以下の内容はhttps://sskdlawyer.hatenablog.com/entry/2025/11/11/212809より取得しました。


解雇撤回を求めてから約1年10か月後に訴訟提起するまでの間、使用者に連絡していなくても一定限度で就労意思が認められた例

1.解雇の効力を争う地位確認請求訴訟の提起は早めに行うこと

 過去にも何度も言及していますが、実務上、古い事件を掘り起こすことは簡単ではありません。

 在職中の労働条件の不利益変更の効力は、時間が経過しても争える場合がありますが、解雇のように従属的な関係を解消させてしまう行為の効力を争おうとする場合、法的措置をとれなかったことについて、何等かの説明が必要になります。ここで何の説明もできないと、

解雇の効力を承認していた、

就労意思がない、

などと、不利益な判断を受ける危険があります。過去には、自然退職の効力が争われた事案で、1年以上に渡って法的措置がとられてこなかったことを理由に就労意思が否定された判決が言い渡された例もあります。

地位確認は早く-1年以上は放置しすぎ - 弁護士 師子角允彬のブログ

 そのため、問題のある解雇がされた場合、直ちに解雇撤回を求めて労務提供の意思があることを通知するとともに、法的措置をとって行くのが原則です。

 しかし、近時公刊された判例集に、解雇撤回を求めてから約1年10か月に渡って使用者側に何の連絡もしなかったという事案で、一定限度ではあるものの就労意思が認められた裁判例が掲載されていました。一昨日、昨日とご紹介している、東京地判令7.3.26労働判例ジャーナル163-50 にし山事件です。

2.にし山事件

 本件で被告になったのは、飲食店の企画及び経営等を目的とする株式会社です。

 原告になったのは、被告と雇用契約を交わしていた方です(令和3年9月1日契約締結)。アルバイトの面接に参加したり、勤務している店舗のインスタグラムへの投稿を行ったりするなどの業務に従事していましたが、被告から合意退職扱いないし解雇されたことを受け、地位確認等を求める訴えを提起したのが本件です。

 本件の特徴の一つに、解雇撤回を求めてから提訴までに要した時間の長さがあります。

 具体的に言うと、本件では、

令和3年9月1日 雇用契約締結

令和3年11月12日 店舗開店

令和3年11月30日 店舗の閉店を理由とする退職勧奨

令和3年12月4日 雇用を継続してもらいたい旨をメールで連絡する

令和4年1月6日 解雇

令和5年10月 本訴提起

という経過が辿られました。

 このような経過を捉え、被告は、

「原告は、本件解雇から1年半以上が経過した令和5年10月の本件訴えの提起まで何らの手続を行わず、放置しており、被告に対する労務提供の意思を喪失していた」

と主張しました。

 しかし、裁判所は、次のとおり述べて、一定の限度ではあるものの、就労意思を認めました。

(裁判所の判断)

「使用者が雇用契約終了を主張し、労務の提供について受領拒絶の意思を明確にしている場合、労働者が労務の提供をすることは不要と解されるが、債権者(使用者)の責めに帰すべき事由によって履行不能といえるためには、労働者に就労の意思及び能力が必要であると解される。なお、原告の勤務状況からすれば、原告には就労能力があると認められる。」

「この点、被告は、原告が令和3年11月30日の時点で、就労の意思を喪失した旨主張するが、前記・・・のとおり、原告は、同日時点で就労の意思を有していたと認められる。」

「しかし、原告が同年12月4日に被告に就労の意思を示した時点では、再就職先が決まるまでは雇用を継続してもらいたいというものであり、長期の就労の意思を示していなかった。原告は、同月23日及び同月28日に被告に対し本件解雇の撤回を求め、同日には,原告訴訟代理人弁護士の氏名を挙げて連絡したものの、それから、約1年10か月後の令和5年10月25日の本件訴訟提起まで被告に雇用関係の存在を前提とする主張をせず、被告に連絡することがなかった(訴え提起に時間を要した理由について、原告は、原告訴訟代理人弁護士が繁忙であったためと供述するが・・・、被告との間に雇用契約が存在することを前提とする行動を採らなかったことの合理的理由とはいえない。)。その間、原告は、令和4年7月1日に別の会社に就職し、その契約内容は有期雇用契約で、本件雇用契約より賃金が低いものであったものの、同月から少なくとも令和6年11月まで同社で勤務し、他方で、本件雇用契約開始から本件解雇までの被告在籍期間が4か月余であり、原告が被告での業務に一定の不満を抱いていたことからすれば、原告は、別の会社への就職から1年が経過した、遅くとも令和5年6月30日時点で被告における就労の意思を喪失したと認めるのが相当である。

「そして、被告が、原告との間で退職合意が成立し、原告の就労意思の喪失がその裏付けである旨主張し、Eも、原告と被告との間で退職合意が成立したとの認識を有し・・・、原告が遅くとも令和5年6月30日時点で被告における就労の意思を喪失したことからすれば、同日、原告と被告との間で黙示の退職合意が成立したと認めるのが相当である。」

「前記・・・によれば、原告の令和3年12月から令和5年6月までの労務の提供の不能は、被告の責めに帰すべき事由によるものと認められるから、民法536条2項に基づき、原告は上記期間の賃金債権を有する。」

3.時間が経って、かつ、他社就労していても就労意思が認められた

 以上のとおり、一定の線引きはしたものの、裁判所は、長期間の経過に加え、他社就労している事実を前提としながらも、原告労働者の就労意思を認めました。

 1年10か月に渡って没交渉期間が続いた後提訴しても就労意思が認められたことは注目に値します。時間が空いたとはいえ、初期段階で雇用の継続を明確に求めていたのが良かったのかも知れません。

 本裁判例は、長期間経過後に解雇の効力を争う事件において、先例として活用して行くことが考えられます。

 




以上の内容はhttps://sskdlawyer.hatenablog.com/entry/2025/11/11/212809より取得しました。
このページはhttp://font.textar.tv/のウェブフォントを使用してます

不具合報告/要望等はこちらへお願いします。
モバイルやる夫Viewer Ver0.14