
「ロジカルに説明して」と言われた瞬間、頭が真っ白になる……。
何をどう話せばいいのかわからない。
自分では筋道立てて話しているつもりなのに「何が言いたいの?」と言われてしまう。
そんな経験から「ロジカルシンキングは難しい」と感じたことはないでしょうか。
コンサルタントで研修講師の渡辺まどか氏は「ロジカルシンキングは、伝えるための"How(=方法)"で、コミュニケーション能力の一つです。その技術と、自分が『これをやりたい』 『こうありたい』という想いが合わさってこそ、最大限の力を発揮する」と述べます。*1
そこで同氏が提唱するのが、"想い" を起点にした最低限のポイントを押さえればいい「やわらかロジカルシンキング」です。
本記事では「論理的に伝えるのは難しい」と感じている人こそ使ってほしい「やわらかロジカルシンキング」の考え方と、今日から試せる実践例をご紹介します。
まずは「自分の伝えたいこと」を整理する
伝えたいことがうまく伝わらないとき、話し方以前に自分のなかで整理しきれていない可能性があります。
ここで重要なのは、完璧に整理することではありません。主観と客観を混ぜないようにするだけで充分です。
そこで前出の渡辺氏がすすめるのが「雲・雨・傘」のフレームワーク。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 雲 | 事実(実際に起きていること) |
| 雨 | 解釈(そう考えた理由・見立て) |
| 傘 | 意見・提案(だからどうしたいか) |
この3つを分けるだけで、聞き手は「何が事実で、どこからが考えなのか」を安心して受け取れますし、納得感も高まります。*1
ここで、誤解を生む例と、雲・雨・傘を使って整理した例を見比べてみましょう。
誤解を生む例
・混同した発言:「先日の商談で、新しく実装された機能の評判がとてもよく、前向きに検討してくれそうです」
→ 先方は新しく実装された機能についてリアクションしただけであって、検討するとは言っていなかった
・起きうる誤解:成約に向けて動いてもよさそうだと判断してしまう
▼雲・雨・傘を整理
雲(事実):「新機能についての感想を求めた際に『便利そうですね』と言ってもらえました。」
雨(解釈):「新機能が先方の課題に合致しているので、導入に向けた関心が高まっていると思います。」
傘(意見・提案):「この熱量が冷めないうちに、来週中に具体的な見積もりを提示したいです。」
フレームワークの雲・雨・傘を使うことで、事実と解釈、そして意見・提案がすっきりと整理されました。
このやり方で情報を整理して伝えれば、自分の意見を押しつける状況も防げるでしょう。

聞き手に合わせた切り口で話すコツ
自分が伝えたいことを整理できたら、次は聞き手視点で考えます。
自分が話したいことを自分が話したいように伝えても、聞き手がそれを受け止めきれなければ意味がありません。
やわらかロジカルシンキングでは「ロジカルに伝えること」が目的ではなく「聞き手が理解しやすいか」を重視するのです。
前出の渡辺氏は、以下の4つを押さえるとぐっと伝わりやすくなると説明します。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| ① | 誰に話すのかを明確にする *1 |
| ② | その人物が関心のある切り口は何かを想像する *1 |
| ③ | その人が納得しやすいポイントを押さえる *1 |
| ④ | 聞き手のニーズに合わせて整理する *1 |
たとえば次のように、相手によって "伝え方" を変えるだけで、聞き手の理解度が大きく変わってくるということです。
・上司に話す → 結果・影響・結論から
・同僚に話す → プロセス・協力ポイント
・後輩に話す → 背景・理由から丁寧に
上記のように聞き手に合わせて切り口を変えるだけで「伝わりにくさ」は大きく減少します。 これは話術ではなく、相手への配慮を構造に落としたものと言えるでしょう。

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職場で試せる "やわらかコミュ力" 3つの実践例
こうして整理力と聞き手目線を身につけると、コミュニケーションがぐっと楽になります。具体例で見てみましょう。
実践例1. 上司への進捗報告
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰に話すか | 判断・意思決定をする立場の上司。結論から端的に話すことを好むタイプ。 |
| 聞き手の立場・関心 | 結論は何か、予定に影響があるのか、対応策はあるか |
| 納得ポイント | 結果と影響、次の一手が明確になっていること |
伝え方:
「資料は80%完成していますが、作業が半日遅れています(事実)。
昨日クレーム対応が入ったためです(解釈)。
そのため、今日の午前中は資料作成に集中したいので、割り込み作業は午後に対応するか、ほかの人にサポートしていただきたいです(提案)。
本日の会議日程には影響ありません。」
この上司が知りたいのは「頑張っている姿勢」ではなく、「判断に必要な情報がそろっているか」です。
その視点で整理するだけで、報告は一気に通じやすくなります。

実践例2. 同僚への協力依頼
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰に話すか | 同じ立場で業務を分担している同僚 |
| 聞き手の立場・関心 | 自分の業務量への影響 |
| 納得ポイント | なぜいまなのか、どこまで手伝えばいいのかが明確になっていること |
伝え方:
「この案件、締切が1日早まりました(事実)。
私ひとりだと確認が間に合わないと思います(状況)。
15分でできる範囲でいいので、資料の数字チェックだけお願いできますか(提案)。」
お願いだけではなく、背景 → 現状 → 協力ポイントの順で話すと、聞き手は判断しやすくなります。

実践例3. 後輩への業務説明
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰に話すか | 経験が浅く、全体像がまだ見えていない後輩 |
| 聞き手の立場・関心 | なぜその作業が必要なのか、失敗するとどうなるのか、今後の作業にどう活かせばいいのか |
| 納得ポイント | 理由や背景を理解できること |
伝え方:
「この作業は次の工程と関連しているので、ここで間違えると次の工程に直接影響するので注意が必要です(背景)。
いまは手順2でミスが起きています(事実)。
前後の流れを知らないまま作業していたのが原因のひとつです(解釈)。
まずは一緒に全体の流れを確認してから、ここを見直してみましょう(提案)。」
後輩に対しては、結論だけでなく「なぜそうなるのか」といった背景を共有することで、理解と再現性が高まります。

***
やわらかロジカルシンキングは正しく話すための技術ではなく、相手と一緒に前に進むためのコミュニケーション術です。
主観と客観を整理し、聞き手の立場を思い浮かべ、必要な順で渡す――それだけでも
「伝えること」はぐっと楽になります。
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※引用の太字は編集部が施した
*1 会議HACK!|ロジカルシンキングは、"想い"があればむずかしくない【スマート会議術第207回】
FAQ(よくある質問)
Q1. ロジカルシンキングが苦手でも、「やわらかロジカルシンキング」は使えますか?
A. はい、使えます。やわらかロジカルシンキングは、難しいフレームワークや正解を求める思考法ではなく、「事実・解釈・意見」を分けて伝えることが中心です。論理に自信がない人ほど、最低限の整理だけで伝わりやすくなる点が特徴です。
Q2. 雲・雨・傘を使うと、話が長くなってしまいませんか?
A. 目的によりますが、むしろ誤解を減らし、やり直しの説明を防ぐ効果があります。すべてを丁寧に話す必要はなく、相手が必要としている要素だけを意識して伝えることで、結果的にコミュニケーションは短く、スムーズになります。
Q3. 上司には結論から、後輩には背景から話すのはなぜですか?
A. 立場によって「知りたい情報」が異なるためです。上司は判断材料を、後輩は理解と再現性を重視します。聞き手の関心に合わせて切り口を変えることで、同じ内容でも伝わりやすさが大きく変わります。
Q4. 自分の意見を押し付けていると思われないか心配です。
A. 雲・雨・傘を分けて伝えることで、その心配は軽減できます。事実と解釈、提案を区別して話すことで、「これは事実」「これは自分の考え」と聞き手が整理しやすくなり、押しつけではなく共有として受け取ってもらいやすくなります。
Q5. やわらかロジカルシンキングは、仕事以外でも使えますか?
A. はい、日常の会話や家族・友人とのコミュニケーションでも活用できます。相手の立場を考え、事実と気持ちを整理して伝える考え方は、意見の食い違いやすれ違いを減らすのに役立ちます。
澤田みのり
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。