に頼らず、「消耗しない戦略」をもつことが大切です。具体的には、①ルーティンに小さな変化を加えて脳を刺激する、②完璧な理解を求めず不完全なインプット・アウトプットを許容する、③あらかじめ休憩時間を計画に組み入れる、の3つが効果的です。
Q2. 勉強のルーティンがマンネリ化してモチベーションが下がっています。どうすればいいですか?
A. 「目新しさ」は脳内のドーパミンを活性化させ、モチベーションや目標設定を向上させます。勉強場所を「自宅」「カフェ」「図書館」とローテーションしたり、1週間で勉強量やタスクの種類をばらけさせたりするなど、負担の少ない変化を取り入れてみましょう。
Q3. 勉強でなかなか理解できないとストレスを感じます。効率的な学び方はありますか?
A. 始めから完璧な理解を求めるより、「間違いを修正するポイント」として学習に活かすほうが効率的です。参考書の初読は4割理解でOKとして繰り返し読む、知識が不十分でも先に問題集を解いてみるなど、不完全な勉強法を試してみてください。
Q4. タイムボクシングとは何ですか?仕事と勉強の両立に役立ちますか?
A. タイムボクシングとは、1日を一定の長さの時間枠に分割し、それぞれに特定のタスクを割り当てる時間管理術です。休憩時間も計画に組み入れることで認知リソースの枯渇を防ぎ、時間内に完了しやすくなるメリットがあります。仕事と勉強の両立に非常に有効な方法です。
*1 Psychology Today|The Science of Novelty
*2 USC Rossier School of Education|Brain study suggests how students learn from mistakes
*3 日経BOOKPLUS|集中力アップに必要な「認知リソース」を補充する活動とは?
*4 Forbes JAPAN|米国58%の労働者が取り入れる時間術 タイムブロッキングを今日から実践
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。