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仕事と相性の悪い非違行為-窃盗行為に及んだ銀行員への懲戒解雇が否定された例

1.仕事と相性の悪い非違行為

 非違行為を犯した労働者は、勤務先から懲戒処分を受けることがあります。

 懲戒処分が法的に有効なものかどうかを判断するにあたっては、

「当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当である」

かどうかが問われます(労働契約法15条)。

 この条文に従って懲戒処分の効力を判断する時、職業と非違行為の相性が極めて悪いことがあります。例えば、電車乗務員が痴漢をする、銀行員が横領をするといったようにです。こうした場合、「行為の性質及び態様」に問題があるとして、重たい処分でも正当化され易い傾向があります。

 しかし、近時公刊された判例集に、銀行員&窃盗の組み合わせで懲戒解雇の効力が否定された裁判例が掲載されていました。昨日もご紹介した、東京地判令6.3.8労働経済判例速報2570-31 イオン銀行事件です。

2.イオン銀行事件

 本件で被告になったのは、銀行業を営む株式会社です。

 原告になったのは、被告で副店長として勤務していた方です。

 別会社の某店舗(本件被害店)の店舗に配置されていた販促物である洗濯用洗剤1点を同店舗の営業時間前に取得したことが窃盗罪に該当するとして、懲戒解雇を受けました。これに対し、懲戒解雇の効力を争い、地位確認等を求める訴えを提起したのが本件です。

 この事件の被告も、

本件非違行為は人の財物を預かる銀行業務に携わる銀行員として決して許されない行為であるばかりか、原告は、同行為以前にも、複数回にわたって本件被害店に配置された販促物を取得することを繰り返していた。また、原告は、被告松本店の副店長であり部店コンプライアンス管理者として社内においてより清廉性が求められる立場にあった。さらに、原告は、本件非違行為が不適切であることは認めるものの、窃盗罪に該当することまでは認めておらず、規範意識が欠けているといわざるを得ない。これらの本件非違行為の性質及び態様その他の事情に照らせば、本件懲戒解雇は社会通念上相当なものであり、有効である。」

などと仕事と非違行為との関連性を強調して懲戒解雇は有効だと主張しました。

 しかし、裁判所は、次のとおり述べて、懲戒解雇の効力を否定しました。

(裁判所の判断)

「原告は、令和5年3月21日の朝、被告松本店に出勤する途上、営業開始前の本件被害店に配置されていた本件物品1個を取得した(本件非違行為)。本件物品は、販促物として、『お一人様一個 ご自由にお取りください』との表示がされ、店頭を通行する顧客が手に取りやすい状態で配置されていた。」

(中略)

「顧客の財物を預かる銀行業務に携わる銀行において副店長の職にあった原告が被告の信用を大きく失墜させかねない窃盗罪に該当する行為を行ったことは、厳しい非難に値するものである。実際にも、本件被害店やA松本店に、被告の銀行員による犯行であることが発覚するに至っており、被告への信頼を大きく失墜させたことも考慮すると、原告が懲戒処分を受けることは避けられないといえる。」

しかし、本件非違行為は、被告松本店の近くで行われた窃盗事案とはいえ、出勤前に被告の業務とは関係のない中で行われた私生活上の窃盗であり、銀行員がその業務中に行った窃盗事案に比べれば悪質性が高いとはいい難い。また、前記1の認定事実によれば、本件物品は、店頭を通行する際に手に取りやすい状態で販促物として配置されていたこと、本件物品は販促物でありそれほど高価なものではないこと、原告が本件被害店や被告等に対し迷惑をかける行為であったことを認め反省の態度を示し、本件非違行為を行ったその日のうちに同店に謝罪していること、同店も被害届を提出しないと判断していることが認められる。さらに、本件記録上、原告には同種行為による処分歴や前科等は認められない。

「以上の諸事情を総合考慮すれば、本件非違行為に対しては、企業秩序維持の観点からみて、懲戒解雇より緩やかな処分を選択することも十分に可能であったといえ、本件非違行為のみを理由に最も重い懲戒処分である懲戒解雇を選択したことは、重きに失するといわざるを得ない。」

(中略)

「以上によれば、本件懲戒解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないから、懲戒権を濫用したものであって、無効である。」

3.相性が悪いにしても限度がある

 確かに、仕事と非違行為の相性の悪さはマイナス材料にはなります。しかし、決定的な要因になるとは限りません。本件も会社や顧客の物を窃取したのとはわけが違いますし、販促物の洗剤一つで懲戒解雇は行き過ぎではないかということで懲戒解雇の効力が否定されたのではないかと思います。

 相性が悪い事案だと、やっていることの割に処分が重い事案でも、争うことを躊躇しがちです。しかし、本件のような例もありますので、直観的に「幾ら何でも・・・」と感じられるような処分を受けた場合には、一度、弁護士に相談してみても良いのではないかと思います。もちろん、当事務所でも、ご相談はお受付しています。

 




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