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業務起因性の前提となる労働時間とは、労働基準法上の労働時間に限られるものではないとされた例

1.労働者災害補償保険法上の労働時間

 労働時間の数は、労災認定が認められるのか否かと密接に関係しています。

 例えば、

令和5年9月1日 基発0901第2号「心理的負荷による精神障害の認定基準について」は、

「極度の長時間労働、例えば数週間にわたる生理的に必要な最小限度の睡眠時間を確保できないほどの長時間労働は、心身の極度の疲弊、消耗を来し、うつ病等の原因となることから、発病直前の1か月におおむね160時間を超える時間外労働を行った場合等には、当該極度の長時間労働に従事したことのみで心理的負荷の総合評価を『強』とする。」

 と定めています。

 この労働者災害補償保険法上の「労働時間」は、行政解釈上、労災認定の可否を判断するうえでの労働時間は、労働基準法上の「労働時間」と同義であるとされています(令和3年3月30日 基補発 0330 第1号 労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集の活用について参照)。

 しかし、法の趣旨が異なることから、行政解釈と司法判断には若干のズレが生じており、両者は必ずしも同一の概念とはいえません。このズレは下振れすることもあれば上振れすることもあります。

 以前、

「仮眠時間帯(準夜勤の業務終了から日勤の業務を開始するまでの時間帯)は、本件医院内に滞在し緊急の手術が入った場合に連絡を受けて業務を行うことがあり・・・、連絡があれば業務を行うことが義務付けられていた可能性が高いから、いわゆる手待ち時間として、私法上の労働時間であった可能性が高い。他方、連絡がなければ業務はなく、シャワー浴や就寝をして過ごしていたこと、被災者は、基準日前6か月間に仮眠時間帯に連絡を受けて業務を行ったことはなかったことから・・・、労働であったとしてもその密度は極めて低いといえるため、業務起因性を判断するための業務の負荷を考える上では労働時間に含めないのが相当である。

といったように、私法上は労働時間としてカウントされながら、業務起因性判断(労災申請の可否)の場面では労働時間としてカウントしないという下振れ事案をご紹介したことがありますが(東京地判令6.3.14労働経済判例速報2562-13 国・中央労基署長(順天堂医院)事件)、近時公刊された判例集に上振れ事案が掲載されていました。広島高判令5.2.17労働判例1341-93静岡県(県警察・妻子側)事件です。これは昨日紹介した最二小判令7.3.7労働判例1341-71 静岡県(県警察・妻子側)事件の原審です。

2.静岡県(県警察・妻子側)事件

 本件は自殺した警察官(静岡県警察)の遺族が提起した損害賠償請求訴訟です。

 原告側(被控訴人側、上告受理相手方側)は、過重な業務に従事⇒うつ病等の精神疾患の発症⇒精神疾患の影響による自殺という経過を主張したため、本件では労働時間のカウントが問題になりました。

 結論としては、一審、二審、最高裁とも原告の請求を大筋において認めていますが、本日注目したいのは、一審、二審が行った労働時間についての考え方です。

 一審、二審は、労働時間のカウントの仕方について、次のような判断を示しました(青字=二審による改め文)

(裁判所の判断)

・業務起因性判断における労働時間該当性に関する基本的な考え方

「労働基準法32条における労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいうものと解される。もっとも、前記・・・のとおり、労働者の自殺の業務起因性を判断するに当たっては、当該労働者の従事する業務による心理的負荷が、精神障害を発症させる程度に過重であるか否かを検討する必要があり、労働時間も、上記心理的負荷の程度を判断するために斟酌されるものであるから、業務起因性判断の前提となる労働時間(勤務時間)とは、上記労働基準法上の労働時間に限られるものではなく、労働者が、業務のために必要な活動(業務そのものに留まらず、これに密接に関連する活動等を含む。)に従事していることが客観的に明らかであるといえるときは、使用者による明示的な時間外勤務命令に基づいているか否かや、使用者の指揮命令下に置かれているか否かといった点を問わず、これを業務起因性判断の前提となる労働時間(勤務時間)として考慮することができる場合があると解すべきである。

3.労働基準法上の労働時間には限られない

 確かに、原則的には、

労働者災害補償保険法上の労働時間=労働基準法上の労働時間

ではあるのですが、実際の裁判例を見てみると、上振れしている事案もあれば下振れしている事案もあり、比較的柔軟な考え方がされていることが分かります。

 本件の裁判所は上振れすることを明示的に示しています。裁判所の判示は、労働者側で業務起因性を立証して行く場面で活用して行くことが考えられます。

 




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