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条例に基づく割増賃金の計算方法が、労働基準法に反しているとされた例

1.法律と条令の関係

 憲法94条は、

「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる」

と規定しています。

 つまり、法律と条令とでは法律の方が優先する関係にあり、条例は法律に適合する形で定められなければなりません。

 地方公務員法24条5項は、

「職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める」

と規定していますが、この職員の給与や勤務時間その他勤務条件を定める条例も、労働基準法をはじめとする法律に適合したものでなければなりません。

 しかし、近時公刊された判例集に、地方公共団体が定めた条例に基づく割増賃金(いわゆる残業代)の計算方法が、労働基準法のに反していると判断された裁判例が掲載されていました。さいたま地判令7.5.16労働判例ジャーナル162-14 幸手市事件です。

2.幸手市事件

 本件はいわゆる残業代請求事件です。

 被告になったのは、普通地方公共団体である幸手市です。

 原告になったのは、幸手市の職員の方です。

 本件には幾つかの争点がありますが、その中の一つに、割増賃金(残業代)を計算するにあたっての時間単価の計算方法がありました。

 幸手市職員の給与に関する条例16条2項は、時間単価の計算方法について、

「第13条から第15条までに規定する勤務1時間当たりの給与額は、給料の月額及びこれに対する地域手当の月額の合計額に12を乗じ、その額を1週間当たりの勤務時間に52を乗じたものから規則で定める時間を減じたもので除して得た額とする。ただし、再任用短時間勤務職員の勤務1時間当たりの給与額は、その者と同じ職務の級に在級する再任用職員のうち、再任用短時間勤務職員以外の者について本項の規定に基づいて算定される勤務1時間当たりの給与額と同じ額とする」

と規定しています。

 読みにくい条文ですが、「給料の月額及びこれに対する地域手当の月額」が算定基礎賃金となることが定められています。

 しかし、幸手市職員の中には、

「著しく危険、不快、不健康又は困難な勤務その他の著しく特殊な勤務で給与上特別の考慮を必要とし、かつ、その特殊性を給料で考慮することが適当でないと認められるものに従事する職員には、その勤務の特殊性に応じて特殊勤務手当を支給する」

という規定(幸手市職員の給与に関する条例11条1項)に基づいて特殊勤務手当が支給されている方がいました。

 本件では、この特殊勤務手当を算定基礎賃金から除外することが許容されるのかが問題になりました。なぜなら、労働基準法上、算定基礎賃金から除外できるのは、

家族手当及び通勤手当

別居手当

子女教育手当

住宅手当

臨時に支払われた賃金

一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金

に限定列挙されているからです(労働基準法37条5項、労働基準法施行規則21条)。

 特殊勤務手当はこのどれにも該当しないのだから、これを算定基礎賃金から除外して残業代を計算することは許されないのではないかというのが原告の主張の骨子です。

 これに対し、被告は「臨時に支払われた賃金」に該当するという主張を展開しましたが、裁判所は、次のとおり述べて、被告の主張を排斥しました。

(裁判所の判断)

「地方公務員法58条3項、4条1項によれば、地方公務員の一般職に対しては労働基準法37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)が適用される。」

割増算定基礎除外賃金に係る労働基準法施行規則21条4号の定める『臨時に支払われた賃金』とは、臨時的、突発的事由に基づいて支払われたもの及び結婚手当等支給条件はあらかじめ確定されているが、支給事由の発生が不確定であり、かつ、非常に稀に発生するものをいう(昭22年9月13日発基17号・・・参照)。そして、幸手市職員の特殊勤務手当に関する条例によれば、原告が支給を受けていた特殊勤務手当(社会福祉保健業務手当と解される。)は、生活保護業務に従事したときに支給されるものであるところ、生活保護業務への従事は、当該業務を扱う部署に所属する限りは継続することが予定されており、原告が支給を受けていた特殊勤務手当は、臨時的突発的事由に基づいて支払われたものとも支給事由の発生が不確定ともいえないから、『臨時に支払われた賃金』に当たるとはいえず、割増賃金の基礎となる賃金に含まれる。原告の請求期間における割増賃金の基礎となる賃金は、給料、地域手当及び特殊勤務手当であり、月額22万8780円である。

「そして、幸手市職員の給料等の支給に関する規則第21条2項の定める日数は、原告の請求期間である令和2年4月1日から翌年3月31日までの間において18日と認められるところ・・・、給与条例16条2項、上記規則21条2項によれば、割増賃金の計算の基礎となる賃金単価は、次の計算式により1464円である(別紙5単価・既払金計算書参照)。

(計算式)

月額22万8780円×12÷(1日当たり7.75時間×5日×52-18日×1日当たり7.75時間)」

3.条例だから正しいというわけでもない

 条例というと法律に準じるような厳格な検討のうえで作られているというイメージがあるように思います。

 しかし、本件のように法適合性を意識せず(どう善解しても特殊勤務手当が「臨時に支払われた賃金」に該当するというのは無理があるように思います)、労働基準法に反した計算方法が採用されている例もあります。

 自分の残業代の計算方法に違和感のある地方公務員の方は、一度、弁護士に相談してみても良いように思います。

 




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