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歩合制の配送業務従事者に労働者性が認められた例

1.配送ドライバーの労働者性

 配送業務では、しばしば、大手運送会社⇒中小運送事業者⇒個々の配送事業者(個人事業主)という形の多重請負構造がみられます。

 この多重請負構造の末端にいる個々の配送事業者は、業務委託契約のもとで働いている個人事業主(フリーランス)であることが多く、しばしば過酷な環境のもとで働いています。この過酷さから生じる問題に対処するため、労働者性を主張し、労働関係法令の適用を主張することは古くから試みられてきました。

 しかし、そうした試みは、必ずしも成功してきたとはいえません。

 労働者性を主張、立証するうえでの主なハードルは二点あります。

 一つ目は、配送ルートの問題です。

 配送受託者は基本的に配送ルートの細かな指示はしません。それは自動車に組み込まれているナビゲーションシステムに従えば最適ルートで配送できるからだと思われます。しかし、裁判例の中には、細かな指示が出されていないことをもって、業務上の指揮監督を否定する方向の事情として考慮するものがあります。

 二つ目は、報酬の問題です。

 全部の荷物を配送しようとすると一日中かかる例が少なくないものの、大抵の配送事業者は1個〇円という完全歩合制で報酬を受け取っています。これは報酬の労務対償性を否定する方向に働きます。

 しかし、近時公刊された判例集に、歩合制の配送事業者に労働者性が認められた裁判例が掲載されていました。大阪地判令7.4.25労働判例ジャーナル162-18 UTS事件です。

2.UTS事件

 本件で被告になったのは、

貨物軽自動車運送事業等を業とする合同会社(被告会社)

被告会社の代表社員(被告b)

の二名です。

 原告になったのは、被告との間で荷物の配送業務を受託する契約(本件契約)を交わしていた方です。本件契約上、報酬は配送1件あたり150円で、業務時間は午前9時~午後9時と定められていました。本件契約が労働契約であると主張し、未払歩合給や未払割増賃金の支払を求める訴えを提起したのが本件です。

 本件では原告の労働者性(原告と被告との契約の労働契約該当性)が争点になりましたが、裁判所は、次のとおり述べて、原告の労働者性を認めました。

(裁判所の判断)

・判断枠組み

「労働基準法や労働契約法の適用対象となる労働者か否かは、労働が使用者の指揮監督下において行われているか否かという労務提供の形態と報酬が提供された労務に対するものであるか否かという報酬の労務対償性(以下、併せて『使用従属性』という。)によって判断するのが相当である。そして、使用従属性については、当事者間で締結された契約の形式にかかわらず、実態としての労務提供の形態や報酬の労務対償性及びこれらに関連する諸要素を総合考慮して、実質的に判断するのが相当である。」

「具体的には、労務提供の形態については、具体的な仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無、業務遂行上の指揮監督の有無、場所的・時間的拘束性の有無、労務提供の代替性の有無等に照らして判断し、報酬の労務対償性については、報酬が一定時間労務を提供していることに対する対価であるか等に照らして判断するのが相当である。このほか、労働者性に関連する諸要素として、事業者性の有無(機械・器具の負担関係、報酬の額等)、専属性の程度その他の事情をも勘案して総合判断するのが相当である。」

・検討

「上記認定事実によれば、原告は、本件契約締結当時、学生であり、配送業務について全くの未経験者であったところ、被告会社から配送業務に使用する軽貨物自動車を貸与され、これを利用して配送業務に従事していたのであるから、自己の所有する車を持ち込んで運送業務に従事する者とは異なり、一概に自己の危険と計算の下に業務に従事していたということはできない。そして、本件契約において、原告は、被告会社が作成した勤務シフトに従って、被告会社が指定したcの営業所の配送業務に従事していたのであるから、仕事の依頼や業務従事の指示に対する諾否の自由はなかったと認められる。また、原告は、指定された担当のエリア・コース内を巡回して荷物を配送していたほか、被告会社の指示により、配送業務の前後に、荷物の仕分け作業や未配送の荷物を倉庫に戻し、その日の配送個数等の報告する作業を行っていたのであるから、被告会社から業務中に個別具体的な業務上の指揮命令を受けていなかったとしても、業務遂行に関する裁量はほとんどなく、時間的、場所的な拘束の程度も相当程度強いということができる。

他方、本件契約において、報酬は配送件数に応じて算定されるものとされ、労務提供の時間に応じて算定されるものとはされていないが、配送件数と被告会社の売上は比例しており、本件契約における報酬額の合意は売上に応じた歩合給の合意とみることも可能である上、原告とf氏との間で報酬を給与と呼称したラインのやりとりがされていることも加味すると、本件契約における報酬の定め方をもって、報酬の労務対償性が否定されるということはできない。

「これらの諸事情を総合考慮すると、原告は被告会社の指揮監督の下で労務を提供し、報酬は労務提供に対するものであったと評価されるから、本件契約は労働契約としての法的性質を有するものと認められる。」

3.労働者性の肯定例

 配送業務に従事している個人事業主の方は、運送事業者の斡旋のもとでトラック(貨物自動車)を(ローンで)買っている方も少なくありません。この裁判例は、そうした事案にまで妥当するわけではありません。

 しかし、裁判所が配送業務従事者の労働者性を肯定したことは注目に値します。

 特に、業務上の指揮命令、報酬の労務対償性が肯定されたことは重要で、同種事案の処理に取り組むにあたり、裁判所の判断は実務上参考になります。

 




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