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地方公務員の条件付採用期間の延長が無効とされた例

1.条件付採用

 地方公務員法22条は、

「職員の採用は、全て条件付のものとし、当該職員がその職において六月の期間を勤務し、その間その職務を良好な成績で遂行したときに、正式のものとなるものとする。この場合において、人事委員会等は、人事委員会規則・・・で定めるところにより、条件付採用の期間を一年を超えない範囲内で延長することができる。

と規定しています。

 前段は民間の「試用期間」に、後段は民間の「試用期間の延長」に対応する仕組みです。本日、注目したいのは、この「条件付採用期間の延長」についてです。

 条件付採用期間の延長の可否は、実務上、滅多に問題になりません。

 それは、審査請求期間が3か月に限定されているからです。

 地方公務員法は、49条1項で

「任命権者は、職員に対し、懲戒その他その意に反すると認める不利益な処分を行う場合においては、その際、当該職員に対し、処分の事由を記載した説明書を交付しなければならない。ただし、他の職への降任等に該当する降任をする場合又は他の職への降任等に伴い降給をする場合は、この限りでない。」と規定し、

49条の2第1項で

「前条第一項に規定する処分を受けた職員は、人事委員会又は公平委員会に対してのみ審査請求をすることができる。」

と規定しています。

 そして、49条の3第1項で、

前条第一項に規定する審査請求は、処分があつたことを知つた日の翌日から起算して三月以内にしなければならず、処分があつた日の翌日から起算して一年を経過したときは、することができない。」と規定し、

51条の2で、

第四十九条第一項に規定する処分であつて人事委員会又は公平委員会に対して審査請求をすることができるものの取消しの訴えは、審査請求に対する人事委員会又は公平委員会の裁決を経た後でなければ、提起することができない。

と規定しています。

 これらの規定を纏めると、

① 処分の効力を争う場合、3か月以内に審査請求をしておく必要がある、

② 審査請求をしておかなければ、裁判所に訴えを提起することができなくなる、

というルールが導かれます(ちなみに、審査請求の対象にならない処分は取消訴訟による救済を否定する趣旨だと理解されています 第二東京弁護士会労働問題検討委員会編『労働事件ハンドブック』〔労働開発研究会、2023年改訂版、691頁参照)。

 条件付採用期間は最大で1年延長されます。紛争になる場合、半年なり1年なり条件付採用期間が延長され、その後、免職処分がなされます。

 条件付採用期間延長処分が出た段階で、その効力を争おうという人は滅多にいません。大抵の場合、延長期間に能力を認めてもらおうと、必死になって働きます。その後、免職処分が出された時には、条件付採用期間延長処分が行われてから3か月以上の期間が経過しているのが普通です。

 こうした経緯があるため、免職処分を受けた公務員の方が地位を保とうとする場合、大抵、免職処分自体を捕捉し、免職処分の審査請求⇒免職処分の取消訴訟へと手続を進めて行くことになります。

 条件付採用の延長処分の効力が問題になりにくいのは、上記のような背景があるからです。

 問題になりにくいということは、どういう場合に条件付採用の延長処分が違法になるのかについての司法判断(裁判例)が蓄積されていないことを意味します。

 このような状況のもと、条件付採用の延長処分について、重大かつ明白な瑕疵があり無効と判示した裁判例が、近時公刊された判例集に掲載されていました。名古屋地判令6.11.27労働判例ジャーナル158-40東栄町事件です。

2.東栄町事件

 本件で被告になったのは、東栄町(普通地方公共団体)です。

 原告になったのは、被告の職員として条件付採用された後、

条件付採用期間の延長⇒免職処分

を受けた方です。

 原告の方の争い方で興味深いのは、

条件付採用期間の延長(本件延長処分)は無効である、

本件延長処分が無効である以上、自分は正式採用されている、

正式採用されているにもかかわらず、条件付採用期間中の職員であることを前提として行われている点で、免職処分は違法だといえる、

という論理展開を用いたことです。

 裁判所は原告の請求を認容し、免職処分を取消しました。

 その中で、本件延長処分の効力について、次のとおり判示しました。

(裁判所の判断)

「地公法22条は、職員の採用を全て条件付とし、条件付採用期間を6月とした上で、規則等で定めるところにより、その期間を1年に至るまで延長することができると規定する。地公法が上記の条件付採用期間を定めた趣旨は、採用試験等によって採用された職員に関し、職務遂行能力や職務に対する適性などについて、採用試験等により一応の能力の実証を得ているものの(地公法15条、15条の2、17条、20条)、職務遂行能力を真に有するかどうかは実務に携わって初めて明らかになる場合があることから、正式採用のために実地の勤務について能力の実証を得ることにあると解される。その一方で、条件付採用期間においては、正式採用ではなく、地公法で定める事由による場合でなければ職員の意に反して降任や免職をされないといった身分保障に関する地公法の各規定(地公法27条2項及び28条1項から3項まで)が適用されないこと(地公法29条の2第1項1号)を踏まえると、条件付採用期間を漫然と延長することはそれだけ職員の身分関係を不安定なものにすることから、条件付採用期間を原則として6月に限定したものと解される。こうした点を踏まえると、地公法22条の規定に基づき、規則等による条件付採用期間の延長が許容されるのは、実地の勤務について能力の実証を得るために条件付採用期間を延長することについて合理的な理由がある場合に限られると解される。以上に示した地公法22条の規定の趣旨等に加え、本件規則4条2項の規定の文言に照らせば、同規定にいう『能力の実証が十分でないと認められる場合その他特別の事情がある場合』とは、6月の条件付採用期間では職員の勤務実績に基づく能力の判定が困難であって、その判定のために更に相当期間を必要とする特別な事情がある場合をいうと解するのが相当である。

「これを本件についてみると、証拠・・・及び弁論の全趣旨によれば、被告は、原告について、採用後6月の勤務状況等に基づき、能力評価をした上で、勤務実績評定及び総合評定(勤務実績『普通』、職務遂行能力『ない』、職務適格性『ない』、総合評定『不良』)を行ったことが認められる一方で、これらの評定の基礎となる条件付採用期間中勤務評価記録書・・・を見ても、原告の成績が不良であることを基礎付ける事実等が記載されているにとどまり、それを超えて、採用後6月の期間では原告の勤務実績に基づく能力の判定が困難であったこと、あるいは、その判定のために更に相当期間が必要であったことを示す記載は見当たらないし、被告が主張する原告の採用後の経緯を踏まえても、上記のような事情はうかがわれない。以上によれば、本件延長処分について、本件規則4条2項にいう『能力の実証が十分でないと認められる場合その他特別の事情がある場合』に該当する事由があるとはいえない。したがって、本件延長処分には、本件規則4条2項の基本的な要件の欠缺があり、重大かつ明白な瑕疵があったというべきであり、無効であるといわざるを得ない。」

3.条件付採用の延長が許容される場面についての解釈が示された

 以上のとおり、裁判所は、条件付採用の延長が許容される場面についての解釈を示しました。また、本件を条件付採用の延長が許容されない場面だと判示しました。

 これは、条件付採用の延長の可否に関する貴重な司法判断として、実務上参考になります。

 




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