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条件付採用期間に病気になったらどうすべきか?

1.条件付採用

 地方公務員法22条本文は、

「職員の採用は、全て条件付のものとし、当該職員がその職において六月を勤務し、その間その職務を良好な成績で遂行したときに正式採用になるものとする。」

と規定しています。

 国家公務員法にも

「職員の採用及び昇任は、職員であつた者又はこれに準ずる者のうち、人事院規則で定める者を採用する場合その他人事院規則で定める場合を除き、条件付のものとし、職員が、その官職において六月の期間・・・を勤務し、その間その職務を良好な成績で遂行したときに、正式のものとなるものとする。」

という同趣旨の規定があります(国家公務員法59条)。

 これは民間でいう試用期間のようなものです。ただ、民間でいう試用期間が解雇権濫用法理(労働契約法16条)のもと、その適法性を厳格に審査されるのに対し、条件付採用職員(条件付任用職員)に対する分限免職処分(懲戒事由に該当するような悪いことをしているわけではなくても職務適格性がないことをなどを理由に免職処分を行うこと)は、基本的にその有効性が認められるという違いがあります。要するに、条件付採用職員や条件付任用職員に対する分限免職処分は、滅多なことでは無効にならないということです。

 近時公刊された判例集にも、条件付採用職員に対する免職処分の取消請求が棄却された裁判例が掲載されていました。東京地判令6.12.23労働経済判例速報2586-24 渋谷区事件です。

2.渋谷区事件

 本件で原告になったのは、消防士や消防副士長としての勤務を経た後、被告渋谷区に経験者採用された方です。健康推進部地域保健課(地域保健課)での勤務を命じられたものの、条件付採用期間中の勤務成績不良や心身の故障を理由に免職処分を受けました。これに対し、免職処分の取消を求める訴えを提起しました。

 本件で特徴的だと思われたのは、勤務期間中、「仕事が続けられるのかという不安が絶えず、死にたくなる」などと訴えていた原告に対し、上長が「すぐに辞めさせることはないので安心して療養に専念してほしい」などと発言していたことです。

 このような経緯を考えると、心身の故障を免職事由に含ませるのは酷であるようにも思われるのですが、裁判所は、次のとおり述べて、原告の請求を棄却しました。

(裁判所の判断)

「原告は、7月1日、P5主査に対し、q2病院を受診して『うつ病』との診断を受けたことを報告し、業務を多く処理できない状況が続き思考力が低下しており、別の部署に異動したいなどと相談した。これに対し、P5主査は、年度途中の異動は人手不足の部署に配属される可能性があるリスクがあることから休職をして早く治したほうがよいとアドバイスをした・・・。」

「同月4日、P7保健師及びP6課長が原告と面談したところ、原告は、主治医から休職も勧められたが、金銭面と休職したら復帰できないのではないかという点に心配があること、仕事が続けられるのかという不安が絶えず、死にたくなることなどを訴えた。これを受けて、P7保健師は、原告に対し、病気休暇を取得して療養が必要である旨伝え、P6課長からも、今すぐ休んで療養に専念する必要があること、すぐに辞めさせることはないので安心して療養に専念してほしいこと、病気休暇中の90日間は給料が支払われることなどを伝えた。これに対し、原告が、どうしていいかわからない旨回答したことから、原告の了承を得た上で、同人の通院先であるq2病院に連絡し、同月7日に受診してもらうこととし、受診までの間は年次有給休暇を取得の上、自宅療養することとなった。・・・」

「原告は、同月7日、q2病院を受診し、P7保健師に対し、自身の症状や翌日から医療保護入院することについて電話で報告した・・・。」

「原告は、同月8日、q2病院に医療保護入院した。」

(中略)

「原告は、q2病院のP11医師(以下『P11医師』という。)から許可を受け、9月30日にq2病院を退院した。」

「P11医師は、同日付けの診断書において、原告に抑うつ気分、不安感等の症状が認められ、10月31日まで休養加療を要し、就業再開に際しては当面は平日のみの勤務、短時間勤務等の配慮を行うことが望ましいと診断される旨の意見を付した・・・。」

原告は、10月4日、P10健康管理係長、P7保健師及びP5主査と復職に向けて面談し、服薬治療等によりある程度改善したが復帰してみないとわからないこと、同月17日から復帰したいこと、復帰にあたっては土日の勤務を免除してほしいことなどを伝えた。P10健康管理係長からは、原告に対し、同月6日以降に病気休暇を取得した場合は無給となること、条件付採用の評価期間が延長されたこと等を伝えた・・・。」

「また、原告は、P5主査と復帰後の体制について面談し、原告が同月6日から同月14日までは夏季休暇と年次有給休暇を取得し、同月17日に復帰してからは午前8時30分から午後5時15分までのフルタイム勤務とすること、当面休日勤務に従事しないこと、原告自身が判断する業務をしないこと、指示を出す職員を限定することなどを確認した。

(中略)

「本件処分が合理性を有するものとして許容される限度を超えた不当なものであり、任命権者の裁量権の範囲を逸脱するものであるか否かについて検討する(なお、原告は、被告が原告の条件付採用期間満了日までに原告に対して期間の延長に係る処分をしていないから10月1日に自動的に正式採用となっている旨主張するが、期間延長規則2条1項の規定ぶりからすれば、同項の条件を満たす場合には、特段の処分行為なく当然に条件付採用期間が延長されるものと解されるから、原告の上記主張は採用できない。)」

「前記・・・のとおり、原告が自宅療養証明書に係る業務に従事するようになった4、5月は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあって同証明書の発行総数も多く、業務に携わったばかりの者にとっては、それなりに量的負荷のかかる状況であったものといえる。しかし、前記・・・のとおり、原告の配属先であるコロナウイルス対策担当は令和4年度に新設された部署ではあるものの、別の部署において令和3年度から実施されていた業務を引き継いでおり、当該業務の手順や方法に係るノウハウをもとにマニュアルや人的体制が整備されるなど、当該業務の処理体制が相当程度確立していたといえること、原告に最終的な判断を求められる業務というものではなかったこと、原告の超過勤務の状況等からすれば、原告の負荷が過度なものであったとは認められない。」

「そして、上記のように自宅療養証明書の発行総数が多くなっていた状況において、経験者枠で採用された原告については、マニュアル等を踏まえつつ、多数の自宅療養証明書の迅速な処理を自ら進めていくことが期待されていたといえるが、マニュアルの根拠となった通知の確認に時間を割くことから、事務処理を滞らせてしまうなど、コロナウイルス対策担当の職員として、状況に応じた適切な職務遂行をすることができていなかったといえる。」

また、10月以降の休日出勤の要請については、他の職員と一緒に休日出勤をして業務に徐々に慣れてからと伝えられていたものの、消極的な態度であった。

「原告は、10月17日に復職してからは、前記・・・のとおり、他の職員らのサポートを受けながら、病気休暇前に従事していたものよりも限定的で軽度な業務に従事することとなったが、このような配慮の下でも、指示された供覧業務を失念したり、単純なデータ入力においても誤字があったりしたほか、文書の封入作業だけでも他の職員のフォローなくしては十分に業務をこなせず、かえって他の職員の作業負担を増加させるなど、コロナウイルス対策担当の職員としての職務を全うできない状態であった。」

「以上のような原告の復職前後の業務遂行状況に照らすと、本件処分時点において、被告が原告について被告の職員として通常求められる能力や適格性を欠いていたとし、本件評価票において『不良』と評価したことが不当なものであったということはできない。」

「また、前記・・・のとおり、6月下旬には、体調不良や希死念慮が出現して業務に支障をきたすようになり、上司らとの面談を重ねた後、病気休暇を取得して医療保護入院にまで至っているところ、このような状態にまで陥ったのは、原告自身も述べるとおり・・・、令和3年12月以降、自己判断で通院や服薬を中止したこともあって、精神状態が悪化したことに大きな原因があると考えられる。そして、原告の退院時に、P11医師が、抑うつ気分及び不安感の症状が認められ、約1か月の休業加療を要し、復帰後も平日短時間勤務の配慮が望ましいと診断していたこと・・・や復職後の職務遂行状況・・・からすると,本件処分の後に医療保護入院先とは別のクリニックにおいてうつ病の回復の状態にある旨の診断を受けていることを踏まえても、被告が原告について、本件処分の時点で、心身の故障があることにより職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えられないと判断したことが不当であるとはいえない。

(中略)

「以上によれば、被告が、勤務成績不良及び心身の故障を理由として原告を正式採用しなかったことが、裁量権の行使として合理性を有するものとして許容される限度を超えた不当なものであり、任命権者の裁量権の範囲を逸脱したものであるということはできない。」

3.条件付採用期間中に病気になったらどうすべきか?

 条件付採用期間中に精神疾患を発症した場合にどのように対処するのかは難しい問題です。無理をすると健康を損なう危険があります。しかし、職場に配慮を求めすぎると正式任用に耐えないという判断を誘発する危険があります。

 ただ、何事も命あっての物種であり、基本的には療養を優先するのが適切ではないかと思います。裁判所も心身の故障との関係では、自己判断で通院や服薬を中止したことを重視しているようにも見えます。

 上司が何というのか、また、上司の発言を信用できるかはさておき、個人的には、病気になったら療養に専念した方が良いのではないかと思います。それで免職になったら、それはそれで仕方がないと開き直った方が、自己判断で通院や服薬を中止するよりも、法的に良い結果に結びつくかもしれません。

 




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