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キャバクラのキャストの労働者性-売上ノルマがなく、接客を断ることが可能であっても、労働者であるとされた例

1.クラブママ、ホステス、ホスト、キャバクラキャスト等の労働者性

 比較的昔からある問題の一つに、クラブのママ、ホステス、ホスト、キャバクラのキャスト等、夜職や水商売と言われる職業に就いている方の労働者性があります。

 当たれば高収入が見込める半面、夜通しの長時間勤務や、厳しい罰金制など、過酷な契約条件のもとで働いている方が少なくありません。

 こうした過酷な契約条件は労働法の適用下では設計できないため、店と夜職の方との間では、しばしば労働契約ではなく業務委託契約が交わされます。しかし、内容が働く人にとって厳しすぎる例が多く、労働法の適用を求めて紛争になる例が昭和の時代から頻発してきました。

 ある程度事案の集積が進んでいる領域であるため、近時では店の側も労働契約だと言われないための工夫をしていることが少なくありません。売上ノルマを課さなかったり、接客を断ることが可能な仕組みを設けたりするといったようにです。労働者性の有無を判断するにあたり、仕事に諾否の自由があるのかどうかは、重要な考慮要素であるとされています。ノルマがなく、嫌な客の接待を断ることができるのであれば、仕事に諾否の自由があるといえるため、労働者ではなくなるはずだというのが店側の論理です。

 しかし、近時公刊された判例集に、売上ノルマがなく、接客を断ることが可能であったという事実関係のもとにおいても、キャバクラのキャストに労働者性を認めた裁判例が掲載されていました。東京地判令7.6.25労働判例ジャーナル164-20 in good faithほか1社事件です。

2.in good faithほか1社事件

 本件で被告になったのは、

居酒屋・飲食店の経営等を目的とし、キャバクラ店「Ⅾ」を営業していた株式会社(被告会社1)

居酒屋・飲食店の経営等を目的とし、キャバクラ店「E」(後に店名を「F」に変更)を営業していた株式会社(被告会社2)

被告会社2の代表取締役C(被告C)

の三名です。

 原告になったのは、Dに体験入店してキャストとして接客業務に従事した後、Fでキャストとして接客業務に従事していた方です。

 自身が労働者であることを主張し、

支給額の10%に相当する「税金」や、支給額の5%に相当する「厚生費」、「交通費他」、「罰金」等の各種控除を受けていたことや、

割増賃金(いわゆる残業代)の不払い

を問題視し、不当利得や未払賃金等の支払を求める訴えを提起したのが本件です。

 原告は被告会社らとの間で「入店契約書」(本件契約書)を取り交わしていましたが、本件では、これが労働契約なのか、業務委託契約なのかが問題になりました。

 裁判所は、次のとおり述べて、原告の労働者性を認めました。

(裁判所の判断)

「DもFも、キャストのシフトは、キャストが出勤を希望する日や時間を聞いた上で決定しており、前日までに変更を申し出ることも可能であった。また、DもFも、営業時間は、午後8時から午前0時までということになっていたが、客がいる限りは、午前0時を過ぎても営業を続けており、午前0時を過ぎても営業を続けていることがほとんどであり、キャストも、午前0時を過ぎた後の時間まで勤務を希望する者が多くいた。午前0時を過ぎて客がいなくなると、店を閉めていたが、その場合、キャストが希望する勤務終了時間より前であっても、当該キャストに対しては、帰るよう指示がされていた。・・・」

「原告の勤務時間は、概ね午後9時から翌日午前4時までが想定されていた・・・。」

「原告と被告会社1及び2との契約においては、遅刻や当日欠勤について、ペナルティーとして一定の罰金が科されることになっていたが、体調不良等のやむを得ない理由の場合には、ペナルティーは科されていなかった・・・。」

「DもFも、キャストに対し、売上げのノルマを課しておらず、営業活動について細かく指導することはなかった。また、DもFも、キャストに対し、指名をするキャストがいない客の接客をするよう促すことがあったが、当該キャストは、何らかの理由で接客をしたくない場合には断ることが可能であった。・・・」(後記 認定事実(1)ウの事情)

「DもFも、キャストへの支給は、時給と手当の組み合わせで決まっていたため、キャストの勤務時間はタイムカードで管理されていた・・・。」

(中略)

原告の勤務希望日や希望時間の申告に基づき、原告のシフトは決定され、また、シフトの変更は、前日までは可能であった。しかし、勤務当日の遅刻や欠勤については、体調不良等のやむを得ない理由がない限り、ペナルティーとして罰金が科されていた。また、原告の勤務時間はタイムカードにより管理されており、さらに、店長が店に客が来ないと判断し、閉店を決めた場合には、原告が希望した勤務終了時刻より前であっても、勤務を終了するよう指示がされていた。加えて、男子スタッフとの風紀を乱す行為(食事、デート、店外で会う、連絡交換、交際等)の禁止等の禁止事項、厳守遵守事項が定められ、原告が禁止事項、遵守事項を破った場合、給料遅延の上、労働基準法最低賃金での計算となり、店舗改善費が請求されることとされていた。これらのことからすれば、認定事実(1)ウの事情を考慮しても、原告は、仕事の依頼、諾否の自由を一定程度制限されるとともに、被告会社1及び2の指揮監督を受け、時間的拘束を受けていたといえる。また、接客業務という業務の性質上当然のこととはいえ、業務の場所は店舗であり、原告は場所的拘束を受けており、原告以外の者による労務提供も認められておらず、代替性もなかった。

そして、原告は、雇用契約で定められた決定方法により定められた時給に勤務時間を乗じた額と各種手当の額を加算した額の合計額の支給を受けており、支給額は時給を基礎とした額が主であった。したがって、原告への支給は、接客という労務提供への対価と評価するのが相当である。

以上によれば、原告と被告会社1及び2の契約はいずれも労働契約であると認めるのが相当である。

3.諾否の自由の制限が一定程度で足りるとされた

 本件で特徴的なのは、諾否の自由についての判断です。

 諾否の自由は労働者性の有無を検討するにあたり、中核的な要素を占めます。

 売上ノルマがなく、接客を断ることが可能であったのであれば、諾否の自由は「あった」となりそうですし、諾否の自由があれば労働者性は否定されるという結論に流されがちです。

 しかし、裁判所は、罰金や厳守遵守事項等で強い管理下に置かれていたことに触れたうえ、原告の労働者性を認めました。

 先行判例が蓄積されている領域でも、事業者が判例動向を踏まえた際どいラインを攻めようとしてくる関係で、判断の難しい事案は次から次に発生してきます。

 冒頭で述べたとおり、厳しい契約条件のもとで働いていて、労働法の保護を必要としている夜職の方は少なくありません。

 裁判所の判断は、

売上のノルマはない、接客を断ることもできる、

だけれども、罰金や遵守事項、禁止事項で厳格に管理されている、

というタイプの店で働く夜職の方の労働者性を主張、立証して行くにあたり、実務上参考になります。

 




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