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なぜ私たちは、リッツ・カールトンを「最高だった」と記憶するのか?【新人さんのためのマーケティング講座Season4 vol.2】

📘 新人さんのためのマーケティング講座 Season4

Season3までは、事例を中心にマーケティングの原則を学んできました。
Season4では、Season3だけではご紹介しきれなかった事例をさらに発展的に取り上げていきます。

まだ過去のSeasonを読んでいない方は、そちらからどうぞ。
Season 1【全14回まとめ】|▶ Season 2【全15回まとめ】|▶ Season 3【準備中】

ザ・リッツ・カールトンに泊まった人は、数年経っても「あのホテルは最高だった」と語ります。

ところで、具体的にどんな場面を思い出しているのでしょうか。

おそらく、「従業員が自分の名前を覚えていてくれた」「困っていたら、すぐに助けてくれた」といった感動した瞬間と、チェックアウト時に「〇〇様、またのお帰りをお待ちしております」と心のこもった見送りをされた場面ではないでしょうか。

24時間の滞在すべてを均等に覚えているわけではない。記憶に残っているのは、特定の瞬間だけ。これには理由があります。

ピーク・エンドの法則——記憶に残る瞬間の正体

心理学では、この現象に名前がついています。

「ピーク・エンドの法則(Peak-End Rule)」——ある体験の評価は、そのなかの最も感情が動いた「ピーク(絶頂)」と、その体験が終わる「エンド(終点)」の印象で決まるという法則です。*1

ノーベル経済学賞を受賞した心理学者ダニエル・カーネマンが提唱しました。

 

体験の印象を決めるのは、
「最も感動した瞬間」と「終わり方」である。

だからこそ、リッツ・カールトンの滞在を振り返ったとき、思い出すのは「感動した瞬間」と「見送りの場面」なのです。24時間の体験すべてではなく、この2つが記憶に刻まれ、「最高だった」という評価を形づくっている。

カーネマンの実験——「終わり方」が印象を変える

この法則を裏付ける、有名な実験があります。

被験者に、14度の冷水に手を浸してもらいます。体験Aは60秒間。体験Bは同じ60秒間の後、さらに30秒間、水温を15度に上げて続けます。つまり体験Bの方が、不快な時間の「総量」は長い。

しかし、「もう一度やるならどちらがいいか」と聞くと、80%の人が体験Bを選んだのです。*1

体験 内容 選択率
A 14度の冷水に60秒 20%
B 14度60秒+15度30秒(計90秒) 80%

不快な時間が長いはずのBが選ばれた理由。それは、「終わり方」が少し良かったからです。最後の30秒間、水温がわずかに上がったことで、体験全体が「まだ良かった」という印象になった。

これは「持続時間軽視(Duration Neglect)」と呼ばれる現象です。体験の長さよりも、「ピーク」と「エンド」の質が、私たちの印象を左右するのです。

なぜリッツでは「感動の瞬間」が生まれやすいのか

では、なぜリッツ・カールトンでは、顧客の記憶に残る「感動の瞬間」が生まれやすいのでしょうか。

その仕組みのひとつが、従業員一人ひとりに与えられた「1日2,000ドル(約20万円)の決裁権」です。上司の許可を得ることなく、自分の判断で、顧客を感動させるためにこの金額を使っていいのです。*2

ある宿泊客が、大切な書類をホテルに忘れたまま新幹線で移動してしまった。気づいた従業員は、自分の判断で新幹線に飛び乗り、書類を届けた。ある子連れの家族が、ぐずり始めた子供に困っていた。従業員は自分の判断でショップに走り、ぬいぐるみをプレゼントした。

上司に相談して、稟議を回して……などとやっていたら、こうした瞬間は生まれません。その場で、迷いなく動ける仕組みがあるからこそ、顧客の心に刻まれる「ピーク」が生まれるのです。

そしてチェックアウト時には、「〇〇様、またのお帰りをお待ちしております」と名前を呼んで見送る。この「エンド」の丁寧さが、滞在全体の印象を美しく締めくくっています。

新人さんへ——CXの設計もマーケティングの仕事

マーケティングというと「集客」をイメージしがちですが、本来の意味は「売れる仕組みをつくること」です。顧客理解から商品開発、認知拡大、販売、そして顧客満足やリピート促進まで——この全体が「売れる仕組み」であり、マーケティングなのです。

つまり、顧客体験(CX)を最大化し、「また来たい」と思ってもらえるようにデザインすることも、マーケティングの重要な仕事です。ピーク・エンドの法則は、まさにこのCX設計に活かせる知見と言えます。

では、今日から使える視点をお伝えしましょう。

あなたは、全工程を100点にしようとして、リソースを分散させていませんか。

顧客体験(CX)を設計するなら、まずは「ここだけは感動させる」というピークと、「終わり方」を最優先で磨くこと。すべてを均等に良くしようとするより、メリハリをつけた方が、記憶に残る体験になります。

場面 磨くべき「エンド」
商談 最後の5分の締めくくり方
資料 最後の一節、まとめのメッセージ
メール 締めの言葉、署名の一言

商談の最後の5分。資料の最後の一節。メールの締めの言葉。その「エンド」が、あなたの信頼残高を決定づけるのです。

 

全工程を100点にする必要はない。
「ピーク」と「エンド」を120点にせよ。

顧客の記憶に残る体験を設計するなら、「ピーク」と「エンド」を意識すること。リッツ・カールトンの事例は、その好例と言えるでしょう。

 

【本記事のまとめ】

1. 記憶に残るのは特定の瞬間だけ
24時間の滞在でも、思い出すのは「感動した瞬間」と「最後の場面」。

2. ピーク・エンドの法則
体験の評価は「最も感動した瞬間」と「終わり方」で決まる。

3. 体験の長さより、質が重要
持続時間よりも、ピークとエンドの質が印象を左右する。

4. 感動の瞬間が生まれる仕組みを作る
リッツの2,000ドル裁量権のように、現場が動ける環境が「ピーク」を生む。

5. 全工程を100点にしなくていい
リソースを分散させず、ピークとエンドに集中投資する。

6. エンドが信頼残高を決める
商談の最後の5分、メールの締めの言葉が評価を左右する。

よくある質問(FAQ)

ピークとエンド、どちらがより重要ですか?

どちらも重要ですが、実務的には「エンド」の方がコントロールしやすいでしょう。ピークは偶発的な要素も大きいですが、終わり方は必ず訪れるので、意図的に設計できます。まずはエンドを磨くことをおすすめします。

途中でクレームがあっても、終わりが良ければ挽回できますか?

ある程度は挽回できます。ただし、クレームの内容が「ピーク」として記憶されるほど強烈だった場合、エンドだけでは上書きしきれないこともあります。クレーム対応自体を「感動的なピーク」に変えられれば理想的です。

BtoBの商談でも使えますか?

使えます。商談の最後に「本日のまとめ」を丁寧に行う、帰り際に一言添える、お礼メールをすぐに送る——これらはすべてエンドを磨く行為です。相手の記憶に残る商談になります。

(参考)

*1 ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー(下)』(早川書房、2012年)。ピーク・エンドの法則と冷水実験について詳述。
*2 高野登『リッツ・カールトンが大切にするサービスを超える瞬間』(かんき出版、2005年)。従業員への2,000ドル決裁権について解説。

▼ 新人さんのためのマーケティング講座 Season4

Season3だけではご紹介しきれなかった事例をさらに発展的に取り上げていきます。

Season1(全14回)はこちら|マーケティングの基礎概念からWeb広告の実務知識まで

Season 2(全15回)はこちら|現場で成果を出すための実践スキル

▶ Season 3【準備中】

【プロフィール】
岡 健作(おか・けんさく)

スタディーハッカー 代表取締役社長
1977年生まれ、福岡出身。同志社大学卒業。2010年に創業。「Study Smart(合理的に学ぶ)」をコンセプトに、科学的知見に基づく英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」を設立し、人気ブランドへと成長させる。 事業拡大の要として、自らオウンドメディアとSNSの編集長を兼任。オウンドメディアは最大500万PV、Instagramでは月間700万PV、フォロワー27万人規模のメディアにするなど、広告費に依存しない集客モデルを確立する。現在はその知見を活かし、「企業の認知獲得の専門家」として、論理とデータに基づいた再現性の高いメディア戦略・ブランディング論を発信している。
X→@oka_kgs / Instagram→@oka_ken2010 /




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