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性的に奔放であることは、セクハラによる心理的負荷を希薄する理由にはならないとされた例

1.加害者側からなされる反論パターン-性的に奔放であった

 昨日、セクシュアルハラスメントの存否、成否が問題になる事案では、しばしば加害者側から「心にダメージを負っているような様子はなかった」という反論がなされることをお話しました。

 これの亜種として、被害申告者が性的に奔放であったという主張がなされることがあります。これは、

「嫌がっているとは思わなかった」という趣旨で、故意・過失論と、

「それほどの心理的負荷は生じていないはずである」という趣旨で、損害論と

結びつく主張です。

 しかし、性的に奔放であろうが相手を選ぶ権利はあるわけで、望まない相手から性的な接触をされることが苦痛であることに変わりなどありません。あまり意味がないうえ、一歩間違えば名誉毀損、二次被害となりかねないことから、最近、こうした主張を見ることは少なくなっていたのすが、この種の議論は裁判所からどのように扱われるのでしょうか?

 一昨日、昨日とご紹介している鳥取地判令6.2.16労働経済判例速報2551-3 労働判例ジャーナル148-26 A社事件は、この問題を考えるうえでも参考になります。

2.A社事件

 本件で被告になったのは、

鳥取市に本店を置き、全国に展開してコールセンター事業等を営む株式会社(被告会社)

被告会社の執行役員兼法人部長として、B支店に勤務していた方(被告C 昭和58年生まれ)

の二名です。

 原告(昭和61年生まれ)になったのは、被告会社のB支店に勤務していた方です。被告Cから継続的にセクシュアルハラスメントやパワーハラスメントを受け、精神疾患を発症し、休職を余儀なくされたなどと主張して、損害賠償を請求する訴えを提起したのが本件です。

 本件の被告らは、

「仮に、被告Cの言動・・・の全部又は一部が違法なセクハラないしパワハラであると評価されたとしても、原告は、被害後に被告Cと会食をしたり、被告会社の懇親会に参加するなど、被告Cの各言動によって強い心理的負荷を負ったとは考え難い行動をしていることに照らし、その心理的負荷の強度は強くなかったといえる。」

原告は、平成30年当時、他者の目をはばかることなく、交際相手でもない複数の同僚と繰り返し接吻をするなどしていた。また、原告は、被告Cの言動〔3〕(9月誕生日会)以降においても、被告会社に出勤して業務に従事し、被告Cと通常どおりのコミュニケーションを図っていたほか、同年9月28日実施の被告会社の懇親会では、他の参加者と明るく歓談するなどしていた。」

などと主張し、ハラスメントと原告に発生した精神疾患との相当因果関係の存在を争いました。

 しかし、裁判所は、次のとおり述べて、原告には強い心理的負荷がかかっていたとして、精神疾患の発症とハラスメントとの相当因果関係を認めました。

(裁判所の判断)

「前提事実・・・に認定した医師の診断内容に照らし、原告は、遅くとも平成30年10月22日、精神疾患である適応障害を発病したものと認められ、この認定を覆すに足りる証拠はない。」

「そして、被告Cの不法行為と前記発病の間の相当因果関係の存否については、前記発病が、既に認定した継続的不法行為を構成する被告Cの言動のうち平成30年10月22日より前のもの(被告Cの言動〔1〕ないし〔3〕)に起因しているか否かの検討を要すべきことになる。さらに、前記3(争点1)に検討したとおり、被告Cの言動〔1〕ないし〔3〕は、それぞれを個別にみても不法行為の成立を認めるに足りる違法性を有しているとはいえるが、発病直近のものである被告Cの言動〔3〕(9月誕生日会)を中心とした検討をするのが相当である。」

「そこで、改めて被告Cの言動〔3〕についてみるに、その具体的内容は前記・・・のとおりのもので、原告は、突然、乱暴な態様によって意に反する形で唇に接吻をされ、同一日のものではありながら複数の機会及び場所で行われた点においても執拗である。・・・加害者である被告Cは、直属の上司であったのみならず、本件投稿グループに人事権を示しての恫喝的ともいうべき投稿をしていたことに表れているとおり、容易に逆らい難いものとして、原告はそれら複数回の機会において異議や苦情等をいうこともできなかったとみられる。そのような中、被告Cにおいて、会食の参加者であった同僚に対し、『(原告に対する接吻を)お前もやっていいよ』等との原告の人格を殊更軽視し、これを貶める言葉が投げかけられたというのであり、かかる被告Cの言動〔3〕によって原告が受けた心理的負荷の強度は、労災認定基準のいう『強』に当たると解するのが相当である。加えて、既に認定説示したとおり、被告Cの言動〔3〕は、継続的不法行為を構成する言動の一つであるところ、それに先行する被告Cの言動〔1〕〔2〕(4月出張及び8月誕生日会)がある点を踏まえて原告に対する継続的なセクハラがされていたという経過についても、原告の心理的負荷の強度を『強』と解することの相当性を裏付けるものといえる。」

「そして、このような被告Cの言動〔3〕は、前記アに認定した原告の精神疾患発病日(平成30年10月22日)からみて、その発病前6か月以内の間にあった心理的負荷の強度を『強』とする出来事にほかならない。被告Cの不法行為以外に、本件証拠上、原告が精神疾患の発病に結び付くほどの心理的負荷を受けていたこと、原告の個体側要因の存在をうかがわせる事情が的確な証拠によって認定できないことを併せ考慮すれば、原告は、被告Cの不法行為を構成する言動(被告Cの言動〔3〕)によって適応障害を発病したものと認められ、この認定を覆すに足りる証拠はない。」

「これに対し、被告らは、原告が被告Cの言動〔3〕の後にも被告会社の懇親会に参加したことなどを挙げて、原告が強い心理的負荷を受けていたとは考え難いなどと主張し、証拠・・・によれば、原告が被告ら主張に係る懇親会に参加していたことなど、これに一部沿う事実が認められる。しかし、上記証拠によれば、同懇親会は岡山支店内での送別会の趣旨で開催されたものと認められるところ、かかる趣旨の下、業務を円滑に進めるための必要性や責任感、社会的儀礼ないし人間関係等から、被告Cの同席や自らの精神的不調等といった障害があったとしても無理して参加をするなどの行動がとられる余地があることは否定し難い。」

また、被告会社は、原告が岡山支店の同僚と交際関係にないにもかかわらず接吻をすることがあり、原告が被告Cの不法行為によって強い心理的負荷を受けることは考え難いなどとも主張する。しかし、この点については客観的裏付けに乏しいばかりか、仮に上記に指摘されたような原告の行動があったとしても、被告Cの言動〔3〕が原告の意思に反したものであることは既に認定したとおりであり、被告Cの言動〔3〕の性質及び内容が持つ意味が被告会社指摘の事実によって希薄されるとはにわかに考え難い。

「以上によれば、被告らの上記各主張は、いずれも当を得たものであるとはいい難く、前記認定判断を左右しない。」

3.まともに取り扱われることは少ないだろう

 以上のとおり「他者の目をはばかることなく、交際相手でもない複数の同僚と繰り返し接吻をするなどしていた」という会社側の主張は、「(そのようなものによって心理的負荷が)希薄されるとはにわかには考えがたい」と一蹴されました。

 要するに、そんな主張は意味ないのではないか、という趣旨であり、私の受け止め方としては無視されているのと大差ないという感覚です(客観的な裏付けもないような状況で、会社側はよくそんなことを主張したなとも思います)。

 この種の主張をされるのは苦痛ではあるでしょうが、あまりまともに取り扱われることはないため、仮に性的に奔放であったとしても、被害申告や責任追及を躊躇したりする必要はありません。

 




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