母「お腹がすいたから朝ごはんにしましょう。」
娘「何言っているのご飯はさっき食べたばかりでしょう。」
母「今朝はまだ何も食べていない、なんでそんな事言うの」
母「ところで今何時、時計を見て頂戴」
娘「さっきから何回同じこと聞くの、もう5回目よ」
母「そんなに何回も聞いていない、これが初めてよ」
母「私の財布がない、誰か私の財布を盗んだ人がいる、捕まえて。」
娘「この前も、大騒ぎして結局、机の中にしまい込んでいたじゃない。」
母「私は財布を確かにこの場所に置いていた。絶対盗まれたに違いない」
母「さっき、お父さんがここに来て、一緒に散歩しようと誘ってくれたよ。」
娘「お父さんはもう、5年も前に亡くなったのよ、変なこと言わないで。」
母「本当にお父さんが目の前に現れてやさしく誘ってくれたのよ。」
母「助けて、私は殺される、怖い、何とか私をここから連れ出して。」
娘「どうしたの、なぜあなたは突然、別人のようになって暴れるの。」
母「私は誰かに襲われる、近くに隠れて私を待ち構えている。」
認知症になった人の気持ちはなかなか理解できないですね。
こころの中がどうなっているのか若い人には特にわからないかもしれません。
でも、同じ人間として優しく接してあげることが必要だと思います。
母「あなたはいつも私のことを叱るけど、どうして叱られるのかわからない。」
娘「お母さんはどうしてこんなにおかしくなったの。以前のようにしっかりして
ほしいのです。何とか元のお母さんに戻ってほしいからよ。」
母「私は何も変わっていない、変わったのはあなたのほうです。」
母「私は人格を否定されたようでこころが傷つく。なんで私をいじめるの。
どうして今までどおり優しくしてくれないの。」
娘「もうあなたのこころは別人です、何もかも変わってしまいました。
とても昔のやさしくて聡明だったお母さんとは思えません。」
母「何を言っているの、私はあなたが生まれたころ、おむつを替えたことは
よく覚えているし、桜の咲く時期、一緒に小学校の入学式に行ったのも
よく覚えている。ただ、最近、脳の回路がうまく繋がらないときもあるけど
むかしの思い出はしっかり覚えています。こころは変わっていません。」
母「人のこころを理解するのはとても難しいこと。なって見なければわかりません。」
娘「私はお母さんの最近の異常な言動に驚きを隠せません。」
母「あなたにきつく叱られることで私のこころは悲鳴を上げています。」
母「あなたに私の気持ちはわからないでしょう。だんだん頭が混乱して
記憶がなくなっていく恐怖の心境を。とても悲しく辛い毎日。」
娘「お母さん、私は理解不足でした、あなたがそんなに苦しんでいることを。」
母「さすが血のつながった我が娘、こころが繋がってほっとしました。」
母「私の頭が混乱して何を言っているのかわからないときは、話を合わせてくれる
だけでいいの、それでこころが落ち着くから。」
娘「お母さん、あなたのこころは今でも生きているんですね、本当にごめんなさい。」
母「私も人間、頭はボケても、きつい言葉にはとてもとても傷つくのよ、そんな
気持ちをわかってくれてありがとう。」