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パワハラの場合にも「関係の悪化を避けるために、友好的案関係を築こうとすること」が不自然ではないとされた例

1.セクシュアルハラスメントと迎合的言動

 最一小判平27.2.26労働判例1109-5L館事件は、セクシュアルハラスメントの被害者心理について、

「職場におけるセクハラ行為については、被害者が内心でこれに著しい不快感や嫌悪感等を抱きながらも、職場の人間関係の悪化等を懸念して、加害者に対する抗議や抵抗ないし会社に対する被害の申告を差し控えたりちゅうちょしたりすることが少なくないと考えられる」

との経験則を示しました。

 L館事件の最高裁判決以降、

性的行為に同意があった、

本当にセクハラ行為があったのであれば、その時に申告されていないのはおかしい、

といった主張は極めて通りにくくなっています。

 それでは、パワハラの場合はどうでしょうか?

 パワハラとセクハラには同じくハラスメントとして類似点も多いのですが、被害者が性的羞恥心を感じるかどうかという点は異なります。上司と性的な関係にあると噂されることは、好奇の目で見られるおそれがあるため、申告行為自体を控えることに繋がり勝ちです。しかし、上司からいじめられていることが明らかになったところで、同情の目で見られることはあっても、好奇の目で見られることはありません。もちろん、いじめられていることが周囲に知られることは自尊心を損なうでしょうが、性関係を噂される類の苦痛とは質的に異なるように思います。

 このL館事件で示された経験則がパワハラ事案にも応用が利くものなのかは、常々、気になっていたのですが、近時公刊された判例集に、この問題を考えるにあたり参考になる裁判例が掲載されていました。昨日もご紹介した、横浜地判令7.3.25労働判例ジャーナル162-28 損害賠償等請求事件です。

2.損害賠償等請求事件

 本件で被告になったのは、横浜市で法律事務所を経営する弁護士2名(父・被告A、子・被告B)です。

 原告になったのは、昭和50年生まれの女性で、被告らが経営する法律事務所で事務員として就労していた方です。休職期間満了を理由に解雇されたことを受け、地位確認と共にハラスメントを理由とする損害賠償を請求したのが本件です。

 原告が主張したハラスメントには、セクシュアルハラスメントのほか、暴言や暴行といったパワーハラスメントも含まれていました。

 本件の被告は、暴言や暴行が行われたことを否認しましたが、裁判所は、暴言や暴行の事実を認定したうえ、次のとおり述べて、被告の主張を排斥しました。

(裁判所の判断)

「被告らは、原告が主張するような暴力が平均して月に3回から4回も行われていたのであれば、本件事務所の他の職員が気付かないはずがないが、本件が問題となるまで、そのようなことを本件事務所の他の職員が問題としたことは一度もなかったとして、被告Aの原告に対する暴行が存在しなかったことを主張する。」

「しかし、被告Aの暴行態様は、殴打時に打撃音が発生するようなものとまでは認められないし、原告の供述によれば暴行を受けた場所はパーティションによって仕切られている被告Aの自席であったというのである以上、本件事務所の他の職員がそのような事態に気付かないことがあり得ないものとはいえない。そもそも、被告Aの暴行について、E弁護士や被告Bは知らなかった旨それぞれ証言し、供述するが、その他の職員が誰も気付かなかったとまで認めるに足りる証拠もない。被告らの上記主張は採用できない。」

「また、被告Aは、原告と被告Aは、原告の子供も含めて一緒に食事に行くなどの交流をしたり、書籍を紹介しあったり、原告が自ら音頭をとって、平成30年9月には、被告Aの傘寿の祝いをしたり、交際関係にあったF氏との関係を話すなど、互いに信頼関係を基にした関係であり、原告が主張するような被告Aによる暴言や暴力などのパワーハラスメントやセクシャルハラスメントは存在しないと主張する。

しかし、原告と被告Aは、使用者と労働者、弁護士と事務員という関係であり、原告が被告Aとの関係の悪化を避けるために、友好的な関係を築こうとすること自体、不自然ではないから、被告Aの指摘することは、被告Aによるパワーハラスメントやセクシャルハラスメントを否定する根拠とすることはできない。

3.セクハラとの混合型の事案ではあるが・・・

 上述のとおり、裁判所は、暴言や暴行などのパワーハラスメントとの関係でも、使用者との関係の悪化を避けるため、友好的な関係を築こうとすることは不自然ではないとの経験則を示しました。

 本件はセクハラとの混合型の事案であり、パワハラのみが問題になった事案ではありませんが、L館事件最高裁判例の趣旨をパワハラにも及ぼした裁判例として、実務上参考になります。

 




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