来日した『世界で一番貧乏な大統領』ムヒカ氏のことは良く知りませんでしたが、ニュースで見る本当に貧乏そうな恰好には非常に好感を持ちました。これから、この人の本を読んでみようと思ってるんですけど、彼がこう言っている事はあまり報じられてませんね。

●中日新聞のインタビュー記事http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2016040702000075.html
さて、日本のメタル・アイドルユニット『BABYMETAL』の新しいアルバムがイギリスで日本人最高位の15位を記録したのが週末のTVニュースでも流れていました。
海外の有名ロックフェスに出演したり、大会場でワンマンコンサートをするなど、この娘たちが日本より海外で売れているのは知ってましたが、普通にチャートに入るのは凄いことだと思います。ニュースの画面で、ゴリラみたいにごつい頭の悪そうな海外のヘヴィメタルファンが、日本語で『イジメ ダメ!』とかコールしているのを見たら頭がクラクラしました(笑)。

このニュースを見て思い起こしたのは超有名経済学者のシュンペーター先生の『イノベーションの定義』です。これからはイノベーションが大事、と安倍晋三ですら言います。しかし口で言うほど簡単なことではありません。シュンペーター先生はイノベーションを『さまざまな要素の組み合わせを新たに作って(新結合)、新たな製品や生産方法、販売方法、組織、供給源などを作り出すこと』と定義しています。
シュンペーター先生が言っている大事なポイントは、イノベーションを起こしていかない限り資本主義自体が行き詰るってことです。利潤が無くなるからです。水野和夫先生らが資本主義はもう終わり、と言っているのはかっての産業革命やITのように社会全体を引っ張るような新たなイノベーションが今のところ見つかっていないからです。と言ってもAIはその可能性はあるとは思います。水野氏は『確かにそうだけど、その頃はボクは死んでますから』と笑ってましたよ。
BABYMETALがやっていることもイノベーションです。元来はメタルと全然関係ない、アイドルとダンスという異質の要素をメタルに組み合わせる新結合を実践して、彼女たちはイノベーションを実現しています。個人的にはヘヴィメタルという音楽は苦手ですが、バンドが上手いことも相まってこれなら鑑賞に堪えられます。キツネさまのお告げに従い演奏するというギミックもメタルという音楽の大仰さをうまく相対化している。この娘たちの歌だけ、ダンスだけ、だったらそれほどとは思わないけど、組み合わせたことによる面白さって確かにあります。
今やアメリカでイチローの次に有名な日本人だと言うきゃりーぱみゅぱみゅ(カワイイ+ダンス)や今年も欧米をツアーで回るPERFUME(テクノ+ダンス)だってそうです。
若い子だけでなく、4年前に由紀さおりがアメリカのジャズ・バンド、ピンク・マルティーニと組んで歌謡曲のCDを出して欧米で大ヒットした、ということもありました。異質なものを組み合わせて独自なモノを作りだし、海外で受け入れられている。彼女たちは全員 日本語で歌っています。独自なものがあれば日本語は障害にならない。BABYMETALにしても、PERFUMEにしても、外人の観客が普通に日本語で合唱したり掛け声まで出しているのを見ると、かって外国のロックを聴くために英語の辞書を懸命に引いたりしていたボクとしては、時代は変わった、と思います。
グローバリゼーションが進む中で、海外進出でも地方興しでもそうだと思いますが、独自性を打ち出すことが以前にもまして必要です。そういう意味では日本の文化には大きな可能性がある。
それにしても海外で売れている日本の歌手は女性だけ、というのはどういうことなんだ?とも思います。まあ、日本で見込みがあるのは女性だけ、なんでしょうね(笑)。
●2015年 英レディング・フェスティバル。
●それとは対照的。典型的な日本の男のダメ文化。秋元康によるHKT48の歌詞。本田由紀センセのリツイートより。

新宿で映画『蜜のあわれ』http://mitsunoaware.com/
ボクが大ファンの二階堂ふみちゃんの主演作。監督は石井聰亙改め、石井岳龍。『狂い咲きサンダーロード』を撮ったこの人の映画を観るのは久しぶりです。

自分のことを「あたい」と呼ぶ、丸いお尻とチャーミングな顔の赤子(二階堂ふみ)は「おじさま」と呼ぶ老作家(大杉漣)と古い日本家屋で一緒に暮らしていた。実は赤子の正体は真っ赤な金魚だった。二人がひっそりと生活していたある日、老作家の過去の女が現れ……。
老作家のモデルは勿論 原作者の室生犀星です。原作は読んだことないんですけど、アマゾンの解説を借りると『ある時は“コケティッシュ”な女、ある時は赤い三年子の金魚。犀星の理想の“女ひと”の結晶・変幻自在の金魚と老作家の会話で構築する艶やかな超現実主義的小説』、だそうです。
●金魚の化身、赤子(二階堂ふみ)と老作家(大杉蓮)

個人的には、こういう日本の私小説もどきって実にくだらない、と思っています(笑)。
なんだかんだ言って自分のロリコン趣味とかのエゴを屁理屈で正当化しているだけ、としか思えないんです。個人的な発想を普遍性に昇華させる努力もないまま、セコいエゴを押し付けてくる。頭が悪くて押しつけがましいって、まさに不愉快です(笑)。愛だの恋だの命だのって大げさな言葉を女々しく並べる日本のフォークソングと一緒(笑)。こっちは忙しいんだから、そんなくだらない繰り言に関わっている暇ない。映画もそういう独りよがりの作品だったら嫌だな、と思って見に行ったんですが、大丈夫でした(笑)。
舞台は1950年代頃でしょうか。戦争の傷跡と古い日本の香りが残っている時代。古い日本家屋に老作家が若い女性と暮らしています。自分を『あたい』と呼び、真っ赤な衣装をまとった彼女の正体は金魚です。ふみちゃんは、ある時は少女のように、ある時は妖艶な表情を見せます。序盤 尾ひれのようなひらひらが付いた真っ赤な衣装をまとって庭をかけてくる彼女は本当に金魚のようにすら見えました。う〜ん、これには度肝を抜かれた。
●ある時は幼女のように、ある時は成熟した女性のように彼女は老作家を翻弄します。

映画で再現されている幻想的な光景、異界と現実を隔てる境界、古い家屋などの雰囲気はとても良かったです。この映画ではやたらと夕方が強調されます。元来 夕方って現実と異世界を隔てる時間帯と思いませんか。夕方には昼でもなければ夜でもない宙ぶらりんの感覚ってあると思うんです。子供の時から感じた、そういう感覚を映像で見るのは久しぶりでした。この映画、幻想とリアルのバランスがとても良いです。その点ではテイストが似ている鈴木清純の過去の作品にも勝っているかも。
●男性陣。赤子の正体を知っている金魚屋役の永瀬正敏、芥川龍之介(の幽霊)役の高良健吾


赤子は老作家の様々な女性と出会います。愛人だった幽霊(真木よう子)、更に部屋の鏡台に移る過去の愛人、そして新たな愛人(笑)。
ここで描かれる老作家の姿には全く感情移入できません。愛人がいるから悪いって話じゃなくて、全然美しくないんです。都合が悪くなると文学のせいにするし、芥川の死と自分の死を重ね合わせた不安にもまったく同情できない(笑)。別に大杉蓮の演技は問題ないですが、キャラクターがあまりにもくだらなすぎ。自分で自分を憐れんでいるだけで、女性にも自分にも正面から向き合おうとしない。
ある時代の日本の芸術家像の典型かもしれませんが、簡単に言うとただのバカ(笑)。
●赤子は老作家の愛人だった幽霊と友達になります。女性が男のエゴに翻弄されてばかりではない。ここもいいんですね。

これだけ見てるといやーな感じになるのですが、それを救っているのが二階堂ふみちゃんが演じる金魚の造形です。この人、ルックスは昭和っぽいところもありますが、彼女の現代的なところがところどころ表現されます。お尻を振り振り、手足を広げた伸びやかなダンスとか、時折見せる男に正面から挑みかかるような鋭い視線とか。むか〜しの男の意にままになるような女性像とは明らかに違うんですね。性を売り物にしていないし、男に安らぎなんか与えない。彼女と老作家がユーモラスに踊るエンドロールもとても良かった。
●二階堂ふみちゃんが演じると男に媚びているようには全く見えないからいいんです。

もとの話がくだらなすぎるのですが、二階堂ふみちゃんの変幻自在な表情とそれを引き出した演出は良かった。金魚に扮した彼女の演技と雰囲気を味わうための映画、そういう作品です。日経の映画評は星が5つ(今年有数の傑作)としてましたけど、完成度の高い良い映画だと思います。
こちらは、個人的にちょっと衝撃を覚えたドキュメンタリーです。青山のイメージフォーラムで『甘くない砂糖の話』
あまくない砂糖の話 THAT SUGAR FILM – 2016年3月19日(土) シアター・イメージフォーラムほか順次公開

入場するとき映画館の入り口に人だかりがあったので振り返ってみたら、新作『牡蠣工場』が公開中の想田和弘監督が道端で観客の質問に答えているところでした(笑)。この映画館はこういうことが時々あるから面白いです。
この映画はこんな前置きから始まります。
オーストラリア人は平均で一日にティースプーンで40杯分(約160gくらい)も摂取しているそうです。そこで監督兼俳優のサイモン・ガモーは自らの身体で実験をしてみることにします。低脂肪ヨーグルト、穀物バー、フルーツジュースといった一般的には健康的とされているが、実は大量の砂糖を含んでいる食品群を60日間食べ続けると、人間の心と体はどうなるのか。彼の人体実験が始まります。
●実験前(左)と実験後(右)。1か月の食生活で監督の身体はボロボロになります。

以前1日3食1ヵ月間 マクドナルドを食べ続けたら人間の体はどうなるかを検証した傑作ドキュメンタリー、『スーパーサイズ・ミー』がありました。それと同じ発想ですね。その監督、モーガン・スパーロックもこの作品に推薦コメントを寄せています。
- 発売日: 2005/07/08
- メディア: DVD
まず砂糖って、本当にそんなに沢山摂取しているでしょうか。ちょっと裏を取ってみました。
●2015年の各国の1日当たり砂糖消費量

独立行政法人農畜産業振興機構より統計資料【海外情報】|農畜産業振興機構
このデータを見ると確かにオーストラリアは138グラム、日本は48グラム、甘党のアメリカが一番多いんだろうと思っていたんですが、90グラムと思っていたより少なかった。最近のアメリカの食べ物は店を選べばそんなに悪くないと思いますが、甘い物だけは超甘すぎて酷いですからね。
なんでこんなに多いのかというと、砂糖をそのまま食べているからではなく、ケチャップやパン、ジュースにお菓子、加工食品、我々が口にしているものの多くに砂糖が入っているから、これだけの数値になるからだそうです。ちなみに世界保健機構(WHO)の推奨量は1日25グラム。日本だってアウト、です。
http://biz-journal.jp/2014/04/post_4584.html
監督は今まで自然食を続けていました。それを一般人並みに砂糖を摂取する実験をするというのです。彼が決めた60日間のルールは、清涼飲料水、菓子類、チョコレートなどは食べずに、シリアルやヨーグルトなどに含まれている砂糖を1日にスプーン40杯分摂取すること。1日のカロリーはそれまでと同じです。
驚愕の結果が現れます。実験を始めて、監督はたった12日間で約3.8キロ太ってしまいます。コレステロールや血糖値も上昇する。摂取カロリーは変わっていないのに、です。
ここで解説が入ります。原始の時代から人間はもともと糖分を取れなかったため、糖を体内にため込む体質になっているそうです。余分な糖分は体内で脂肪にかわってしまう(うろ覚えです)。だから砂糖は太る。画面では下着姿の監督の身体の変化がそのまま画面に映されますから、非常に説得力があります。おまけにホルモンの分泌が変わり、精神状態も怒りっぽく、気力も失われてくるそうです。

監督は肥満大国アメリカでも取材します。彼はケンタッキー州へ飛びます。彼が出かけたアパラチア山脈のあたりはヒルビリーと呼ばれる白人極貧層が住む地域として知られています。80年代から90年代にかけてペプシとコカコーラのシェア合戦がありました。この地域にペプシは『マウンテン・デュー』という製品を集中的に投入してシェアを確保することに成功します。この製品は通常のペプシに比べて糖分もカフェインも滅茶苦茶多い(1.5〜2倍)そうです。
この製品を好む極貧層には超甘いマウンテン・デューをガンガン飲むどころか、子供に哺乳瓶でマウンテン・デューを呑ませるような親までいます。映画ではボランティアで歯の治療をして回る歯医者が出てくるのですが、そういう人が必要なほどマウンテン・デューが広まっているそうです。映画にはその結果 10代後半で歯が20本以上溶けてしまった子が出てきます。うえ〜!その子は自分みたいな子が大勢いると言ってました。
マクドナルド、コカコーラ、ペプシ、砂糖の生産者協会、それに御用学者、彼らは砂糖は身体に悪くないと言うデータ、論文を流しています。映画にはドクター・ペッパーの開発者が出てきます。彼によると、ある限度まで砂糖を増やしていけば飲料の売り上げは増える、というデータがあるそうです。当然 各企業は製品に砂糖をガンガン使うようになります。
一見 身体に良さそうなヨーグルトやオーガニックなどのパスタソースも例外ではありません。味を良くするために多くの製品に糖分が添加されています。
知らない間に我々は砂糖漬けにされているんですね。60日後 監督は8キロ太り、各数値も悪化します。医者もドクターストップをかけます。そこから健康な食事に変えて彼が体調を戻すまで、また60日かかりました。
●実験を終える日の監督と奥さん。

今 各国で肥満対策で『砂糖税』を導入する動きが出てきています。「砂糖税」イヤーがやって来る 英国が肥満対策で2年後に導入(木村正人) - 個人 - Yahoo!ニュース
個人的にはボクはファーストフードも清涼飲料水も一切飲んだり食べたりしません。牛乳はローファット、ヨーグルトは無脂肪砂糖なし、白砂糖は一切使わないし、油はオリーブオイル、シチューなどの肉も下煮して冷やして固めた脂を取ってから食べています。それでもコレステロール値が高いんです。それがこの半年 炭水化物を減らしたら数値が改善しました。今まで油は減らしてもお菓子や野菜ジュース、アイスクリームや和菓子は食べていました。きっと糖分が過剰だったんです。健康のためには手間をかけて、野菜や果物も形のあるものを食べろ、ということなんでしょう。
反省しました(笑)。カロリー制限だけではダイエットにならないんですね。この映画はオーストラリアではドキュメンタリーとしては空前のヒットを記録したそうです。ためになるけど、ゾッとするようなお話でした。