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なぜ酒類の素人だったコカ・コーラが、サントリーやキリンの牙城を崩せたのか【新人さんのためのマーケティング講座 Season5 vol.11】

📘 新人さんのためのマーケティング講座 Season5

Season4までは、国内外の企業事例を通じてマーケティングの原則を学んできました。
Season5でも引き続き、私たちの身近にあるサービスや商品が「なぜこう設計されているのか」を事例で深掘りしていきます。

まだ過去のSeasonを読んでいない方は、そちらからどうぞ。
Season 1【全14回まとめ】|▶ Season 2【全15回まとめ】|▶ Season 3【全20回まとめ】|▶ Season 4【準備中】

2018年5月、九州のコンビニやスーパーに、見慣れない缶チューハイが並び始めました。白地に紺色の前掛け柄。まるで居酒屋の暖簾を思わせるレトロなデザイン。「檸檬堂」——コカ・コーラグループが世界で初めて手がけた自社ブランドのアルコール飲料です。*1

サントリーの「-196℃」、キリンの「氷結」、アサヒの「もぎたて」。年間数千万ケースを売る酒類の絶対王者たちが君臨するレモンサワー市場に、飲料の巨人がなぜいまさら参入したのか——そう思った人も多かったはずです。

ところが結果は、予想の真逆でした。2019年10月の全国展開からわずか数か月で「定番レモン」が缶チューハイ部門の売上首位を獲得。翌2020年1月には品薄となり出荷を一時停止するほどの爆発的ヒットを記録しました。*2

最後発が、なぜ最強になれたのか。その答えを解説します。

「まだ誰も缶にしていない」ものを探した

当時の缶チューハイ市場の競争軸は「スッキリ・爽快・低価格」でした。各社がレモン果汁を加えた炭酸飲料を100円前後で売り、メタリックで冷涼感を演出するパッケージで棚を埋め尽くしていました。

檸檬堂の開発チームが最初にやったのは、居酒屋の徹底的な飲み歩きです。全国のレモンサワー専門店を巡るうちに、缶製品にはない「ある技術」に気づきます。

それが「前割り製法」です。専門店では、焼酎と水をあらかじめ数日間なじませて提供する「前割り焼酎」という文化がありました。それをヒントに、レモンを皮ごと丸ごとすりおろし、お酒に漬け込んでからはじめて炭酸を加える「前割りレモン製法」を開発。果汁だけでは出せない、レモンの皮の香りと複雑な旨味が加わります。*3

価格も他社の缶チューハイ(100円前後)より高い税別150円に設定しました。*4 「高くても買いたくなる理由」を製法という物語で担保したのです。

  既存の缶チューハイ 檸檬堂
競争軸 スッキリ・爽快・低価格 本格感・専門店の味
製法の訴求 果汁+炭酸の混合 前割りレモン(皮ごとすりおろしてお酒に漬け込む)
パッケージ メタリック・冷涼感 白地に紺・前掛け柄・レトロな温かみ
価格帯 100円前後 税別150円(高価格帯)

「九州限定」が生んだ飢餓感——最後発の3つの武器

檸檬堂の成功には、製法だけでなく、マーケティングの設計の妙があります。

①最後発の利益(ホワイトスペース戦略)

先行者はどうしても「最初に思いついたこと」を市場に定着させようとします。その結果、「缶チューハイ=スッキリ爽快」という常識が生まれ、専門店の味を缶で再現するという発想は後回しになっていました。最後発のコカ・コーラは先行者の失敗と飽和を観察したうえで、まだ誰も満たしていないニーズ——「居酒屋のレモンサワーを家で飲みたい」——を正確に突くことができたのです。

②プロダクト・ナラティブ(物語の付与)

「前割りレモン製法」「五味のバランス」「レモンを皮ごと使用」。これらはすべて製品の「物語」です。単に「美味しい」と言うのではなく、なぜ美味しいのかを語ることで、消費者は価値を納得して購入できます。この物語こそが、100円前後の競合と150円の檸檬堂の間に、価格競争とは別の戦場を生み出しました。

③テストマーケティングの設計(飢餓感の醸成)

九州でのテスト販売は単なる「試し売り」ではありませんでした。担当者によれば、九州は焼酎文化が根強く、お酒の舌が肥えた地域です。*5 そこで認められれば、品質への自信につながる。そして「九州でしか買えない」という希少性が、全国のお酒好きの間で口コミを生みました。出張で買って帰ることを「密輸」と表現するファンまで現れたほどです。*6

「偏愛」が最後発を最強に変える

2025年3月、檸檬堂はブランド史上初のフルリニューアルを実施しました。約100回以上の試作を重ね、五味のバランスを再設計した「二代目檸檬堂」として生まれ変わり、俳優の市原隼人をCMに起用。*7 7年経ってもブランドをアップデートし続ける姿勢が、息の長いブランドをつくります。

新人マーケターへの問いかけです。「もうライバルがいっぱいだから」と諦めていないでしょうか。

 

最後発だからこそ、ライバルが「当たり前」だと思って
見過ごしている不満が見えるはず。
市場を広く浅く見るのではなく、
たったひとつの要素を誰よりも深く掘り下げること。
その「偏愛」が、最後発を最強に変える。

缶チューハイという成熟市場で、コカ・コーラが突いたのは「レモン」というたったひとつの素材でした。その素材を居酒屋の製法まで遡って深掘りし、「缶の中で完結していた市場」に「専門店のレモンサワー」という新しい軸を持ち込んだのです。

あなたの商品カテゴリーの中で、ライバルが「当たり前」と思っている何かを、一段深く掘り下げてみてください。そこに、最後発にしか見えないホワイトスペースが眠っているはずです。

 

【本記事のまとめ】

1. 最後発の利益——ホワイトスペースを正確に突いた
「スッキリ爽快・低価格」で競う既存市場の外に、「居酒屋のレモンサワーを缶で飲みたい」という満たされていないニーズがあった。先行者の常識を観察してきた最後発だからこそ、その空白が見えた。

2. プロダクト・ナラティブ——「前割りレモン製法」が価格競争から脱出させた
「なぜ美味しいのか」を語る物語が、100円前後の競合との間に別の戦場を生み出した。物語を持つ製品は値段ではなく価値で選ばれる。

3. テストマーケティングと飢餓感——九州限定が全国の口コミを生んだ
焼酎文化が根強い九州で認められた事実が品質の証明になり、「まだ全国では買えない」希少性が購買意欲を高めた。飢餓感のあるローンチが、全国展開の爆発力を生む。

よくある質問(FAQ)

「ホワイトスペース」を見つけるには、何から始めればよいですか?

最も効果的なのは「顧客の不満を拾う」ことです。檸檬堂の開発チームがやったのはまさにこれで、居酒屋を飲み歩いて「缶にはないが専門店にはある味」を探しました。Amazonレビューや食べログのコメントなど、既存品への不満が書かれている場所は宝の山です。「星3つ以下のレビューで繰り返し出てくる不満」こそが、ホワイトスペースのヒントになります。

テストマーケティングで地域を絞る際、どんな基準で選べばいいですか?

「合格するのが最も難しい市場」を選ぶのが基本です。檸檬堂が九州を選んだのは、焼酎文化が強く、お酒の目が肥えた消費者が多いからです。最も厳しい顧客に受け入れられれば、他のエリアでは確実に通用するという自信になります。また「全国と切り離された閉じた市場」である点も重要で、テスト結果が全国に漏れすぎず、データとして純粋に評価できます。

「物語(ナラティブ)」のある製品と、ただの「こだわり訴求」の違いは何ですか?

「こだわり訴求」は「良い素材を使っています」で止まります。「物語」は「なぜそのこだわりが生まれたか」まで語ります。檸檬堂の場合、「前割り焼酎という九州の文化に着想を得て、その製法をレモンで再現した」という経緯が物語です。消費者は製品スペックではなく、その背景にある「なぜ」に共感してお金を払います。物語があるかどうかは、「それを聞いた人が誰かに話したくなるか」で判断できます。

(参考)

*1|日本経済新聞「コカ・コーラ、『檸檬堂』出荷休止」(2020年1月17日)。コカ・コーラグループが自社ブランドでアルコール飲料を販売するのは世界初。
*2|同上。2019年11〜12月の日経POSでの缶チューハイ部門で「定番レモン」が首位を獲得。2020年1月に出荷を一時停止。
*3|J-CASTニュース「コカ・コーラは、檸檬堂で『やらない』ことを決めていた」(2021年1月)。パトリック・サブストロームシニアマネージャーへのインタビュー。前割りレモン製法の経緯を解説。
*4|Wikipedia「檸檬堂」。希望小売価格は税別150円(350ml)。他社の缶チューハイは100円前後。
*5|同J-CASTニュースインタビュー。「九州は焼酎文化が強く、お酒の舌が肥えているエリアでテストしたかった」。
*6|同インタビュー。「出張で買ってきて『密輸』と表現する消費者まで現れた」。
*7|コカ・コーラ プレスリリース(2025年2月27日)「二代目檸檬堂」として全国発売。2025年3月10日発売、CMに市原隼人を起用。約100回以上の試作を重ねて完成。

▼ 新人さんのためのマーケティング講座 Season5

私たちの身近にあるサービスや商品が「なぜこう設計されているのか」を、さらに事例で深掘りしていきます。

Season1(全14回)はこちら|マーケティングの基礎概念からWeb広告の実務知識まで

Season2(全15回)はこちら|PL翻訳術、弱者の戦略、広告評価、インタビュー技術まで
Season3(全20回)はこちら|現場で使える顧客心理・ブランド戦略・価格設計の本質
▶ Season 4【準備中】

【プロフィール】
岡 健作(おか・けんさく)

スタディーハッカー 代表取締役社長
1977年生まれ、福岡出身。同志社大学卒業。2010年に創業。「Study Smart(合理的に学ぶ)」をコンセプトに、科学的知見に基づく英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」を設立し、人気ブランドへと成長させる。 事業拡大の要として、自らオウンドメディアとSNSの編集長を兼任。オウンドメディアは最大500万PV、Instagramでは月間700万PV、フォロワー27万人規模のメディアにするなど、広告費に依存しない集客モデルを確立する。現在はその知見を活かし、「企業の認知獲得の専門家」として、論理とデータに基づいた再現性の高いメディア戦略・ブランディング論を発信している。
X→@oka_kgs / Instagram→@oka_ken2010 /




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