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なぜディズニーは、何もない場所に「ポップコーンの匂い」を漂わせるのか?【新人さんのためのマーケティング講座 Season4 vol.4】

📘 新人さんのためのマーケティング講座 Season4

Season3までは、事例を中心にマーケティングの原則を学んできました。
Season4では、Season3だけではご紹介しきれなかった事例をさらに発展的に取り上げていきます。

まだ過去のSeasonを読んでいない方は、そちらからどうぞ。
Season 1【全14回まとめ】|▶ Season 2【全15回まとめ】|▶ Season 3【準備中】

東京ディズニーランドのワールドバザールを抜けた瞬間——甘いキャラメルポップコーンの香りが、ふわりと鼻をくすぐった経験はないでしょうか。

実はあの匂い、近くの売店から自然に漂ってきたものとは限りません。ディズニーは「スメリティライザー(Smellitizer)」という特殊な装置を使い、意図的に香りを噴霧しているのです。

前回の記事では、Appleが「箱を開ける瞬間」の触覚・視覚体験を徹底設計していることを解説しました。今回は五感の旅をさらに進めて、「嗅覚」に焦点を当てます。なぜディズニーは、何もない場所にポップコーンの匂いを漂わせるのか。その戦略を、心理学の視点から紐解いていきましょう。

ディズニーの「匂い」は、偶然ではない

ディズニーパークには、エリアごとに異なる香りが設計されています。

メインストリートでは焼きたてのクッキーやバニラの甘い香り。カリブの海賊では潮風と湿った木材の匂い。ホーンテッドマンションでは、かすかな埃っぽさ——。

これらの香りの一部は、「スメリティライザー」と呼ばれるディズニー独自の送風装置によって、特定の場所に向けて噴霧されています。*1

目的は明確です。ゲストの気分を昂揚させ、滞在時間を延ばし、物販の売上を伸ばすこと。そして何より、数年後にキャラメルポップコーンの匂いを嗅いだだけで「ディズニーに行きたい」と思い出させること。

ディズニーにとって、匂いは「副産物」ではなく、ブランド体験の中核を担う戦略的なツールなのです。

「感情のスイッチ」は、鼻にある

なぜ、匂いはこれほどまでに強く人の心を動かすのでしょうか。

その答えは、脳の構造にあります。五感の中で、嗅覚だけが「大脳辺縁系」にダイレクトに信号を送ることが分かっています。*2

大脳辺縁系とは、感情や本能、記憶を司る脳の領域です。視覚や聴覚の情報は、まず大脳皮質(理性を司る部分)を経由してから処理されます。しかし嗅覚だけは、理性のフィルターを通さずに、感情の中枢へ直接届く。

感覚 脳への経路 特徴
視覚・聴覚 大脳皮質を経由 理性で処理される
嗅覚 大脳辺縁系に直結 感情・記憶にダイレクト

つまり、匂いは「考える前に、感じさせる」ことができる唯一の感覚なのです。

言葉で説明されたロジックは、時間とともに薄れていきます。しかし、匂いに結びついた記憶は驚くほど長く残る。ディズニーは、この生物学的な特性を巧みに利用し、「ここは安全で楽しい場所だ」という心理的なアンカーをゲストの脳に打ち込んでいるのです。

プルースト効果——匂いが記憶を「再生」する

心理学には「プルースト効果(Proust Effect)」と呼ばれる現象があります。

フランスの作家マルセル・プルーストが、小説『失われた時を求めて』の中で、紅茶に浸したマドレーヌの味わいをきっかけに幼少期の記憶が鮮明に蘇る場面を描いたことに由来します。*3

 

特定の匂いを嗅ぐことで、それに関連する過去の記憶や感情が鮮明に蘇る。

これがプルースト効果です。そして、ディズニーの嗅覚戦略は、まさにこの効果を「逆算」して設計されています。

パーク内で特定の香りと「楽しい体験」を結びつけることで、記憶の「インデックス(索引)」を匂いで作る。すると、日常に戻ったゲストが街中でキャラメルポップコーンの匂いを嗅いだ瞬間、パークでの楽しい記憶が無意識に蘇り、「また行きたい」という感情が呼び起こされる。

これは前回の記事で紹介した「感覚マーケティング(Sensory Marketing)」——複数の感覚を通じてブランドを体験させ、記憶に深く刻み込む手法の、嗅覚版と言えるでしょう。

Appleが触覚と視覚で「開封の儀式」を作ったように、ディズニーは嗅覚で「再訪のトリガー」を作っている。アプローチは違えど、顧客の記憶に「ブランドの索引」を埋め込むという本質は同じです。

「説得」ではなく「浸らせる」設計を

ここまでの話を、自分の仕事に置き換えてみましょう。

あなたのブランドには、「固有の体験」がありますか?

テーマパークや高級ホテルだけの話ではありません。Webサービスであっても、通知音の心地よさ、UIのサクサク感、ページ遷移のなめらかさ——こうした感覚的な心地よさが、実はロジック以上に継続利用(LTV)に貢献しています。

業種 「固有の体験」の例 刺激する感覚
テーマパーク エリアごとの香り 嗅覚
ECサイト 開封時の梱包・同梱物 触覚・視覚
Webサービス 通知音・UIのなめらかさ 聴覚・視覚
カフェ・飲食店 店内の香り・BGM・食器の質感 嗅覚・聴覚・触覚

顧客は「機能が優れているから」だけで選び続けるわけではありません。「なんとなく心地いいから」「使うたびに気分が上がるから」——そうした言語化しにくい感覚こそが、長期的なロイヤルティを生み出します。

 

顧客を「説得」するのではなく、「浸らせる」。
そのために、五感をどうデザインするか。

ロジックで納得させるだけでは、顧客は離れます。しかし、感覚に刻み込まれた体験は、無意識のうちに「また戻りたい」という感情を生み出し続けるのです。

 

【本記事のまとめ】

1. ディズニーの匂いは「偶然」ではない
スメリティライザーで意図的に香りを設計し、ゲストの感情をコントロールしている。

2. 嗅覚は感情にダイレクトに届く
五感の中で唯一、理性を経由せずに大脳辺縁系に直結する。

3. プルースト効果で「再訪のトリガー」を作る
匂いを記憶のインデックスにし、日常で「また行きたい」を呼び起こす。

4. 「説得」ではなく「浸らせる」
五感を通じた体験設計が、長期的なロイヤルティを生み出す。

よくある質問(FAQ)

オンラインビジネスでも「嗅覚」を活用できますか?

直接的な香りの演出は難しいですが、嗅覚の原理——「感覚を通じて記憶に刻む」——は応用できます。通知音、アニメーション、ページ遷移の心地よさなど、ユーザーの「身体感覚」に訴える要素を設計することで、同様の効果が期待できます。

感覚マーケティングとプルースト効果の違いは何ですか?

感覚マーケティングは「五感を活用してブランド体験を強化する手法」全般を指します。プルースト効果は「特定の感覚刺激(特に匂い)によって過去の記憶が蘇る心理現象」のこと。つまり、プルースト効果は感覚マーケティングの中で活用される心理メカニズムのひとつです。

小規模店舗でも匂いの演出はできますか?

できます。ディズニーほどの装置は不要です。たとえば、店内で焙煎するコーヒーの香り、焼きたてパンの匂いを入口付近に流す工夫、アロマディフューザーの活用など、小規模でも実践できる方法はあります。重要なのは「その匂いをブランドの固有体験として一貫させる」ことです。

(参考)

*1 The Disney Parks Blog および各種インタビューにおけるWalt Disney Imagineering関連資料。Smellitizer(スメリティライザー)はディズニーのImagineering部門が開発した香り噴霧システム。
*2 Rachel Herz『The Scent of Desire: Discovering Our Enigmatic Sense of Smell』(William Morrow、2007年)。嗅覚が大脳辺縁系に直結する生物学的メカニズムを詳述。
*3 マルセル・プルースト『失われた時を求めて 第1篇 スワン家のほうへ』(1913年)。マドレーヌの香りによる記憶想起の描写が「プルースト効果」の語源。

▼ 新人さんのためのマーケティング講座 Season4

Season3だけではご紹介しきれなかった事例をさらに発展的に取り上げていきます。

Season1(全14回)はこちら|マーケティングの基礎概念からWeb広告の実務知識まで

Season2(全15回)はこちら|現場で成果を出すための実践スキル
▶ Season 3【準備中】

【プロフィール】
岡 健作(おか・けんさく)

スタディーハッカー 代表取締役社長
1977年生まれ、福岡出身。同志社大学卒業。2010年に創業。「Study Smart(合理的に学ぶ)」をコンセプトに、科学的知見に基づく英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」を設立し、人気ブランドへと成長させる。 事業拡大の要として、自らオウンドメディアとSNSの編集長を兼任。オウンドメディアは最大500万PV、Instagramでは月間700万PV、フォロワー27万人規模のメディアにするなど、広告費に依存しない集客モデルを確立する。現在はその知見を活かし、「企業の認知獲得の専門家」として、論理とデータに基づいた再現性の高いメディア戦略・ブランディング論を発信している。
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