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注意指導無効確認請求に訴えの利益が認められた例

1.注意指導の無効確認請求に訴えの利益は認められるのか?

 戒告・譴責といった具体的な不利益と結びついていない軽微な懲戒処分が無効であることの確認を求める事件は、「訴えの利益」が否定されることが少なくありません。

 「訴えの利益」とは、裁判所に事件として取り扱ってもらうための要件の一種です。訴えの利益のない事件は、不適法却下-いわゆる門前払いの判決が言い渡されます。

 裁判所が、戒告・譴責の無効の確認を求める事件に消極的であるのは、

具体的な不利益と結びついていないから、有効か無効かを判断する実益がない、

戒告・譴責といった処分歴が考慮されて、より重い処分(減給・停職・解雇など)が下される可能性があるとしても、具体的な不利益と結びついたより重い処分がされた時点で、前歴とされた戒告・譴責の効力を検討すれば足りるので、戒告・譴責といった軽微な処分しかされていない段階で、敢えて、その効力を議論する実益はない、

と考えているからです。

 そのため、

「賞与・昇給・昇格の人事考課や査定において不利益に考慮され、数回の譴責・戒告を経た後にはより重い懲戒処分が課される旨、明記されることがある。これらの場合には、無効確認の訴えの利益が認められる」(荒木尚志『労働法』〔有斐閣、第4版、令2〕505-506頁参照)、

ものの、人事考課や査定、重たい懲戒処分と直接的に紐づいていない場合、戒告や譴責の無効確認を求めることには訴えの利益が認められにくい傾向にあります。

 戒告や譴責のような懲戒処分でさえ、このような傾向があることからすると、懲戒処分に至らない注意・指導の場合、一層、訴えの利益は認められにくいように思われます。

 しかし、近時公刊された判例集に、懲戒処分に至らない注意指導の無効確認請求に訴えの利益が認められた裁判例が掲載されていました。岡山地判令7.1.21労働経済判例速報2578-3 A社事件です。

2.A社事件

 本件は二つの事件(A事件、B事件)が併合審理されている事案であるうえ、当事者、請求が多数に及んでおり、一言で要約することが難しい事案です。注意指導無効確認請求は、B事件で被告が原告に対して行っていた請求の一つです。

 注意指導の内容は公刊物掲載時に省略されているため、今一分かりにくいのですが、裁判所は、次のとおり述べて、注意指導無効確認請求に訴えの利益を認めました。

(裁判所の判断)

「認定事実によれば、B1指導書には、本件注意指導と併せて、Cと業務上必要な連携、協力等をすることを含め適切に業務を指示する旨の指示も記載され、これに従わなかった場合には、懲戒処分とする場合がある旨が記載されていると認められるところ、厳重注意の旨と、業務用の指示及び懲戒処分の警告は、一体の書面として作成され、これらを区別することなく、被告B1の署名を求める体裁となっている。また、丙川指導書には、厳重注意の旨のほか、被告丙川に対して本件懲戒処分がされたのに、十分な改善が認められないとして、今後の言動によっては、解雇を含めた措置があり得ることにも言及され、これらの旨が、一体の書面として作成され、これを区別することなく、被告丙川の署名を求める体裁となっている。そして、被告丙川に対する本件解雇通知書において、本件注意指導は、被告丙川の普通解雇事由としては掲げられていないものの、被告丙川の改善可能性に関する消極的な事情として評価されている。さらに、本件注意指導に当たっては、被告B1ら3名の各別の書面が準備され、原告就業規則に違反する旨も具体的に記載され、被告B1ら3名の署名欄が設けられている。これらの事情に鑑みると、本件注意指導は、懲戒処分としての訓戒と同視できるかは措くとして、単なる口頭の注意と同視することはできないというべきである。

そうすると、本件注意指導は、これが原告就業規則において特に懲戒処分として定められていないことを踏まえても、これを受けた従業員に対して一定の不利益を与え、または、不利益を与え得ると認識させるだけの十分な内容を備えているというべきである。その後、結果的に、被告B1ら3名が、人事面や処遇面で不利益を受けたことが認められないとしても、上記判断は左右されない。

3.確認の利益が認められた

 上述のとおり、裁判所は、

「懲戒処分として定められていないことを踏まえても」

本件注意指導には不利益性がある、ないし、不利益を与え得ると認識させるだけの十分な内容を備えているとして、注意指導の無効確認請求に訴えの利益を認めました。

 労働者側としては軽微な措置がとられている段階から使用者側の行為を争えるに越したことはありません。争ってダメなら従うという選択をとれるからです。従わなかったら次は解雇など重大な処分が予想されるという局面で、ギリギリの選択を迫られるといった事態を回避できます。

 譴責や戒告でさえ(制度的に不利益と結びついていないと)訴えの利益が認められにくい中、この裁判所の判断は、実務上参考になります。

 




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