あっと言う間に押し迫ってきて、今年もあと三日。クリスマスのバカ騒ぎも収まって、昨日あたりは渋谷も青山も人が少なかった。東京のベストシーズンは何と言っても正月とお盆。人が少なくて、がらんとした街が居心地が良い。だからではないけれど、今年の冬は本当に寒い。
さて、12/24日経朝刊の1面『展望2015』という記事のアメリカの有名投資家ジム・ロジャース氏のインタビューが面白かった。マネー収縮に備えを 投資家・ジム・ロジャーズ氏 :日本経済新聞
日本について『向こう1〜2年は楽観的に見ている。』と言いつつも、『だが長期的にはかなり悲観的だ。債務が膨らみ、人口が減り、通貨の価値が落ちていく。大惨事ではないか。日本は世界で最も好きな国々の一つだ。でも、私が仮に20歳以下の日本人なら国を出ていくだろう。』と言うのだ。
彼は本質的なことを言っていると思う。短期的には今起きている思わぬ原油安は日本にとって良い影響があるだろう。ボクはこの原油安はプーチンつぶしだと思っているけれど、今までの株高も今回の原油安も、安倍晋三の今回の内閣はちょっと運に恵まれているのは認めざるを得ない。リーダーの価値は『運』も含まれる。逆に何をしてもインケツだったのが民主党政権だったし、安倍晋三の第1次内閣だった。
だが、長期的にはどうだろうか。国の債務の拡大も、人口減も、対策に手すら付けられていない。
政府総債務は2012年12月の1043兆から、2014年9月には1083兆円に拡大した週刊ダイヤモンド│書店で一番売れてるビジネス週刊誌。安倍晋三はたった2年で債務を40兆も増やしたことになる。日本の個人金融資産は1400兆とも言われていて、それがあるから国の債務が膨れ上がっても経済恐慌に陥らないわけだが、このペースで行ったら日本はあと20年も保たない。きっとオリンピックの熱も冷めた10年後には、この国の空気はずいぶんと冷ややかなものに変わっているだろう。緊急避難としての公共投資は否定しないけど、呑気に公共投資とか国土強靭化とか寝ぼけたことを言ってる場合じゃない。
おまけに人口減だ。何で人口減が問題かというと、経済=人口×資本×生産性だからだ。先進国の日本では資本を増やすことも生産性を向上させることも現実には中々難しいから、人口が減れば日本経済は縮小していくことになる。今年 政府が『選択する未来』という組織横断的な審議会を内閣府に作って人口減を直視しようとしたところは評価するが、年末に出た結論が『50年後は人口1億程度を維持し、実質成長率1.5〜2%を維持する』という具体性に欠けた玉虫色のものじゃ検討したことにならない(笑)。彼らの報告書には、移民を受け入れずに人口を維持するために出生率をどうやって上げるか実効性のありそうな対策は全くない。それには理由がある。無理だからだ(笑)。
●『選択する未来』の最終報告も結局は大本営発表だった。論理的に物事を考えないのは日本の伝統なんだろうか。

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/houkoku/02.pdf
●『選択する未来』の報告書
「選択する未来」委員会 - 内閣府
先進国で唯一 フランスが出生率を回復させたのは、子育てへの手厚い支援に加えて、嫡出/非嫡出子の権利平等化(フランスは非嫡出子が全体の半分を占める。ちなみに英米も非嫡出子が4割以上)、婚姻によらない柔軟なパートナーシップ制度(PACS)などの施策を進めたからだと思うが、選択的男女別姓すら実現できない日本にはどれをとっても全くの夢物語だ。
今の出生率の低さは今の日本の社会に若い人たちが希望を持っていないから、とボクは思う。非正規雇用が全体の4割など雇用は不安定、子育てをサポートする社会的な仕組みは整ってない、ついでに男は家事をやらないバカばかり、おまけに原発事故で日本の国は平気で国民を捨てることがバレてしまったのだ。自分がその立場になってみれば誰だってそう思うだろう。
かくして長期的に日本は衰退の一途を歩んでいく(笑)。
人口増がだめなら外資でも呼んで資本を増やすか(例えばTPP(笑)!)、生産性を上げる議論をするか(リチャード・クー氏は金融業を強化することで生産性を上げろと言ってるのは1理あるが、今更 米英に対抗して、そんなことができるとは思えない)、それでなければ経済の拡大自体をあきらめて一人あたりのGDPで勝負するとか、そういう議論が必要なのだが。
でも大事なのは国とかじゃなく、そこに生きる個人だ。少し前、哲学者の國分功一朗氏のこの小文『亡命はなぜ難しいのか』を読んだ。【総選挙2014】亡命はなぜ難しいのか?(國分功一郎)|ポリタス 「総選挙」から考える日本の未来。たぶん ボクらは本気で亡命を心配しなくてはいけないような時代に生きている。それでも、なんとかして一人一人が生き残っていくことが重要なんだろうと思う。
で、本題(笑)。今年見た映画を数えたら85本だった。如何にボクがまともに仕事をしてないか、ってことなんだろうけど(笑)、良い映画に沢山触れることができて本当に良かった。その中からベスト5+αを振り返ります。
5位:NO!(9月)

チリの軍事政権の独裁を国民投票で倒した広告マンの実話。圧倒的に優位な政権に対して、右から左までイデオロギーを超えて野党が一致団結したこと、など今の日本が学ぶべきことは大きいけれど、一番印象に残ったのはそんなことではない。選挙の勝利に湧く味方陣営の事務所を一人 冷ややかに去っていく主人公の姿だ。熱狂というものは問題を解決しないし、長続きもしない。そういうものだ。
4位:グレート・ビューティー 追憶のローマ(9月)

人生の黄昏を迎えた老作家の姿を美しいローマの光景・遺跡とともに描く。映画を見るというより、美しい画面と散文調のセリフのシャワーを浴びているようだった。
- 出版社/メーカー: オデッサ・エンタテインメント
- 発売日: 2015/03/06
- メディア: DVD
- この商品を含むブログ (6件) を見る
3位:物語る私たち(9月)

女優でもあるサラ・ポーリー監督の、実の父親捜しというセルフドキュメンタリーという形式をとりながら、一筋縄ではいかないトリックが隠された映画。観客は、パーソナルな題材がいつの間にか普遍的な内容に昇華されていくのを味わうことになる。人間への諦観と深い愛情が心を打つ。
2位:そこのみにて光り輝く(5月)

函館には行ったことがないけれど、この映画で見る函館はうらぶれているが実に美しい街だった。昭和の匂いが濃厚な、その街で現代的問題である貧困を直視しながら美しいものを希求し続ける、しかも完成度の高い素晴らしい映画。池脇千鶴をはじめとした俳優陣も良かった。
- 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
- 発売日: 2014/11/14
- メディア: DVD
- この商品を含むブログ (21件) を見る
1位:6歳のボクが大人になるまで(12月)

6歳の男の子が18歳の大学生になるまでを実際に12年かけて撮影した映画。戦争に不景気、格差の拡大、この12年間、世の中はどんどん厳しくなった。だが、人生はそれだけではない。この映画は人間の生長と時代の変化をシンクロさせながら、どんな厳しい時代でも『生きろ』ということを教えてくれる。
●番外:(捨てるのが惜しい編)
『無知の知』(11月)、『プロミスト・ランド』(9月)、『めぐりあわせのお弁当』(8月)、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(9月)、『アデル、ブルーは熱い色』(4月)、『チョコレート・ドーナッツ』(5月)、『ジャージー・ボーイズ』(10月)、『とらわれて、夏』(6月)、『フルートベール駅で』(4月)、『アクト・オブ・キリング』(5月)、『リスボンに誘われて』(9月)
どれもベスト5に入れても不思議がない名作揃い。『プロミスト・ランド』の夏の朝のような爽やかさ、『めぐりあわせのお弁当』、『リスボンに誘われて』の静かなパッション、『ガーディアンズ』の完ぺきなエンターテイメントぶり、『アデル』、『とらわれて、夏』の欲望の肯定、『無知の知』、『チョコレート・ドーナッツ』、『アクト・オブ・キリング』、『フルートベール駅で』が描いたボクらを打ちのめす現実、捨てがたい作品ばかり。これらの作品を見られたことはボクの心の中で大きな財産になった。
ここに上げた映画はジャンルは様々だけど、なんだかんだ言って今の世の中に結びついたものが多かった。自分でも映画を通して、生きるためのよすがを求めているんだろうと思う。我ながら軟弱です(笑)。
さて、自分の好みだけを反映した(笑)いつも勝手なことばかり書いているこのブログですが、今年は今日でおしまいです。この1年、読んでくださった方々、ありがとうございました。どうか良いお年をお迎えください。