私には、数えきれないくらい、たくさんの友人がいます。
私はあまり自己主張はしないし、相手の話すことをじっくり聞き、
相手を理解しようとするのですぐ仲良くなります。
私はどんな人でも受け入れるので自然と友人が増えました。
私の学生時代の友人でパチンコが大好きな友人がいます。
彼は若いうちに離婚し、それからずっと独身を続けていました。
彼とは今でも仲が良く、家が近所なので時々飲みに行く間柄です。
彼は、仕事が休みの日は、お金があればいつもパチンコ屋さんに行っていました。
開店と同時にパチンコ屋さんに入り、夕方まで打っているようでした。
何年も前のことですが、日曜日の夕方に家の近所をウォーキングしていると
彼が私を見つけて、「今日はパチンコで勝ったので奢ってあげるから、
今から一緒に一杯飲みに行こう」と私を誘いました。
私は家にいる妻に電話して、友人と一緒に飲みに行くと伝えました。
それからふたりは近くの居酒屋に行き、彼の奢りで飲みました。
彼は大勝ちしたようで、お刺身の盛り合わせや焼き鳥、寄せ鍋などを
ごちそうになりながら、私は上機嫌の彼と楽しく話をしました。
私は彼に、いつもこんなに勝つのかと聞いたところ、負けるほうが多く、
月に5,6万円くらいは負けていると言いました。
私は彼に今までにどれくらい負けたのか聞いてみると、パチンコを始めて
20年くらい経つので、1000万円以上負けているだろうと言いました。
私は驚きました、彼に、こんなに負けているのになぜ続けるのかと聞きました。
彼はパチンコで大負けをしたときは、もう2度とパチンコはしないと、こころに
誓ったそうです。
ところが何日か経つと、もしかしたら今日は勝ちそうだと勝手に思い込み、
負けることは頭に浮かばず、またやってしまうことの繰り返しだそうです。
パチンコで勝った時は、負けないうちに使ってしまおうと贅沢をするので、
お金がどんどんなくなっていくようでした。
しかし、話しを続けていると彼がパチンコにのめりこんでいるのは、パチンコが
好きなことよりも、寂しい気持ちの方が勝っているのがわかりました。
彼は仕事の休みの日、誰も話し相手がいないので、家でひとりでじっとしている
のがいやで、とにかく外に出て、孤立感を紛らわしているようでした。
彼は独身なのでもらった給料は自分の好きなように使えるので、寂しさを
紛らすために、無駄遣いとわかっていてもパチンコを打っていたようです。
私は彼に、自分の将来のことは考えないのかと聞きました。
すると彼は、自分には家族がいないし、将来自分がどうなっても誰も困らないと
言いました。
だから今、好きなように生きている、今が良ければそれでいいと言いました。
私は彼の気持ちが寂しいのがとてもよくわかりました。
私は彼に、「今日のお返しに、今度うちの家に来なさい、ごちそうはできないけど、
妻の作った手作りの料理で一杯やろう」と言いました。
数日後、約束した日時に、彼は手土産を持って私の家に来ました。
彼は家に入るやいなや、自分の部屋のように殺風景さをポスターで隠したような
冷たさはなく、ここは古くて素朴ながらも温かみのあるこころの安らぎを
感じたようです。
私は妻に彼を紹介し、妻はキッチンで料理を作っている間、ふたりは
枝豆を食べながらビールを飲んで話しをしていました。
そこへ妻は、手作りの出来立ての温かい肉じゃがを持ってきて、どうぞと
彼の前に出しました。
彼はありがとうございますと言って、遠慮がちに一口食べました。
すると、こころを込めて作られた温かい肉じゃがは、彼の口の中で幸せとなって
広がりました。
彼は、幸せの味ってこんなに美味しいものだと気が付きました。
目には見えない幸せの味を、家庭の雰囲気の中、手作りの肉じゃがが見事に
演出してくれたのです。
彼は久しぶりの家庭の味に涙が出ました。
これは世界で一番美味しい肉じゃがだと彼は言いました。
どんな高級レストランで食べるステーキよりもおいしいと言いました。
彼は長い間、幸せとは何かということを忘れていたようです。
それ以来、彼は生きていくことの幸せに気づいたようです。
それから彼は再婚し、今では毎日、幸せの味を堪能しています。