以下の内容はhttps://sskdlawyer.hatenablog.com/entry/2024/05/10/220025より取得しました。


降格や配転可能性が十分検討されていないとして、パワーハラスメントを理由とするプロダンサー(ダンスホール支配人)の普通解雇が無効とされた例

1.専門性の高い職務内容の労働者に対する解雇

 適格性欠如等を理由とする普通解雇を行うにあたり、

「専門性の高い職務・職位を特定しそれに見合った能力の発揮を期待して中途採用等で雇用された労働者の場合、当該職務を遂行する能力に欠けるときには、他の職務・職位への配置を検討せずに解雇を行うことも有効と判断されることがある」

という議論があります(水町勇一郎『詳解 労働法』〔東京大学出版会、第3版、令5〕1011頁参照)。

 配転の打診等を前置きされないまま解雇された専門性の高い労働者が解雇の効力を争うと、使用者側からは、大体、上述のような反論が寄せられます。

 しかし、上述のような議論も常に妥当するというわけではありません。近時公刊された判例集にも、降格や配転可能性が十分に検討されていないとして、プロダンサーに対する普通解雇の効力を否定した裁判例が掲載されています。東京地判令5.3.29労働判例ジャーナル145-40 ファーストブラザーズ事件です。

2.ファーストブラザーズ事件

 本件で被告になったのは、ダンスホールの運営、土産品の販売等を営む株式会社です。

 原告になったのは、被告との間で期間の定めのない労働契約を締結し、被告が経営するダンスホール(本件ダンスホール)の支配人を務めていた方です。部下である従業員らに対してパワーハラスメントを行ったなどとして普通解雇されたことを受け、地位確認等を求める訴えを提起したのが本件です。

 本件では原告の属性に特徴があります。

 原告の方は、

22歳であった平成21年2月にアルバイトとして本件ダンスホールで働き始め、

同年4月に正社員となり、

翌平成22年頃、本件ダンスホールの支配人になっています。

 大学生の時からダンスを始めており、被告に入社してからはプロの競技会に出場するようになり、平成23年時点では最上位のA級にまで昇格していました。

 また、被告には「個人アテンダント制」という仕組みがありました。

 これは、

客から指名されたアテンダントがマンツーマンでアテンドし、

その中でレッスンや踊り合わせなどを30分単位で行い、

客が1レッスン(30分)当たり3000円を被告に支払い、

そのうち1500円がアテンダントの報酬になる、

という仕組みです。

 こうした仕組みのもと、原告の方は、多い時は月額10万円を超える個人レッスンの報酬を得ていました。

 キャリアの特性・専門性を考えると、解雇するにあたり、降格や他の職種への配転は予定されていないようにも思われますが、裁判所は、次のとおり述べて、解雇の効力を否定しました。

(裁判所の判断)

「原告の本件ダンスホールで勤務する従業員に対する暴言、特に平成30年10月21日のものは、本件ダンスホールの支配人である原告が部下である従業員に対し、その身体的特徴や経歴などをあげつらって侮辱したり、罵倒したりしているのであって、原告とその部下である従業員との間の信頼関係を破壊するのに十分な行為である。現に、本件ダンスホールで勤務する従業員は、原告との話合いを拒み、ダンス事業部の担当役員であった常務取締役のP3は、原告と本件ダンスホールで勤務する従業員との間で意思疎通ができておらず、本件ダンスホールの運営に支障が生じていると考え、原告に対して自宅待機命令を発している。このような点に照らすと、被告が本件解雇に及んだことについて相応の理由があるといえる。」

「しかしながら、被告が原告の問題行動を知り、指摘したのはこれが初めてであって、改善の可能性がないとまではいえないこと、懲戒処分又は人事上の措置として原告の本件ダンスホールの支配人から降格させた上、一従業員として勤務させるという選択肢もあり得ること、被告にはダンス事業部以外にも事業部が存在するにもかかわらず、配置転換の可能性について十分に検討した形跡が見られないことに照らすと、これまで懲戒処分を受けたことがない原告に対して解雇をもって臨むのはやや重きに失し、社会通念上の相当性を欠くものといわざるを得ない。

この点につき、被告は、プロダンサーである原告を他の職種に配置転換することは困難であると主張するが、原告が平成21年2月に被告との間で締結したアルバイトの労働契約において、契約書上は被告に配置転換する権限が認められており・・・、また、就業規則40条でも同様のことが定められているのであるから・・・、被告の上記主張は採用できない。

「以上によれば、本件解雇は社会通念上相当とは認められないから、権利を濫用したものとして無効である。」

「したがって、原告は被告に対する労働契約上の地位にあると認められる。」

3.後天的に獲得した専門性であれば大丈夫なのか?

 上述のとおり、裁判所は、降格や配転の可能性が十分に検討されていないことなどを指摘して、解雇の効力を否定しました。

 アルバイト時の労働契約に言及するなどしていることからすると、元々の契約で高度な専門性が前提とされていなければ、後天的に高度な専門性を獲得したとしても、配転可能性を検討してもらう労働契約上の利益は失われないということなのかも知れません。

 いずれにせよ、配転可能性を検討されることなく解雇された専門的労働者に対する解雇の効力を争うにあたり、裁判所の判断は参考になります。

 




以上の内容はhttps://sskdlawyer.hatenablog.com/entry/2024/05/10/220025より取得しました。
このページはhttp://font.textar.tv/のウェブフォントを使用してます

不具合報告/要望等はこちらへお願いします。
モバイルやる夫Viewer Ver0.14