
出勤前にToDoリストを書き出し、「今日こそは定時でビシッと仕上げよう」と決意。でも、結果はいつも同じ。期待感にあふれているのは最初だけで、必ず途中から不安と焦りがにじみ出し、後悔で幕を閉じる。また終わらなかった――。
この思い、決してあなただけではありません。
仕事のパフォーマンスが上がらないという悩みは、多くのビジネスパーソンが共感する課題です。しかし、「気合で頑張ろう」と思っても、情熱は頼りなく持続しないもの。
もしもToDoリストでうまくいかないのなら、たった5分「いま持っているものと、今日の目的」を考える時間をつくってみてはいかがでしょうか。5分だけ自分と向き合う時間が、あなたの意識を変えて一日の生産性を高めてくれます。
今回の記事でご紹介するのは、著名な投資家ティム・フェリス氏も実践する朝習慣の「5分ジャーナル」です。仕事のパフォーマンス向上の一助となるテクニックを、筆者の実践報告とともにお伝えいたします。
- 「判然たる目標」は集中力・意欲・主体性を引き出す
- 著名な投資家が実践する「5分ジャーナル」とは?
- 5分ジャーナルの「3つの問い」
- 朝時間に「5分ジャーナル」を試してみた
- 「5分ジャーナル」を試してみた結果
- よくある質問(FAQ)
「判然たる目標」は集中力・意欲・主体性を引き出す
どんなに「今日は集中して頑張ろう」「昨日より成果を出そう」と決意しても、なかなか仕事は思いどおりに運ばないもの……。
でもそれは、能力でも根性でもなく、“何に集中するか” を決めていなかったことが原因かもしれません。
パフォーマンス心理学とポジティブ心理学を専門とする心理学者で、リバプール大学の名誉講師でもあるジェレミー・サットン博士は、複数の研究をふまえ目標設定の利点を次のように挙げています(一部抜粋)。*1
- パフォーマンスの向上
目標があることで取るべき行動に集中できる。 - 内発的動機(モチベーション)の向上
「やらされ感」よりも「自分でやりたい」という気持ちが強まる - 自律性・自己決定力の向上
「自分がコントロールしている」という感覚が得られる。
一日の始めに “何を成し遂げたいか” を決めることは「集中力」「意欲」「主体性」を引き出す効果が期待できるのです。

著名な投資家が実践する「5分ジャーナル」とは?
前章をふまえると、やるべきことは「目的の明確化」です。
しかし、当たり前すぎるこの概念だけでは、どう行動を変えていけばいいのかわかりません。下手にプレッシャーだけが高まりそうな印象です……。
そこで、今回おすすめするのは、米国の著名なエンジェル投資家でありベストセラー『「週4時間」だけ働く。』の著者、ティム・フェリス氏が実践・推奨する「5分ジャーナル」です。*2
同氏は「一日を成功に導く朝の習慣」のひとつとしてこれを提示。優先順位づけと感謝の気持ち、どう集中して実行すればいいのか? を明らかにするために使うといいます。また、この習慣は追い求めているものではなく、いま持っているものについて考えるよう促してくれるそうです。*2
つまり「5分ジャーナル」は、「今日どこに集中し、どう行動するか」という実行力を高め、ポジティブな心理状態をつくってくれるのです。
ToDoリストのように「ただ今日やるタスクを書き出す」のではなく、問題解決のために「進むべき方向」を探すわけでもありません。思考と感情を整え、決めた方向へ集中するための手法です。
これなら不安や焦りを先立たせることなく、前向きな気持ちで今日の目的に集中できるのではないでしょうか。
次項では、その具体的なやり方を説明しましょう。

5分ジャーナルの「3つの問い」
フェリス氏の「5分ジャーナル」は、以下3つの問いを用いて行ないます。*3
問い1. いま自分が感謝していることは?
最初の問いは「自分が何に感謝しているか」です。
このコツとしてフェリス氏は、以下のカテゴリで導き出すことをすすめています。思考のマンネリ化で、毎回同じような内容になることを避けるためです。*2,*3
- 自分にとって大切な過去の人間関係
- いま与えられているチャンス
(例:今日も仕事に行ける・誰かに連絡できるなど) - 昨日に起こった素晴らしいこと
(体験・目撃したことなど) - 近くにある、または視界内にあるシンプルなもの
(例:窓の外の雲・飲んでいるコーヒー・使っているペンなど)
精神医学を専門とするジョージ・ワシントン大学の准教授、スーザン・B・トラクマン博士によれば、「感謝の気持ちは感情に関わる脳の部分を活性化し、セロトニンとドーパミンの放出を引き起こす」といいます。*4
それらは幸せホルモンとして有名な物質。前向きな視点に変えてくれることが期待できます。
問い2. 今日を素晴らしい一日にするには?
次の問いは「今日を素晴らしい一日にするために必要なことは何か」。つまり、素晴らしい一日のために優先順位を決め、パフォーマンスに集中するための問いです。
2021年の研究では、目標が曖昧でタイミングが適切でない場合、フラストレーションや失敗につながると示唆されています。しかし、適切に行なわれることで、目標設定は個人やチームを鼓舞し、動機づけ、活力を与え、成功へと集中させるといいます。(Clough et al., 2021)。*1
つまりそれは、目標設定が単なる「やることリスト」ではなく、心理的なエネルギーを方向づける強力なツールであることを示唆しています。
だからこそ、いまの自分にとっての素晴らしい一日を思いながら、現実的かつ具体的な焦点を定めていくプロセスには、大きな意味があります。
問い3. 今日のアファメーション
最後の問いは「今日のアファメーション」です。
アファメーションとは「自分に向けた短い肯定的な言葉」を、声に出したり心のなかで繰り返したりする方法です。*5
コンコルディア大学社会行動科学科の名誉教授であるデビッド・J・ブレデホフト博士によれば、「アファメーションの活用が健康と幸福にとって有益なツールであることを示すエビデンス」はますます増えているといいます。*5
博士いわくアファメーションとは、自分の適性を強調し、自己の完全性を再確認するあらゆる行為。*5
――つまり、自分の能力や強みを認め、ありのままの自分や可能性を肯定することです。前向きな気持ちで今日の目的に集中するためには、不可欠な準備ではないでしょうか。
朝時間に「5分ジャーナル」を試してみた
そこで実際に筆者も、出勤前に「5分ジャーナル」を試してみました。
まず始めにそれぞれ3つの問いを書き出します。

それから――
最初の日の5分ジャーナルが完成……!

「今日を素晴らしい一日にするには?」の問いには迷いつつ……
「仕事で最高の状態」を想像しながら書きました。

ToDoリストよりボリュームはありますが、普通のジャーナリングとは違います。
3つの問いに答えるだけなので、5分以内で書き終わりました。
これなら朝習慣として継続できそうです……!

「5分ジャーナル」を試してみた結果
では最後に、5分ジャーナルを朝習慣に取り入れてみて感じた効果、工夫点などを共有します。
- 各質問がポジティブな視点なので、「やらなければ」というプレッシャーが減り、以前より気分よく作業に取り組めました。
- 5分以内で書き終わるので、筆者は朝の支度をすべて済ませてから取り組みました。忙しい時期でも継続できそうです。
- 注意点は「ノルマ」感覚で書かないこと。5分ジャーナルの効力は気分の向上も大きな要素です。「ポジティブな気持ちでスタートしよう」という目的で取り組むのがベストかもしれません。
***
朝に「3つの問い」に答えて、その日の目的を定めてみましょう。朝に「5分考える時間」をつくれば、あなたの生産性や仕事の満足度が高まるはずです。
よくある質問(FAQ)
*1: Positive Psychology.com|The Importance, Benefits, and Value of Goal Setting
*2: The Blog of Author Tim Ferriss|5 MORNING RITUALS THAT HELP ME WIN THE DAY
*3: X|Tim Ferriss(午前11:31 · 2025年6月24日)
*4: Psychology Today|The Mental Health Benefits of Giving Thanks
*5: Psychology Today|The Science Behind Self-Affirmations
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。