
2025年5月に『カテゴリー戦略』を出版いたしました。
ありがたいことにAmazonの8部門で1位を獲得し、実務家が選ぶマーケティング本大賞までいただきました。
自分自身の想像を遥かに超える方々の手に『カテゴリー戦略』が渡り、まさにこの時代に求められている概念であると日々感じています。
『カテゴリー戦略』を書くときに常に頭にあった問いがあります。
「いいモノなのに、なぜ選ばれないのか?」
「いいモノなのに、なぜ価値が伝わらないのか?」
ビジネスに関わる方なら誰もが抱く深い悩みです。
いい商品を作り、品質を高め、機能を拡充し、サポート体制を整えても期待した結果が出ない。
こうした悩みは、経営も、マーケティングも、営業も、カスタマーサポートも、あらゆる部署の方々が直面する共通課題です。
私自身、いままでの仕事を振り返っても、結局この問いに向き合い続けていたとさえ思います。
【プロフィール】
田岡凌(たおか・りょう)
ネスレにて新卒初の事業本部(マーケティング)アサイン。WeWorkのブランドマーケティング責任者。Sales Marker 社の外部顧問としてグロース支援。京都大学卒業後、ネスレにてネスカフェ、ミロのブランド担当。外資系企業のブランドマーケティング責任者、マーケティングスタートアップ CMOを歴任。現在、suswork株式会社にて、スタートアップから大企業まで数十社のマーケティング戦略支援を行う。株式会社Sales Marker外部顧問。カテゴリー戦略の専門家。ギャラップ社認定クリフトンストレングスコーチ。PIVOT、NewsPicks、Markezine、ITメディアなどで多数出演。著書「急成長企業だけが実践するカテゴリー戦略 頭に浮かべば、モノは売れる」
いいモノなのに、なぜ選ばれないのか?
私は、いままで10年以上の事業戦略経験から、そして数十社の事業成長の支援をするなかで、この課題を解くヒントを探していました。
初めはさまざまな切り口でそのヒントを模索していましたが、次第に極めてシンプルに言語化できてきました。
いいモノが選ばれない理由とは何か? それは「お客様の頭のなかに浮かんでいないこと」であるということです。
どれほど良い商品でも、人々の頭のなかに存在しなければ選ばれません。逆に言うと、頭に浮かべばモノは売れる。
私たちは市場で戦っていると考えています。しかし、まず人々の頭のなかで存在する必要があります。
人は"比べて"ではなく、"頭に浮かんで"選ぶ
私は、仕事がミーティング続きで忙しくて昼ごはんが食べられないとき、スキマ時間でコンビニに向かい、ゼリー飲料の棚で「inゼリー」を手に取ります。
休日に家族でゆっくりモーニングを食べたいとき、コメダ珈琲店が頭に浮かび、自然と足が伸びています。
人は「頭のなかに浮かんだもの」のなかから選択をしています。決してあらゆる商品を頭に並べてつぶさに比較検討して購入している訳ではありません。
もちろん不動産、車、BtoB商材など、個人に大きな影響を与える商材は比較検討して選びますが、それでも頭のなかに浮かんだいくつかの選択肢のなかで比較検討するのが一般的です。
そう考えると、頭に浮かぶということが、極めて重要であることが分かります。
そして、多くの場合初めに頭に浮かんだものを選んでしまう傾向があります。これが「第一想起(Top of Mind)」と呼ばれる概念です。
スキマバイトなら「タイミー」。エナジードリンクなら「レッドブル」。
人の頭のなかには、すでに「カテゴリー=名前」というセットがいくつも作られています。

"差別化"ではなく、"カテゴリー"を変える
多くの企業は差別化に取り組みます。競合より優れた部分を作ろう、品質をより上げていこう。日々そう取り組んでいる企業がほとんどだと思います。
しかし差別化とは、既存の枠組みのなかで「少し良く見せる」工夫にすぎません。
残念ながら、その「少しの違い」は記憶に残りにくいのです。そして、商品・サービスが増える時代においてはなおさら記憶に残ることは難しくなります。
カテゴリーづくりに成功する企業は、選ばれ方そのものを変えます。
たとえば「タイミー」は、競合と同じ「アルバイト情報サイト」として戦ったのではありません。「スキマバイト」という新しいカテゴリーをつくり、人々の行動自体を変えました。
カテゴリーとは、「人が思い出すときの引き出し」をつくること。
「忙しい朝の栄養補給といえば inゼリー」
「大学授業の合間でも稼げる、スキマバイトといえば タイミー」
この「○○といえば○○」というカテゴリーNo.1を獲得した企業は、人々に選ばれ続けます。
あなたの商品は、いつどんなときに、お客様の頭に思い浮かびますか?
あなたの商品は、お客様に何として想起されていますか?
商品を改善する前に、新しい機能をつくる前に、この問いに向き合ってみましょう。

いまこそ、カテゴリーを始めよう
「いいモノを作っているのに選ばれない」その背景にはカテゴリーの問題があります。
どんな場面でどのカテゴリーで、人々の頭のなかに思い浮かぶかを設計すること。
AIがいくら効率化を進めても、人の記憶は効率化できません。商品・サービスが増えても、人の記憶のキャパシティには限界があります。
だからこそ、頭に浮かんだモノしか選ばれない、この傾向はより強くなっていくはずです。
いま本当に戦うべき場所は、"市場"ではなく"人の頭のなか"です。
あなたの商品のカテゴリーが即答できないのであれば、PCを閉じて、現場へ出向きましょう。
そして、お客様にこう問いかけてみてください。
- 「あなたにとってこの商品を何ですか?」
- 「いつどんなシーンでこの商品を思い浮かべましたか?」
- 「なぜ、最終的にこれを選んだのですか?」
ヒントは常にお客様の行動、その一次情報のなかにしかありません。
その一次情報を元に仮説を立て磨き込んでいく。カテゴリー戦略の第一歩を、明日、踏み出してください。

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