以下の内容はhttps://sskdlawyer.hatenablog.com/entry/2025/05/18/175409より取得しました。


日々雇用に雇止め法理(労働契約法19条)の類推適用が認められた例

1.雇止め法理(労働契約法19条)の類推適用

 労働契約法19条は、

「当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められる」(契約更新に向けた合理的期待が認められる)場合、

有期労働契約者からの契約更新の申込みに対し、使用者は、客観的合理的理由・社会通念上の相当性が認められなければ、申込みを拒絶できず、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したことを擬制される

というルールを採用することで、有期労働契約を唐突に切られてしまった人(雇止めを受けた人)の雇用の安定を図っています。

 しかし、ここで一つ問題があります。

 この枠組みに嵌まらない人は一切保護されないのか? という問題です。

 例えば、

① 無期雇用で働いていた人が、有期の定年後再雇用契約を締結してもらえると期待していた場合、

② 適性判断のためと称して有期労働契約を結んでいた人が、期間経過後に無期労働契約を結んでもらえると期待していた場合、

③ 日々雇用で長期間働いていて、明日以降も雇ってもらえると期待していた場合、

などです。

 労働契約法19条の類推適用というわけではありませんが、①との関係で言うと、最一小判平24.11.29労働判例1064-13津田電機計器事件は、

無期労働契約⇒定年後の1年間の嘱託雇用契約⇒継続雇用拒否の事案について、

被上告人において嘱託雇用契約の終了後も雇用が継続されるものと期待することには合理的な理由があると認められる一方,上告人において被上告人につき上記の継続雇用基準を満たしていないものとして本件規程に基づく再雇用をすることなく嘱託雇用契約の終期の到来により被上告人の雇用が終了したものとすることは,他にこれをやむを得ないものとみるべき特段の事情もうかがわれない以上,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないものといわざるを得ない。したがって,本件の前記事実関係等の下においては,前記の法の趣旨等に鑑み,上告人と被上告人との間に,嘱託雇用契約の終了後も本件規程に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているものとみるのが相当であり,その期限や賃金,労働時間等の労働条件については本件規程の定めに従うことになるものと解される」

と雇止め法理の類推に親和的な判断をしました(ただし、津田電機計器事件は、無期と再雇用有期契約がストレートに繋がっている事案ではなく、この最高裁判例の趣旨が①類型にも及ぶことについては慎重な立場をとる見解もあります)。

 しかし、津田電機計器事件で示された類型以外で雇止め法理の類推適用に親和的な判断がされた事案があるかというと、必ずしもそうは言えないように思います。

 例えば、東京地判令5.2.8労働判例1327-97 明治安田生命保険事件は、有期労働契約のもとアドバイザー見習契約(保険営業職員)を締結していた方が、無期労働契約であるアドバイザー契約に移行することの可否が問題になった事案において、

「原告は、雇用継続に向けた期待を保護すべき必要性は変わらないから、同号を類推適用すべきである旨主張するが、本件労働契約は有期労働であるのに対し、MYライフプランアドバイザーとしての雇用契約は無期労働契約である以上、類推適用の基礎を欠くというべきあるから、原告の主張は採用できない。」

と述べ、②類型に消極的な判断を示しました。

 このように裁判所は必ずしも労働契約法の類推適用には積極的とはいえないのですが、近時公刊された判例集に、③類型で労働契約法19条の類推適用を認めた裁判例が掲載されていました。大阪高判令6.2.13労働判例1327-15 近江アサノコンクリート事件です。

2.近江アサノコンクリート事件

 本件で被告(被控訴人)になったのは、生コンクリートの製造販売等を主たる事業とする株式会社です。

 原告(控訴人)になったのは、ミキサー車を運転して工事現場に生コンを運ぶ業務に従事していた方です。元々は正社員でしたが、雇用形態が切り替えられ、日雇労働(日々雇用)の形で長期間に渡って勤務を継続していました。

 このような事実関係のもと、雇用するすることができない旨を口頭によって伝えられた原告が、解雇法理や雇止め法理の適用を主張して、地位確認等を求める訴えを提起したのが本件です。

 原告は幾つかの法律構成を試みましたが、その中の一つに労働契約法19条の類推適用がありました。原審はこれを含め、原告の主張を悉く排斥し、請求棄却判決を言い渡しました。これに対し、原告側が控訴して、高裁で審理が行われることになりました。

 この事件で大阪高裁は、次のとおり述べて労働契約法19条の類推適用を認め、原告の請求を一部認容しました。

(裁判所の判断)

・労働契約法19条2号の類推適用(控訴人の雇用継続の合理的期待)について

前記・・・のとおり、日々雇用においては、特定の使用者との間で雇用関係が事実上継続されることがあったとしても、その間には雇入れがされない日も存在することから、契約更新による継続的な法律上の労働契約関係の存在を認めることはできない。しかし、控訴人は被控訴人の下で1か月当たり少なくとも13日程度以上の稼働が長年月にわたって続けられていたものであって、このような場合、日雇労働者において、従前と同程度の稼働が認められる状態が継続することについての期待の存在やそれに対する保護の必要性は、有期労働契約の更新の場合と異なるものではないといえる。したがって、日雇の労働者について、労働契約法19条2号の類推適用の余地があるというべきである。

「本件において、控訴人は、被控訴人を退職した平成11年から本件通知書により控訴人に対する日々雇用を停止する意思が示された平成30年12月27日までの約19年にわたり、被控訴人において、1か月当たり13日ないし18日程度の稼働を継続しており(認定事実(4))、控訴人の被控訴人における日々雇用は、毎月相当程度の日数の稼働実績が長年月にわたり、かつ、安定的に継続されてきたことが認められる。指導手当の定め方が月額12万円(7500円×16回)等・・・と、月に相当日数の稼働があることを予定したものとなっていることも、控訴人の就労状況の継続性を裏付けるものといえる。加えて、控訴人は、平成30年4月以降、基本となる賃金に加えて1か月当たり12万円以上の指導手当を受給するなどしており・・・、その結果、後記7のとおり、賃金月額が50万円近くに上り、正社員の時代に劣らない手厚い待遇を受けていたことも認められる。そして、証拠・・・及び弁論の全趣旨によれば、本件通知当時既に60歳に達していた控訴人が、被控訴人から支給されていた上記賃金水準と同程度の条件で他の事業所で稼働するのは困難であることが見込まれる。これらのことからすると、控訴人には、同年12月27日の時点において、今後も従前と同程度の日々雇用における稼働が認められる状態が継続するものと期待することについて合理的な理由があったものと認められる。

「これに対し、控訴人は日々雇用を始める前に平成11年の時点で退職金を受け取った上で被控訴人を一度退職していること、被控訴人は控訴人に対して日雇労働求職者給付金を受給できるようにするため別の事業所でも稼働するように要請したが、控訴人はこれを拒絶したことが認められる・・・が、いずれも前記雇用継続の期待に対する合理的な理由を否定するほどの事情であるとはいえない。」

「被控訴人が、所属するD協組から、平成30年12月の1か月間、生コンの出荷自粛を要請されたことは認められ・・・、本件通知時点では、これによる売上げの減少は自粛期間終了後も一定の影響が残るものと見込まれるとともに、D協組内の救済措置(いわゆる赤黒調整)も十分ではないとみられた・・・。しかし、上記出荷停止の影響はある程度の期間は続くとしても、長い眼でみると一時的なものにとどまるものと考えられ(これに反し、被控訴人の生コンの売上げが長期間にわたり低迷したことを示す証拠はない。)、本件通知時点においては、ある程度被控訴人の売上げの先行きが不透明な状況に陥っていた・・・としても、それまで長期間にわたり安定的に1か月当たり13日程度以上あった控訴人の稼働を一気に恒常的かつ完全になくさなければならない事情があったとは認められず、控訴人に対する日々雇用の停止(雇止め)については客観的に合理的な理由はなく、社会通念上相当であるとは認められないというべきである。

よって、労働契約法19条2号の類推適用により、控訴人は、被控訴人との間において、1か月当たり従前と同程度の日数の稼働をする日々雇用の存在が認められる。

「ただし、被控訴人は、遅くとも平成7年4月1日以降、就業規則において、従業員(ただし、就業規則に定める選考試験に合格し、採用された者をいう。)の定年を満60歳とした上、定年後も引き続き雇用されることを希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない者は、満65歳まで1年単位の嘱託社員として再雇用される旨を定めている・・・)。前記のとおり、控訴人の日々雇用の継続期間が約19年と長期にわたっていたことからすると、本件通知がされた平成30年12月27日の時点においてはなお相当期間の雇用継続の期待が存在したといえるが、上記従業員との均衡からしても、上記再雇用の限度とされる満65歳を超える期間にわたって合理的な期待があったとはいえず、労働契約法19条2号の類推適用により認められる雇用継続は、同日から約4年が経過する令和4年末までとみるのが相当である。」

3.類推適用が認められた

 津田電機機器事件のような類型以外において、裁判所が労働契約法19条の類推適用に積極的な姿勢を示すことは少ないように思います。

 しかし、本件は③類型について、労働基準法19条2号の類推適用を明示的に肯定しました。これはかなり画期的な判断で、他の類型に類推適用が広がるかも含め、今後の裁判例の動向が注目されます。

 




以上の内容はhttps://sskdlawyer.hatenablog.com/entry/2025/05/18/175409より取得しました。
このページはhttp://font.textar.tv/のウェブフォントを使用してます

不具合報告/要望等はこちらへお願いします。
モバイルやる夫Viewer Ver0.14