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条件付採用(条件附採用)期間の延長が違法であった場合、それを前提とする免職処分は違法になるのか?

1.行政法理論における違法性の承継

 行政法における論点の一つに「違法性の承継」という議論があります。

 これは「行政過程が複数の処分によって構成され、先行処分を前提として後行処分が行われる場合に、後行処分の取消訴訟において『先行処分が違法であるから、それを前提とする後行処分も違法である』という主張ができるか」という問題です(中原茂樹『基本行政法』〔日本評論社、第4版、令6〕375頁参照)。

 幾つかの場面では認められているものの、違法性の承継は否定されるのが原則です。もし、後行処分で先行処分の違法性を争うことができるとなると、行政過程が不安定になりすぎるからです。したがって、先行処分の違法性は先行処分との関係で争っておく必要があります。行政処分の取消訴訟には6か月の出訴期間制限があり(行政事件訴訟法14条1項)、先行処分の違法性は先行処分から6か月以内に問題提起してしまうのが基本になります。

 ここで一つ問題があります。

 公務員の条件付採用期間が延長された場合、延長が違法であることを、延長後の期間満了時の免職処分の違法事由として主張できるのかという問題です。

 条件付採用(条件附採用)とは民間で言うところの試用期間に相当するもので、期間中の職務を良好な成績で遂行すると正式任用されるとする仕組みです(国家公務員法59条、地方公務員法22条)。民間で試用期間が延長されるのと同様、条件付採用期間も伸びることがあります。伸びた後、成績が良好でなければ正式任用とはならず免職されるわけですが、この免職処分の効力を争うにあたり、条件付採用期間の延長の違法事由を主張することは許されるのでしょうか?

 この問題を考えるにあたり参考になる裁判例が、近時公刊された判例集に掲載されていました。大阪地判令7.1.22労働判例ジャーナル159-52 羽曳野市事件です。

2.羽曳野市事件

 本件で原告になったのは、羽曳野市職員の方です。

 令和4年4月1日、同年9月30日までの条件付き採用を受けたところ、この型は、令和5年3月31日まで条件付採用期間を延長されました(本件延長処分)。

 その後、令和5年5月31日付で免職処分(本件免職処分)とされたことを受け、その違法無効を主張して取消訴訟を提起したのが本件です。

 本件の原告は、

本件延長処分は違法である、

ゆえに、これを前提とする本件免職処分も違法である、

というものでした。

 この事案で、裁判所は、次のとおり述べて、本件延長処分が違法であることを理由に、本件免職処分を取消しました。

(裁判所の判断)

「いかなる場合に任命権者である被告の市長により、条件付採用の期間を1年に至るまで延長することができるかについて検討する。」

「地公法22条(改正前地公法22条1項)の条件付採用制度の趣旨及び目的は、職員の採用に当たり行われる競争試験又は選考の方法が、なお、職務を遂行する能力を完全に実証するとはいい難いことに鑑み、試験等により一旦採用された職員の中に適格性を欠く者があるとき、その排除を容易にし、もって、職員の採用を能力の実証に基づいて行うとの成績主義の原則(同法15条参照)を貫徹しようとすることにあると解される。」

「もっとも、6月の条件付採用により能力の実証ができない場合には、条件付採用の期間を延長する必要があるが、これを漠然と延長することは、正式採用になるとの期待に反し、職員の身分関係を不安定なものにするから、能力の実証を実地に得るために必要かつ合理的な理由がある場合に限り、上記期間の延長が認められると解するのが相当である。すなわち、本件規則18条は、『地公法22条1項後段に定める場合』のほか、90日未満要件を設けて実際に勤務した日数が90日に達するまでその条件付採用の期間の延長を認める旨を定めるところ、6月の半分の90日に満たない勤務日数しかないときには能力の実証ができないことから、90日に達するまで上記期間の延長を認めるものと解することができるところ、『地公法22条1項後段に定める場合』についても、90日未満要件と同様に能力の実証ができないなど必要かつ合理的な理由がある場合に限り認められると解するのが相当である。」

「そして、条件付採用の期間延長は、条件付採用期間中の職員に対する分限処分そのものではないが、条件付採用期間の満了後に直ちには正式採用がされないものであるという点で、分限処分に準ずるものであるから、任命権者に裁量権が認められるところ、その判断が、必要かつ合理的な理由がないにもかかわらずにされたなど、合理性をもつものとして許容される限度を超えた不当なものであるときは、任命権者の裁量権の行使を誤った違法なものと解するのが相当である(条件付採用期間中の国家公務員の一般職に属する職員に対する分限処分に関する最高裁判所昭和49年12月17日第三小法廷判決・裁判集民事113号629頁参照)。」

(中略)

「以上より、本件で、原告の勤務態度には不適切なところがあり、その勤務成績も芳しいものとはいえないが、勤務態度及び勤務成績が不良であって、公務員としての適格性を疑われるような事情があるとはいえず、更に能力の実証が必要であるとはいえない。」

「そうすると、本件延長処分について必要かつ合理的な理由を認めることができないから、本件延長処分は、任命権者(処分行政庁)が裁量権の行使を誤った違法なものというべきである。

(中略)

上記・・・で判断したとおり、本件延長処分は違法であるから、10月1日以降の勤務状況を検討するまでもなく、原告は、条件付採用期間が満了した日の翌日である令和4年10月1日から、被告に正式に採用されたこととなる(ただし、10月1日以降の原告の勤務状況等が、別途、分限処分の事由(地公法28条1項)となるかは本件とは別の問題である。)。

したがって,本件延長処分を前提としてなされた本件免職処分は、違法なものとして取り消すべきである。

3.違法性の承継は争点化されていなかったようであるが・・・

 裁判所は、本件の争点を、

(1)本件延長処分は適法か
(2)本件免職処分は適法か

の二つであると整理しています。

 当事者の主張は裁判所の判断を見る限り、違法性の承継に関する議論(条件付採用の違法は後の免職処分の効力には影響しないのではないか?)がなされた形跡はありません。

 しかし、裁判所は、条件付採用の延長が違法であったことが免職処分の取消事由(違法事由)になることを当然の前提と理解しているように見えます。

 裁判所の判断は、条件付採用期間が延長された方に対して行われたその後の免職処分の効力を争う場面において、実務上参考になります。

 




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