1.条件付採用
地方公務員法22条は、
「職員の採用は、全て条件付のものとし、当該職員がその職において六月の期間を勤務し、その間その職務を良好な成績で遂行したときに、正式のものとなるものとする。この場合において、人事委員会等は、人事委員会規則・・・で定めるところにより、条件付採用の期間を一年を超えない範囲内で延長することができる。」
と規定しています。
前段は民間の「試用期間」に、後段は民間の「試用期間の延長」に対応する仕組みです。
条件付採用の延長処分が行われた場合、延長期間経過後に改めて、
採用を正式なものとするか、
免職処分とするか、
が判断されます。
それでは、条件付採用の延長処分が無効であった場合、その後に行われた免職処分の効力はどのように理解されるのでしょうか?
大雑把に言って二通りの理解が成り立ちそうに思います。
一つ目は、免職処分は無効だとする考え方です。
これは、
条件付採用の延長処分が無効であった場合、6か月経過時点で正式採用されているはずである、
正式採用されているはずの職員に対し、条件付採用されている職員を対象者とする免職処分は行えない、
とする考え方です。
もう一つは、成績が良好かどうかで決めるとする考え方です。
条件付採用の職員だろうが、正式採用されている職員だろうが、勤務実績が良くない場合には免職処分をすることができます(分限免職 地方公務員法28条1項1号参照)。条件付採用の延長処分は違法無効であったかもしれないが、分限免職(本人に責任があることを前提とせず、公務の能率を確保するために行われる免職処分)を可能とするような事情があったのであれば、免職処分は有効と見ても良いのではないかという考え方です。
昨日ご紹介したとおり、実務上、条件付採用の延長処分の効力が争われることは殆どありません。そのため、条件付採用の延長処分の瑕疵が、延長期間経過後に行われる免職処分にどのような影響を与えるかは、明瞭ではありませんでした。
昨日ご紹介した名古屋地判令6.11.27労働判例ジャーナル158-40東栄町事件は、この問題を考えるうえでも参考になる判断を示しています。
2.東栄町事件
本件で被告になったのは、東栄町(普通地方公共団体)です。
原告になったのは、被告の職員として条件付採用された後、
条件付採用期間の延長⇒免職処分
を受けた方です。
本件の原告は、要旨、
条件付採用期間の延長(本件延長処分)は無効である、
本件延長処分が無効である以上、自分は正式採用されている、
正式採用されているにもかかわらず、条件付採用期間中の職員であることを前提として行われている点で、免職処分は違法だといえる、
という議論を展開しました。
裁判所は、条件付採用期間の延長処分を違法無効だと判断したうえ、次のとおり述べて免職処分も違法だと判示しました。
(裁判所の判断)
「本件延長処分が無効と認められる以上、原告は、東栄町長から、本件規則4条2項の規定に基づく条件付採用期間の延長処分を受けていないことになるから、本件規則2条2項の規定に基づき、条件付採用期間が終了した日の翌日である令和4年10月1日から、被告に正式に採用されたものと認められる。」
「そうすると、原告が条件付採用期間中の職員であることを前提にされた本件免職処分は、争点2について判断するまでもなく、違法であるといわざるを得ない。」
(中略)
「以上によれば、本件免職処分の取消しを求める原告の請求は理由があるから、これを認容することとして、主文のとおり判決する。」
3.免職処分の取消事由になるとされた
上述のとおり、裁判所は、
条件付採用期間中の職員であることを前提になされた免職処分は、
前提となている条件付採用期間の延長処分が無効である場合には、
違法無効なものとなる、
との論旨を示しました。
審査請求前置の期間制限等との関係で条件付採用期間の延長処分を取消事由として主張できる事案は決して多くはありませんが(本件の原告も取消事由ではなく期間制限がない代わりに取消事由よりもハードルの高い無効事由を主張しています)、裁判所の判断は、条件付採用を延長された方が延長後に免職処分を受けた時に、その効力を争うに当たり、実務上参考になります。