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管理監督者扱いされていたことが、早出残業の労働時間性を認める根拠とされた例

1.早出残業の認定は厳しい

 タイムカードで労働時間が記録されている場合、終業時刻は基本的にはタイムカードの打刻時間によって認定されます。しかし、始業時刻の場合、所定の始業時刻前にタイムカードが打刻されていた場合であっても、打刻時刻から労働時間のカウントを開始してもらうためには、「使用者から明示的には労務の提供を義務付けていない始業時刻前の時間が、使用者から義務付けられまたはこれを余儀なくされ、使用者の指揮命令下にある労働時間に該当することについての具体的な主張・立証が必要」で、「そのような事情が存しないときは、所定の始業時刻をもって労務提供開始時間とするのが相当である。」と理解されています(白石哲編著『労働関係訴訟の実務』〔商事法務、第2版、平30〕68頁参照)。

 このように早出残業の立証(始業時刻前の稼働が労働時間に該当することの立証)は、必ずしも容易ではありません。そのため、どのような場合に早出残業の労働時間性が認められるのかは、労働事件を扱う弁護士の関心の対象となっています。

 こうした状況の中、管理監督者扱いされていたことが根拠となって、早出残業に労働時間性が認められた裁判例が、近時公刊された判例集に掲載されていました。昨日もご紹介した、東京地判令6.6.13労働判例ジャーナル154-52 サーバーリーズン事件です。

2.サイバーリーズン事件

 本件で被告になったのは、コンピュータソフトウェアの設計等を目的とする合同会社です。

 原告になったのは、被告のカスタマーサクセスマネージャー(CSM)やテクニカルコンサルタント(TC)として勤務していた方です。

 被告から普通解雇された後、解雇無効を理由として地位確認や、ハラスメントを理由とする損害賠償請求、未払割増賃金(残業代)等の支払いを求める訴えを提起したのが本件です。

 本日、焦点を当てたいのは、残業代請求との関係です。

 裁判所は、次のとおり述べて早出残業の労働時間性を認めました。

(裁判所の判断)

・令和2年8月1日から同年12月2日まで

「証拠・・・及び弁論の全趣旨によれば、

〔1〕被告は、令和2年8月1日から本件タイムカードシステムを導入したこと、

〔2〕原告は、日々、被告への出勤時及び退勤時に本件タイムカードシステムに出退勤時間を入力していたこと

が認められる。したがって、被告が本件タイムカードシステムを導入した同日以降の上記期間(令和2年8月1日から同年12月2日まで)についての原告の実労働時間は、本件タイムカードシステムに入力された出勤時刻から退勤時刻までの時間から休憩時間を控除した時間をもって認めるのが相当である(なお、本件タイムカードシステムに入力された原告の出勤時刻が本件雇用契約における始業時刻である午前9時よりも早い日も複数あるところ、当時、被告において原告は管理監督者であるものとして扱い、出社時間について広範な裁量を与えられていたことは被告も自認するところであるから・・・、始業時刻前の出勤時間であっても勤務開始時刻として労働時間に算入するのが相当である。)。また、弁論の全趣旨によれば、原告が相談を行っていた産業医は、勤務時間中の通院を認めるように被告に申入れをし、原告の通院は所定就業時間内に行われていたところ、被告は同通院時間も含めて勤務時間と扱い、同通院時間分を給与から控除するなどの措置も取っていなかったことが認められるのであるから、定期通院日であったことにつき当事者間に争いがない毎週木曜日の午後について、これを労働時間から控除するのは相当ではない。」

(参考-管理監督者性についての裁判所の判断)

「証拠・・・及び弁論の全趣旨によれば、旧CSM及びTCであった原告は、上司の指示に基づき業務に従事しており、経営上の重要な企画立案等の職務を担当していたことはなかったこと、原告には部下は一人もおらず、他の従業員の労働時間の管理をしたことも、他の従業員の人事考課等の人事に関与したこともなかったことが認められることからすれば、たとえ原告が高い年収を得ていたことなど被告主張を考慮したとしても、原告が管理監督者であったとは認められない。」

3.管理監督者性を争って残業代を請求するパターンでは早出残業までいけるかも

 以上のとおり、裁判所は、管理監督者として扱われ、出社時間に広範な裁量が認められていたことを根拠として、早出残業の労働時間性を認めました。

 管理監督者性を争って残業代を請求することは、典型的な紛争類型と言って良いほど数多くあります。そうした事件において、本裁判例は、積極的に活用して行くことが考えられます。

 




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