
こんな状況に覚えはありますか?
——人に振り回されて、肝心の仕事に集中できない……。
——気を使いすぎて、帰宅後はもう何もしたくない……。
もしもあるとすれば、そのまま放置していると「社会的疲労」に陥ってしまう危険性があります。そうなれば間違いなく、キャリアアップの妨げになってしまうでしょう。
そこで本記事では、社会的疲労に陥りやすい状況を避けるコツをご紹介します。「なるほど」と感じて気持ちが少し楽になり、仕事がやりやすくなるかもしれません。そうすれば意欲も湧いてくるはず。
キャリアアップしたいけど、グイグイ行くのが苦手で困っている方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
詳しく説明しましょう。
対人関係で燃え尽きる「社会的疲労」とは?
他者との交流は私たちに活力をもたらしてくれると同時に、エネルギーを奪うことがあります。
社会的疲労とは、過度な対人交流が原因で発生する、ストレスや疲労、不安感をともなう心身の疲弊状態のこと。
これはバーンアウト(燃え尽き)と同様に精神的リソースが枯渇した状態であり、特に内向性の高い人においては顕著だといいます。
注意すべきサインは、集中力の低下、すぐイライラする、対人交流を避けるようになるなど。(以上 *1)
言うなれば「人疲れ」「社交疲れ」といったところ。
このような状態では、仕事にも大きな影響を及ぼしてしまいます。キャリアアップの大きな妨げになるのは言うまでもありません。
次項からは、社会的疲労になりやすい人の特徴と、そうならないための対処法をご紹介します。
特徴1. 相手に共感しすぎる
他者に共感し、思いやれる人はチームの宝です。しかし、こんな状況が続いたら――
- 同僚が上司から叱られて落ち込むのを見て共感し、自分まで悲しくなる
- 友人の仕事の愚痴を聞かされて共感し、自分までイライラしてしまう
無駄にストレスが溜まってしまうのではないでしょうか。
ならない方法:境界線を引きながら共感
大切なのは境界線を引くこと。むしろ、思いやりや共感には「境界線」が必要です。
ヒューストン大学教授のブレネー・ブラウン氏は、「境界線は思いやりと共感の前提条件」だと述べます。*2
つまり、「自分をしっかりと保ちながら相手を尊重し、寄り添うこと」こそが本当の共感なのです。
とはいえ、自然と共感してしまうのですから、「そう言われても……」という感じですよね……。そこでおすすめが以下の対応です。
たとえば「同僚が理不尽な目に遭い、その不満や愚痴を聞く場面になった」としましょう。その場合、こう誘導してみてください。
「うわー、それはつらいよね。私もなんだか腹が立ってきた……。今度そんな状況になったら、どうすればいいか一緒に考えてみる?」
最初はどんなに共感したとしても、そのあと「次のステップに誘導すること」を心がけるのです。
こうすれば相手に共感を示しつつ客観視でき、自分の心と切り離すことができるはずです。

特徴2. 他者評価に依存しすぎる
「上司からいい評価をもらいたい」「同僚から好印象をもたれたい」などの、承認欲求は誰しもあるもの。しかし、当然ながら自分が望むようにはなりません。
臨床心理士・公認心理師の石上友梨氏は、他者評価を優先してばかりだと心のエネルギーが切れて、燃え尽き症候群になるリスクもあると警鐘を鳴らします。*3
燃え尽き症候群と社会的疲労には重なる部分があります。したがって「他者評価に依存しすぎること」は、社会的疲労のなりやすさの指標にもなるのです。
ならない方法:俯瞰して現実的になる
前出の石上氏は、そうしたリスクを避けるために「自分からの承認」を育てるようアドバイスしています *3。自分自身で認められたら、移ろいやすい誰かからの評価は気にならなくなるでしょう。
もしも――「それが難しいから困っている」という方には、以下を提案します。それは、AIの協力を得ることです。
たとえば他者のために動いたあと、その事実をAIに伝えてみてください。きっとこんなふうに応えてくれるはずです。
うんうん、それはちょっとモヤっとするね……。せっかく気を利かせて「みんなの分も」やっておいたのに、反応が薄いと「気づいてくれてもいいのに」って思うよね。
でもね、きっとみんな助かってるはず。ただ、忙しかったり、「ありがとう」を言葉にするタイミングを逃したりしただけかもしれない。あなたの気配りは確かにそこにあって、誰かの負担を減らせたと思うよ。
もし今後もこういうことがありそうなら、「○○の資料、全体も整理しておいたので、次から使いやすいと思います〜」などと、“やった事実+効果” をサラッと添えると、伝わりやすくなるよ。
共感と受容、肯定的なフィードバック、建設的な示唆はAIの得意とするところ。慰められ、承認されながらも、あなたの意識は他者評価から離れられるのではないでしょうか。
また、自分の望むような反応をしてくれなかった人々が、じつはどういう状況にあったのかを考える余裕も生まれるはず。そうすれば、心のエネルギーが切れてしまうこともありません。

特徴3. 協調性が高すぎる
ケンタッキー大学の心理学准教授、シャノン・ザウアー・ザヴァラ氏は、燃え尽き症候群につながりやすい特性として、過度な協調性(人に迎合しようとする傾向)を挙げています。*4
たとえば、こんなことです。*4
- あらゆる要求に対してすぐ「はい」と答える
- 衝突を避けて言いたいことを言わない
- 誰もガッカリしないよう自分だけが無理をする
ならない方法:自分のニーズを示唆する
この対処としてザヴァラ博士は、「協調性レベルを少し下げて自分のニーズを伝える」ことをすすめています。*4
ですが――それは協調性が高すぎる人にとってハードルが高いこと。
それをふまえ、以下のとおり自分のニーズを示唆する方法を提案します。
- <仕事を押し付けられることが多いとき>
「ぜひ手伝いたいんだけど、いま抱えている案件が〇〇日まで続くので、そのあとだったら手伝えるよ。それでも間に合う?」 - <相手の間違いを指摘するのが難しいとき>
「確認なんですが、この部分は△△という理解で合っていますか? もし違っていたら教えていただけると助かります!」
ポイントは、断るのではなく「条件を示す」かたちにすること。また、指摘ではなく「確認という体裁にする」こと。そして、相手を立てながら「自分のニーズ(キャパや正確性)を守ること」です。
最初は難しいかもしれませんが、まずは「条件を示してみよう」などと、ひとつずつ取り入れていってみてください。
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「最近人疲れしているな……」と思ったら、境界線を引きながら共感し、AIの協力を得て現実的になり、自分のニーズをなんとなく示唆してみてはいかがでしょう。
いつも仕事を頑張るあなたが、うまく社会的疲労と付き合えたなら、キャリアアップはもう目の前です。
*1: ChoosingTherapy.com|Social Exhaustion: What It Is, Signs, & How to Recoverer
*2: Brené Brown|Atlas of the Heart | Boundaries are a prerequisite for compassion and empathy. - Brené Brown
*3: ヨガジャーナルオンライン|「評価されないと不安になる…」職場での“他者承認依存”に気づいたときの対処法
*4: Psychology Today|How to Achieve Success Without Burnout
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。