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タイムカードのない日の労働時間・休憩時間を、同月のタイムカードのある日の平均値から推計することが認められた例

1.実労働時間の主張立証責任

 割増賃金(残業代)を請求するにあたっての実労働時間の主張立証責任は、原告である労働者の側にあります。したがって、割増賃金を請求するにあたっては、労働者の側で始業時刻・終業時刻を特定し、その間、労務を提供していたことを立証する必要があります。

 実労働時間の立証について言うと、タイムカードがある事案では、それほどの困難はありません。

 問題はタイムカードのない日の労働時間立証をどうするかです。

 一般論として言うと、裁判所は推計計算を簡単には認めないのですが、近時公刊された判例集に、タイムカードのない日の労働時間・休憩時間を、同月のタイムカードのある日の平均値から推計することを認めた裁判例が掲載されていました。東京地判令5.10.6労働経済判例速報2558-27 ゆうしん事件です。

2.ゆうしん事件

 本件はいわゆる残業代請求訴訟です。

 本件で被告になったのは、骨折院・整骨院・鍼灸院の運営等を業とする株式会社である。

 原告になったのは、被告において柔道整復師として働いていた方です。

 請求対象期間の一部の日にタイムカードの打刻がない日があったのですが、裁判所は、次のとおり述べて、始業時刻、終業時刻、休憩時間を認定しました。

(裁判所の判断)

「原告は、タイムカードの打刻がない始業時刻、終業時刻及び休憩時間については、当該日の属する月の他の日の平均時刻又は平均休憩時間をもって労働時間を推計しているところ、同じ月内で原告の業務内容や繁閑の程度に大幅な差があったとは認められないから、原告の推計方法は一応の合理性を有するというべきである。」

「また原告は、令和2年11月4日以降の休憩時間を、同年3月1日から同年11月3日までの勤務日における全休憩時間の平均値(57分)をもって推計するところ、原告は令和3年2月1日から本件店舗2で勤務したものの、両店舗において原告の業務内容や繁閑の程度に大幅な差があったとは認められないから、かかる推計方法も一応の合理性を有するというべきである。」

「そして被告は、これらの推計方法に対する具体的な反論や反証をしていない。」

「よって、上記原告の推計方法はいずれも採用することができる。」

3.業務内容、繁閑の程度に差があるのか?

 裁判所が判示しているとおり、推計をするうえでは、業務の内容や繁閑の程度に顕著な差があったのかどうかがポイントになることがあります。

 推計を主張して行くにあたっては、単に平均値だと述べるだけではなく、業務内容や繁閑の程度に差がないことを主張、立証して行く必要があります。

 推計を主張する時の主張、立証の方針を考えるうえで、裁判所の判断は、実務上参考になります。

 




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