
会議室に集まり、ホワイトボードを前にしてチームでブレストを実施しても、なかなか「いいアイデア」が並ばないとき――
みなさんは自分たちの発想力を疑うかもしれません。
しかし、それは発想力だけが問題ではない可能性があります。ブレストの方法が、"いつも同じ" であることが原因かもしれないのです。
そこで注目したいのが、思考を逆転させる「リバースブレインストーミング」という手法です。「失敗するにはどうすればいい?」と逆方向からアプローチを行ない、最終的には具体的かつ実践的な "改善のためのアイデア" を生み出していきます。
本記事では、逆転発想の手法——リバースブレインストーミングのやり方を筆者の実践事例とともに詳しく解説いたします。
- 人は「リスクを探す」ほうが得意?
- 逆から考える「リバースブレインストーミング」とは?
- 実際に「リバースブレインストーミング」を試してみた
- STEP1. テーマ(問題・課題)を決める
- STEP2.「どうすれば失敗するか?」を問う
- STEP3. 失敗のためのアイデアをブレスト
- STEP4. 失敗アイデアから「成功アイデア」に反転
- STEP5. アイデアを評価する
- リバースブレインストーミングを試してみた考察
- よくある質問(FAQ)
人は「リスクを探す」ほうが得意?
人はよい出来事よりも、「リスク」を探すほうが得意だといいます。この傾向は進化の過程で培われました。過酷な状況で生き残るため、より敏感に「失敗や危機」に反応する必要があったからです。
たとえば、導入を考えていたサービスのレビューに、以下の評価があったとしましょう。
- 中~高評価が9割
- 低評価が1割
そうすると人々は、高評価のレビューよりも低評価のレビューをしっかりと記憶に残し、決断を躊躇してしまうことがあるのです。
このように、「人がネガティブな情報や出来事を重視してしまう」心理傾向を「ネガティビティ・バイアス」と呼びます。*1
はるか昔、私たちの祖先が生活する環境では、食料の確保、外敵や事故への対応は常に生死をともなうものでした。そのため、「危険や損失」をいち早く察知する能力が、子孫である私たちにも引き継がれているのです。
イェール大学の心理学教授アン・ウーキョン氏は、ネガティビティ・バイアスがいまもなお存在するのは、それが私たちにとって有益だからと説明。そして、「このバイアスのおかげで、正す必要のあることに注意が向く」と語っています。*1
\ あわせて読みたい /
逆から考える「リバースブレインストーミング」とは?
ネガティビティ・バイアスの存在は、私たちが「どうすればうまくいくか?」よりも、「どうすれば失敗するか?」により集中できることを示しています。
実際に、この脳の特性を活かしたブレインストーミングがあります。
解決策よりも先に「どうすればこの問題を悪化させることができるか?」を考え、アイデアを発想していく方法です。この型破りなアプローチを「リバースブレインストーミング」と呼びます。失敗例を挙げたあとにアイデアを反転させ、解決策へと導くのです。*2
米国のオンライン大学Walden Universityのガイドによると、このリバースブレインストーミングは、通常のブレストでは得られない「潜在的な解決策の掘り起こし」に役立つといいます。最悪のシナリオをより深く理解できるからです。*2
人間は「リスクに対して敏感」な生き物。
このネガティブな視点を健全に活用すれば、多くの具体的なアイデアを考案することができるはずです。

\ あわせて読みたい /
実際に「リバースブレインストーミング」を試してみた
筆者も試しにこの手法を実践してみました。言わば、ひとり「リバースブレインストーミング」です。シミュレーションとして設定したテーマはこちら。
「どうすれば画期的な新規サービスのアイデアが生まれるか?」
手順に関しては、米国発のオンラインホワイトボードツールを提供するMiro*3 のガイドを参考にしています。
STEP1. テーマ(問題・課題)を決める
リバースブレインストーミングに入る準備として「問題・課題」を明確にします。今回は「画期的な新規サービスを生み出したい」が目的なので――

「既存顧客向けに新規サービスを提供したい。でも過去のサービスと似た案しか思い浮かばない」――といった具合に「ターゲット層」「ネックになっている部分」を入れ、よりテーマがクリアになるようにしてみました。
STEP2.「どうすれば失敗するか?」を問う
テーマが定まったら、今度は問題を逆の立場で考えてみます。つまり、解決策を問うのではなく、「どうすれば問題が悪化するか?」「どうすれば失敗するか?」を問うのです。

最悪なのは「同じ考え方に固定」され、「新しい案が生まれない状態」です。このネガティブな状態を目指すように問いました。
STEP3. 失敗のためのアイデアをブレスト
次に、先ほど出した問いを参考にブレストを行ないます。
Miroのガイドでは「10~15分」ほどの時間でアイデアを出すのが好ましいとのこと。手堅いアイデアだけではなく、「奇抜・突飛なアイデアもどんどん出すのが効果的」だとされています。*3

筆者はボードを用意していたため、付箋にそれぞれ「失敗のためのアイデア」を洗い出し、貼り付けてみました。
- 「同じテーマを長時間考える」
- 「過去の成功パターンだけ分析する」
- 「試作・検証を行わない」
などなど……。

STEP4. 失敗アイデアから「成功アイデア」に反転
次は、ブレストで出した失敗のためのアイデアを、成功するためのアイデア(改善策)に反転させます。
たとえば、
「アイデアを考える場所・条件を固定する」というアイデアに対しては——

「いつもの会議室ではなく外の景色が見えるテラスなどで、テーマを決めず(固定せず)雑談感覚で話してもらう」
という、真逆の案をつくりました。

Miroのガイドにはこうあります。
STEP5. アイデアを評価する
次は、前段の改善策を評価します。評価基準は以下のとおり。*3
- 影響:これにより、問題はどれくらい解決するのか?
- 実現可能性:いまある人材・予算・時間でかたちにできるか?
- スケジュール(期間):短期的な改善か、長期的な取り組みか?
前出の「案を出す場所や環境を変える」案を例にとり、上記の評価基準を参考に検討してみました。

評価の際には、以下のとおり "評価の高低" もつけます。
- ① 影響(中くらい)
・場所と雰囲気を変えることにより、考えが緩みやすい。
・圧力が下がり、発言量が増える期待が - ② 実現可能性(やや高め)
・新たな予算は不要
・会議室を予約しなくていい
・すぐ試せる - ③ スケジュール
・1回実施するだけでも雰囲気の変化は体感できる。
→短期でOK
これなら、すぐ実行できそうです……!
リバースブレインストーミングを試してみた考察
最後に、リバースブレインストーミングを実践した考察を共有したいと思います。
<活用しやすさ・効果>
- 最悪のシナリオのほうが洗い出しやすい
→始めから改善策を考えるよりも、より多くのアイデアを出せる。 - アイデアが具体的になりやすい
→「よい案」は抽象的になりやすいが、「失敗例」は具体的なイメージが浮かぶ。だから、それを反転させた改善案は具体的・現実的になりやすい。
<注意点>
ネガティブな視点にフォーカスするため、チームで行なう場合は不満の言い合いになる可能性があります。
面倒でも、これは「改善につながる手立て」であり「意見を共有している」のだという共通認識を、常に確認し合うことが大切かもしれません。
***
アイデアに困ったとき、「ネガティブな情報に注意が向く」思考のクセを活用してみましょう。最悪のシナリオには「よい案のヒント」が潜んでいるはずです。
よくある質問(FAQ)
Qリバースブレインストーミングとは何ですか?
Aリバースブレインストーミングとは、「どうすればうまくいくか?」ではなく「どうすれば失敗するか?」を先に考え、出てきたアイデアを反転させて解決策を導く発想法です。人間が持つ「ネガティビティ・バイアス」(リスクに敏感な傾向)を活かすことで、より多くの具体的なアイデアを生み出せます。
Q通常のブレストとリバースブレストの違いは?
A通常のブレストは「解決策」を直接考えますが、リバースブレストは「失敗する方法」を先に洗い出し、それを180度反転させて改善策を導きます。失敗例のほうが具体的にイメージしやすいため、結果として現実的で実践しやすいアイデアが生まれやすくなります。
Qリバースブレストはひとりでもできますか?
Aはい、ひとりでも実践できます。付箋やホワイトボードなどを用意し、10〜15分程度で「失敗するためのアイデア」を書き出してみましょう。奇抜・突飛な案も歓迎です。その後、それぞれを反転させて改善策に変換し、影響・実現可能性・スケジュールの観点から評価してください。
Qチームでリバースブレストを行なう際の注意点は?
Aネガティブな視点にフォーカスするため、単なる不満の言い合いに発展しないよう注意が必要です。これは「改善につながる手立て」であり「意見を共有している」という共通認識を、メンバー全員で確認し合いながら進めることが大切です。
*1: ダイヤモンド・オンライン|「頭のいい人と普通の人の考え方」、決定的な1つの違いとは?
*2: Walden University|5 Ways Creative Teams Brainstorm
*3: Miro|Reverse Brainstorming
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。