以下の内容はhttps://sskdlawyer.hatenablog.com/entry/2025/07/27/160455より取得しました。


パワハラ、退職勧奨が違法でなかったとしても、代理人弁護士を介して交渉中、唐突に懲戒解雇することが否定された例

1.欠勤中に行われるハラスメント解決のための代理人弁護士を通じた協議

 ハラスメントで心身に不調が生じた労働者を代理して、弁護士が勤務先と職場環境の調整に向けた交渉を行うことは少なくありません。労働者が出勤できる健康状態ではなくなっていると、交渉は本人欠勤のもとで行われます。

 この時、ハラスメント存否について職場と共通認識を持てれば良いのですが、労働者がハラスメントの存在を主張するのに対し、使用者側でこれを否定するといったように、共通認識を持てない場合、交渉が長期化・膠着することがあります。

 見解の相違が埋まらない場合、ハラスメントの成否や使用者側の職場環境配慮義務/職場環境調整義務の存否は、裁判所の判断を仰ぐことで決着をつけることになります。

 それでは、本人欠勤のもとでハラスメントの成否をめぐる交渉が膠着した場合、勤務先は正当な理由なき不出勤を理由に当該労働者を懲戒解雇することができるのでしょうか? 裁判所の判断を仰いだ結果、ハラスメントが否定されてしまった場合、労働者は懲戒解雇の効力を甘受せざるを得ないのでしょうか?

 この問題を感がるうえで参考になる裁判例が、近時公刊された判例集に掲載されていました。昨日もご紹介した、大阪地判令7.2.14労働判例ジャーナル160-56 学校法人池峯学園事件です。

2.学校法人池峯学園事件

 本件で被告になったのは、

幼稚園(本件幼稚園)を運営する学校法人(被告法人)

被告法人の理事長(被告B)

原告の同僚である幼稚園教諭2名(被告C、被告D)

の1法人3名です。

 原告になったのは、本件幼稚園で幼稚園教諭として勤務していた方です。

 被告法人から懲戒解雇されたことを受け、その無効を主張して地位確認等を請求するとともに、被告Cと被告Dによるパワーハラスメント・被告Bによる退職強要を理由に損害賠償を請求する訴えを提起したのが本件です。

 本件で解雇通知書に記載されていた懲戒解雇事由は、

長期間にわたる欠勤行為等

でした。

 これは令和3年11月9日に退職勧奨を受けた後、原告が嘔吐や頭痛の症状があることを伝えたうえ、令和3年11月10日以降欠勤していたことを指しています。

 原告の方は令和3年11月17日に代理人弁護士を通じてパワハラや退職強要を主張する内容の連絡を行い、その後、双方の代理人弁護士の間で協議が行われていました。

 このような経過のもと、令和4年2月24日付で被告から解雇通知書が送付されたという流れが辿られています。

 本件の裁判所は、原告が主張したパワハラや退職勧奨(退職強要)の違法性が否定しつつ、次のとおり述べて、懲戒解雇の効力を否定しました。

(裁判所の判断)

「原告は、令和3年11月10日から欠勤し、同日、被告Cに対し、LINEにより、欠勤により迷惑をかけたことを謝罪するとともに、嘔吐や頭痛の症状があることを伝えた。また、原告は、同日頃、被告法人に対して、母を通じて、被告Bの言動を受けて出勤できない状況であることを連絡した。」

「原告は、同月17日、被告法人に対し、原告代理人を通じてパワハラ及び退職強要について主張する内容の連絡を行い、その後、双方の代理人弁護士を通じて問題の解決に向けた協議が行われた。同日以後、本件解雇までの間に、被告法人から、原告に対し、診断書の提出や欠勤予定日数の申告をするよう求めたことはなく、懲戒処分を行うことの警告を行ったこともない。」

(中略)

「被告C及び被告Dによる働きかけは、社会通念に照らし、業務上の必要性がなかったものとはいえないし、その態様が許容される範囲を超える不相当なものであったともいえない。よって、被告C及び被告Dの行為が不法行為を構成するものとは認められない。」(被告C、被告Dによるパワーハラスメントの否定 括弧内筆者)

(中略)

「本件面談における被告Bによる働きかけは、退職勧奨のための行為として社会通念上相当と認められる範囲を逸脱するものとはいえず、不法行為を構成するものとは認められない。」(被告Bによる退職勧奨の違法性否定 括弧内筆者)

(中略)

「原告は、令和3年11月10日以降出勤せず、被告法人が本件解雇の意思表示をした令和4年2月24日までの間、診断書を提出した事実も、欠勤期間について告げることもなかったことが認められる・・・。」

「もっとも、原告は、令和3年11月10日頃には母を通じて被告法人に対して出勤できないことを伝えた上、同月17日には代理人を通じてパワハラ及び退職強要について不服を伝え、その後、原告及び被告法人は、代理人間で解決のための交渉を行っていたことが認められ、その間、被告法人から、原告に対して出勤を求めたり、診断書を提出するよう求めたりしたことはなかったことが認められる・・・ほか、被告法人が原告に対して欠勤のための所定の手続を促したこともうかがわれない。

かかる経緯を踏まえると、原告が診断書を提出せず欠勤期間も告げなかったことは、原告と被告法人との交渉によりそのような状況が生じたものというべきであり、かかる事由をもって、被告法人主張の懲戒事由に該当すると認めることはできない。

(中略)

「以上によれば、本件解雇は懲戒事由に該当する事由がないから、有効と認められない。」

3.唐突型解雇にどう立ち向かうか

 本件事案で使用者側がどのような思考過程のもとで解雇に踏み切ったのか、解雇の中でもなぜ普通解雇ではなく懲戒解雇を選択したのかは良く分かりません。

 しかし、懲戒解雇かどうかはともかく、交渉中、唐突に普通解雇を通知されるということはそれなりにあります。なぜ、唐突に解雇するのかというと、診断書を出して休職手続をとるように求めたり、出勤を命じたりして、労働者側に対応されるとクビに出来なくなってしまうからです。

 ハラスメントが違法だと判断される可能性が濃厚である場合は使用者側も慎重になります。しかし、ハラスメントが違法だとはいえなそうな事案、あるいは違法か適法か微妙な事案では、

ハラスメントなしという判断が得られるはず⇒ならば、労働者の欠勤は正当な理由なき不出勤にあたる⇒労務提供義務という労働契約における本質的義務の不履行なのだから裁判所もきっと解雇の効力を認めてくれるだろう、

という見切りのもと、労働者を排除すべく思い切った措置に出ることがあります。

 普通解雇の場合どうなのか、診断書提出命令、出勤命令が前置されていた場合にどうなのかという問題は残りますが、本裁判例は、ハラスメントをめぐる交渉継続中の労働者の欠勤を理由に唐突に懲戒解雇を飛ばすことを否定した点で、実務上参考になります。




以上の内容はhttps://sskdlawyer.hatenablog.com/entry/2025/07/27/160455より取得しました。
このページはhttp://font.textar.tv/のウェブフォントを使用してます

不具合報告/要望等はこちらへお願いします。
モバイルやる夫Viewer Ver0.14