
仕事の失敗を、いつまでも引きずってしまう。そんな経験はありませんか? 一方で、同じように失敗しても引きずらず、どんどんチャレンジして成功している人たちもいます。
このような「できる人」と呼ばれる人たちは、失敗しても「自分はだめなやつだ」といつまでも思い詰めたりしません。失敗を次に活かすための材料としてとらえているのです。
本記事では、失敗を引きずりやすいビジネスパーソンに向けて、できる人が実践している「失敗の活かし方」をご紹介します。
できる人は「失敗の仕方」がうまい
「あの人は要領がいいなぁ。きっと失敗なんてしたことないんだろうな」
できる人を見て、こんなふうに思ったことはありませんか? じつは、できる人も失敗しています。違うのは「失敗の向き合い方」が上手なだけなのです。それを裏付ける研究があります。
◇ しっかり考えた末の失敗こそ、成長につながる
2018年に、東京大学大学院薬学系研究科の池谷裕二教授らの研究グループが行なった研究です。*1
【実験内容】
ラットに二択課題を解かせ、選択までにかけた時間と学習成績の関係を調べた。
【結果】
- すぐに判断して失敗する個体よりも、時間をかけて考えた末に失敗する個体のほうが、最終的に高い成績を残すことがわかった。
- 一方で、偶然うまくいった「成功体験」の回数は、学習スピードとはほとんど関係がなかった。
【わかったこと】
成功の回数よりも、「よく考えたうえでの失敗」のほうが、学びを深めるうえで大切だった。できる人は、やみくもに動いているわけではありません。失敗を「材料」にして、考え、学び、次の挑戦に活かしているのです。
「自分だって失敗後に反省している。むしろ考えすぎて引きずってしまうんだ」 そう思った方もいるかもしれません。 じつは、失敗を活かせる人と引きずる人では、「考え方の方向」がまったく違います。
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◇ できる人の失敗についての考え方
- ✔︎ 失敗が起きたのは、「失敗しない仕組みができていなかっただけ」
- ✔︎ 失敗を恐れて動かないほうが、長期的には「機会損失」になる
- ✔︎ 変えられない過去ではなく、「自分がコントロールできること」に集中する
◇ 失敗を引きずる人の考え方
- ✔︎ 「自分は向いていない」「能力が足りない」と考えてしまう
- ✔︎ 失敗の原因が曖昧なまま、感情の整理で終わってしまう
- ✔︎ 過去のことばかり考えて、次の行動に集中できなくなる
このように、失敗を引きずってしまう人は、失敗を「自分そのもの」と結びつけてしまいがち。これでは、ただ自分を追い詰めるだけで、失敗を活かすことにはつながらないのです。
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失敗したあとにやるべきこと
ここからは、失敗を活かすための具体的な実践方法を紹介します。
【まずは準備】体を動かして、気分をマシにする
失敗した日は、出来事が何度も頭に浮かび、ため息ばかりついてしまうもの。こんな状態では、失敗から学ぼうとしても集中できません。まずは心を落ち着かせましょう。
そこでおすすめなのが、体を動かすこと。私たちが思っている以上に、体と心はつながっていることがさまざまな研究でわかっています。
公立諏訪東京理科大学工学部教授で脳科学者の篠原菊紀氏は、落ち込んでいるときに気分を改善するアクションを紹介しています。*2
- 背筋を伸ばす|ポジティブな感情が高まり、疲労が軽減され、自分について思い悩む傾向が減る
- 手・目線をうえに向ける|ポジティブな気分になりやすい
筆者も背筋を伸ばしてバンザイしてみたところ、気持ちがふっと軽くなり、「まあいいか」と思えるようになりました。数秒でできるので、落ち込んだときはぜひ試してみてください。
「自分の言葉」で振り返る
気分が落ち着いたら、振り返りを行ないます。ここで思い出したいのが、失敗を活かせる人は「失敗しない仕組みができていなかっただけ」ととらえている点です。「自分はダメだ」と感情にとらわれるのではなく、次に活かすための「仕組み」をつくる視点で振り返りましょう。
精神科医で住職の川野泰周氏も、誰かの発言や出来事にショックを受けたときの対処として、「事実と想像に分けて分析」することをすすめています。*3
そして大切なのは、「自分の言葉」で振り返ること。明治大学教授で言語学者の堀田秀吾氏は、失敗を学びに変えるには「自分で経験したことや感じたことを言葉で整理し、前頭前野を働かせることが何より重要だ」と指摘しています。*4
つまり、同じ悩みをもつ人のポストを読むだけ、AIの回答を読むだけ、というのは学びになりにくいのです。ぜひ自分の言葉で振り返りを書き出してみてください。
ただ落ち込んだり腹を立てたりする状態から抜け出し、「次はどうすれば少し良くできるか」に集中できるようになれば、気づいたときには大きな収穫を得ているでしょう。
失敗したら「仕組みの改善」を行なう。この視点をもてるかどうかが、失敗を成長に変えられるかの分かれ道になります。
***
「失敗しても、自分が悪いのではなく、自分の使っている仕組みがよくなかっただけ」
つい自分を責めてしまう人こそ、この視点を取り入れてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q失敗を「仕組みの問題」と考えるのは、責任逃れにならないですか?
Aいいえ、むしろ逆です。「自分がダメだ」と落ち込むだけでは何も変わりませんが、「仕組みの問題」と考えると「では次はどうすればいいか」という改善行動につながります。自分を責めて終わりにするより、よほど建設的な向き合い方です。
Q振り返りを書こうとしても、感情的になってうまく書けません。
Aそれは「準備」が足りていないサインかもしれません。記事で紹介したように、まず背筋を伸ばす、バンザイをするなど体を動かして気分を整えてから取り組んでみてください。感情が落ち着いてから書くほうが、冷静に分析できます。
Q「自分の言葉で振り返る」とは、具体的に何を書けばいいですか?
Aまずは「何が起きたか(事実)」と「自分がどう感じたか(感情)」を分けて書き出してみてください。そのうえで「次に同じ状況になったら、どうすれば防げるか」を考えると、仕組みの改善につながりやすくなります。
Q失敗のたびに振り返りをするのは、時間がかかりすぎませんか?
A毎回長文を書く必要はありません。「何が起きたか」「次はどうするか」を2〜3行メモするだけでも十分です。大切なのは、感情のまま終わらせず、短くてもいいから言語化する習慣をつくることです。
*1 東京大学|じっくりと考えた後の失敗こそが学習を促進する「早とちり」の弊害をネズミ実験で検証
*2 日経ビジネス|落ち込んだとき、姿勢を正して上を向けば気持ちも上向きに?
*3 プレジデントオンライン|やりたくない事をやり続けると病気になる
*4 AERA DIGITAL|失敗を「ただの出来事」で終わらせない 「学び」に変える反省的学習の言語化術
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。