
誰にでも、他者の言葉にイラッとした経験はあるでしょう。しかし、その「イラッ」を上手に活用する意識をもつ人は少ないかもしれません。
株式会社ネットマン代表取締役社長で行動科学専門家・発明家の永谷研一氏は、自身のnoteで「イラッとしたときこそ成長のチャンス」だと説いています。価値観の違う相手に耳を傾けることで視野が広がり、新たな発想が生まれるからです。*1
どんなにそのとき頭に来ても、「自分の成長に役立つ」と思えば、怒りの感情も軽減されるのではないでしょうか。
本記事では、腹が立つ言葉を「ありがたい言葉」として振り返り、成長に役立てるためのノート術をご紹介します。
「アンガーログ」の効果
怒りの感情そのものを消すことは不可能ですが、「アンガーマネジメント」というスキルで、怒りの行動をコントロールすることは可能です。
そのスキルのなかには、イラッとしたことを記録する「アンガーログ」というものがあります。
日本アンガーマネジメント協会の公式サイトでは、怒りを直感的に書き出す習慣(アンガーログ)があると、自分の怒りの傾向やパターンが見えてくると説明されています。*2
そして今回の試みは、その「アンガーログ」を学びに変え、成長のチャンスにしてしまおうというものです。
「イラッと学びノート」と名づけましょう。

「イラッと学びノート」の書き方
このノート術は、永谷氏が「イラッとしたときこそ成長のチャンス」*1 と述べたことに起因します。それに「アンガーログ」を組み合わせるだけなので、やり方はシンプルです。
- 要素
A=「イラッときた内容」
B=「何を学べたか? どう役立ったか?」 - レイアウト
Aを片ページの左側に書く
Bを片ページの右側に書く - ルール1
イラッときたあと冷静になってから書く
→「できるかぎり怒りを感じたその場で書く」ことが推奨されているが「無理は禁物」とのことなので後者を優先*2 - ルール2
推奨されているとおり分析せず直感的に書く*2
そうして、いくつか書き進めたものがこちらです。

まだごく一部ですが、実際に書いてみると、ほとんどの言葉から何かしら学びや気づきがあると実感しました。

こうして書き出すことで意味・意義が与えられ、建設的な見方ができるようになったのかもしれません。
また、書き出して客観性が生まれたせいか、腹立たしさを忘れ、自然と自分の弱点や強みと向き合うこともできました。
「イラッと」はあとで「仕事の武器」になる
「イラッと学びノート」は、あとから見直すこともおすすめします。なぜなら、時間が経ってから実感する学びも多いからです。
筆者自身の経験や、他者から聞いた体験談を紹介しましょう。
- 愛ある先輩の言葉:かつて筆者が独立を考えていたころ、先輩から作品集について「もう少しきれいなファイルに入れたら?」と言われ、思わず反発した。しかしこのひとことは、のちに「中身だけでなく、見せ方も仕事の一部」という姿勢を育ててくれた。
- 嫌いな人の言葉:筆者がだいぶ前に仕事で出会ったAさんの話。苦しい時期に嫌いな人物から投げかけられた「悩むな、考えろ」という言葉は、正論すぎてAさんを激怒させたが、いまでは思考を切り替えるトリガーになっているという。
- 面倒くさい人の言葉:回りくどい説明で苛立たされた相手の指摘が、結果的には行動改善につながり、大いに助けられた。そのときはイライラしたが、いまは「よくぞすべて説明してくれた」と感謝している。
もしも、「何を学べたか? どう役立ったか?」をすぐに書けなければ、あとで書き足しても構いません。その体験は、未来の「イラっと」体験を冷静に受け止める力となるでしょう。
故事・ことわざ・名言から学ぶ
「イラッとしたときこそ成長できる」という考え方は、実は古くから伝わる知恵でもあります。故事・ことわざにも、その教えが示されています。
以下は孔子の言葉です。「よく効く薬は苦いが、よく病気を治す。真心から諌めた言葉は、快く聞き入れ難いものだが、有益である」という意味です。*3
「良薬苦於口、而利於病、忠言逆於耳、而利於行」
上記の「良薬苦於口」とよく一緒に使用された(以下)孔子の言葉もあります。*4
「忠言は耳に逆らえども行いに利あり(忠告は聞き入れにくいものだが、行動を正してくれるという利点がある)」
19世紀に活躍したアメリカの詩人、ウォルト・ホイットマン氏の言葉も紹介しましょう。*5
「君が教訓を学んだ相手は君を賞賛し、親切を施し、味方になってくれた人々だけだったのか。君を排斥し、論争した人々からも大切な教訓を学ばなかったか?」
住友生命保険代表取締役社長、同社代表取締役会長、生命保険協会会長を歴任した佐藤義雄氏の座右の銘「逆耳払心」は、中国古典にある言葉です。*6
耳に逆らう、すなわち耳が痛い話もしっかり聞き、ともすれば心から払いのけてしまいたくなるような状態こそが、己を磨く「砥石」のごとき働きをしてくれる
といった内容を意味します。*6
こうした先人の知恵を知ると、イラッとさせられる言葉が、ありがたいものに思えてきます。
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あなたは最近、誰かの注意・指摘・アドバイスに腹を立てましたか?
その言葉を書き出してみると、意外な発見があるかもしれません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「イラッと学びノート」はいつ書けばいいですか?
A. イラッとした直後ではなく、少し冷静になってから書くのがおすすめです。
怒りのピークが過ぎてから振り返ることで、客観的に「何を学べたか」を考えやすくなります。
Q2. ノートに書くとき、分析や反省は必要ですか?
A. いいえ、分析は不要です。
アンガーログの基本に従い、直感的に書き出すことがポイントです。深く考えすぎず、感じたことをそのまま記録しましょう。
Q3. 「何を学べたか」がすぐに思いつかない場合はどうすればいいですか?
A. 無理に埋めなくて大丈夫です。
左側(イラッときた内容)だけ先に書いておき、あとから気づいたときに右側(学び)を書き足す方法もおすすめです。
Q4. どんなノートを使えばいいですか?
A. 特に決まりはありません。
見開きで左右に書き分けられるノートであれば何でもOKです。手帳やメモアプリでも代用できます。
Q5. 書いたノートはどのくらいの頻度で見返すべきですか?
A. 週1回や月1回など、自分のペースで構いません。
時間が経ってから見返すと、当時は気づかなかった学びが見えてくることもあります。
*1: note|永谷研一@できたことノート&手帳|【vol.13】イラッとしたときこそ 成長のチャンス!
*2: 【公式】日本アンガーマネジメント協会|怒りの対処術を学ぼう 怒りの感情の傾向やパターンを見つけよう
*3: くすりの博物館(エーザイ株式会社)|もうひとつの学芸員室-良薬は口に苦し
*4: コトバンク|忠言は耳に逆らう
*5: TOKYO FM 80.0MHz|AIG損保 presents 「賢者の名言」
*6: 一般社団法人 日本経済団体連合会|第21回「経団連 Power UP カレッジ」
STUDY HACKER 編集部
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