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懲戒解雇としての解雇事由が解雇通知書記載の事実のみとされた例

1.解雇理由が書かれた文書の位置付け

 当たり前のことですが、解雇されるには何某かの理由があります。解雇理由は解雇を通知する際の文書に記載されていることもあれば、解雇理由証明書の交付(労働基準法22条2項)を求めて文書化されることもあります。

 いずれにせよ、普通解雇の場合、「解雇理由証明書に記載がない解雇理由を主張したからといってその主張が失当となることはない」(佐々木宗啓ほか『類型別 労働関係訴訟の実務Ⅱ』〔青林書院、改訂版、令3〕394頁)と理解されています。

 しかし、懲戒解雇の場合には、話が違ってきます。最一小判平8.9.26労働判例708-31山口観光事件が、

「使用者が労働者に対して行う懲戒は、労働者の企業秩序違反行為を理由として、一種の秩序罰を課するものであるから、具体的な懲戒の適否は、その理由とされた非違行為との関係において判断されるべきものである。」

と判示しているとおり、懲戒処分の可否は「理由とされた非違行為との関係」に置いて判断されます。理由となる非違行為は特定された行為である必要があり、解雇理由(懲戒事由)の記載された書面は、普通解雇の可否が争われる事案とは異なる証拠価値を持ってきます。近時公刊された判例集にも、そのことが分かる裁判例が掲載されていました。一昨日、昨日とご紹介している、東京地判令7.3.13労働判例ジャーナル162-30 コロナワークス事件です。

2.コロナワークス事件

 本件で被告になったのは、コンピュータソフトウェアの企画、開発、販売、保守等を目的とする株式会社です。

 原告になったのは、被告との間で期間の定めのない労働契約を締結し、ソフトウェア開発業務に従事していた方です。懲戒解雇とする旨の記載のある通知書を送付されたことを受け、地位の確認等を求める訴えを提起したのが本件です。

 本件では十二の解雇事由が主張されましたが、解雇通知書に記載されていた事実は一つだけでした。

 このような事実関係のもと、裁判所は、次のとおり述べて、懲戒解雇事由は解雇通知書に記載された一事実だけだと判示しました。

(裁判所の判断)

「使用者が労働者に対して行う懲戒は、労働者の企業秩序違反行為を理由として、一種の秩序罰を課するものであるから、具体的な懲戒の適否は、その理由とされた非違行為との関係において判断されるべきものである(最高裁平成8年(オ)第752号同年9月26日第一小法廷判決・裁判集民事180号473頁)。」

「本件においては、本件解雇通知書には、解雇理由として、原告が令和4年9月26日に被告が命じた客先との次期プロジェクトの打合せに出席せず、自らの判断で客先に対して上記プロジェクトへの参加を断ったという事実(本件解雇通知書記載事実)が、本件就業規則64条20号、22号に該当することは明らかであるとの記載があるのみで、他の事実については記載がないこと、被告の主張する解雇事由は別紙1「解雇事由等一覧」のとおり、業務遂行能力を問題とするもの、勤務態度を問題とするもの、業務命令違反を問題とするもの等多岐に及んでおり、本件解雇通知書記載事実を挙げれば、他の事実もこれに包含されるものということもできないこと、被告が本件解雇通知書記載事実以外の事実も解雇事由とするのであれば、これらを本件解雇通知書に記載しない理由はないこと等に照らせば、本件解雇の懲戒解雇としての解雇事由は本件解雇通知書記載事実のみであり、当該事実は、解雇事由1に相当するものと認められる。

「そして、下記(2)で説示するとおり、解雇事由1は、これのみをもって、直ちに懲戒解雇により本件労働契約を終了させなければならない程度の事由ということはできず、下記(3)~(12)で説示するとおり、解雇事由2~12に係る事実について、情状を基礎付ける事情として考慮したとしても、本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないから、懲戒解雇として無効というほかない。」

3.解雇の種別に注意

 解雇理由証明書の記載が失権(記載されていない事実が後に訴訟で主張できなくなるという効果)に繋がらないことは、比較的有名な話です。

 しかし、これは飽くまでも普通解雇との関係です。以前にも解雇通知書に記載されていない事実が懲戒事由とはされなかった事案はありますが、

懲戒解雇の場面における解雇理由証明書の活用方法 - 弁護士 師子角允彬のブログ

具体的な行為の特定が必要とされる懲戒解雇においては、書面に記載された解雇事由が懲戒事由として固定的に理解されます。

 解雇事由そのものか情状事実かの区別は結構重要です。なぜなら、解雇事由が認められないのに、情状だけで処罰(懲戒解雇)できるはずもないからです。それは、刑事裁判で、要となる罪を犯していないにもかかわらず、情状が悪いことを理由に処罰されることがないことを想像すれば分かり易いのではないかと思います。

 このように普通解雇と懲戒解雇とでは防御の仕方や書証の証拠価値が変わってくることもあるので注意が必要です。

 




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