アメリカのケリー国務長官が中国、韓国を訪問しているが日本は素通りしたという。また4月のオバマの日本来日も国賓として迎えることができるかどうか揉めている。オバマは一泊しか日本に滞在しないが、国賓として迎えるには2泊必要なんだそうだ。日米外相、同盟強化を演出 オバマ氏の来日日程は確定できず :日本経済新聞
あれだけアメリカが『靖国なんか行くんじゃねえ』と意思表示したのに安倍ごときに完全無視されたのだから、属国風情が、というところだろう。怒るだけでなくCIAでも使って倒閣でもしてもらいたいもんだ(笑)。アメリカだけでなく、日本国民にも利益になるんだけどな。
そんなことを考えながら、最近『タモリ論』がベストセラーになった樋口毅宏の小説『テロルのすべて』を読む。2011年の作品だが最近文庫になったばかり。アメリカを舞台にした作品。
- 作者: 樋口毅宏
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2014/01/08
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (4件) を見る
突拍子のない話のせいか、アマゾンの書評では『リアルじゃない』とか言われているが、ボクはそうは思わなかった。世界中のトップ頭脳が集まるMIT暮らしや核爆弾製造のディテールはボクには良くわからないが、この主人公の気持ちが大変良くわかる気がするからだ。アメリカを断罪するとか、そういう単純な話じゃない。所詮 人間は他人と判りあうことは出来ない。そして偽善だらけの現実には唾を吐きかけるしかない。幼稚な発想だけれど、一面の真実でもある。それは一面の真実でしかないことを普通の大人は知っているけれど、この作品はそういう衝動を解き放ち、一瞬だけボクを自由にさせる。
普段の樋口の作品とは違い、直接的な暴力描写は控えめだ。その分だけ、ボクは主人公の心の造形に近づいていきやすかった。この点はいつもの樋口作品らしく、この主人公はある意味 人間のクズだし、年齢も20代前半ということで、やや人物像が浅いようには見えたけど、日本を否定し、それを育んだアメリカをも否定する主人公の孤独な姿は共感できるからだ。さらっと読めるし、エンターテイメントとしては結構 面白かった。小説だったら未だに特攻隊がどう、とかみみっちいこと言ってないで、今まで誰もやったことがない、アメリカに原爆を落とすくらいの発想があってもいいんじゃないか。
続いて『民主党政権失敗の検証』を読む。著者は朝日新聞出身のジャーナリスト船橋洋一が作ったシンクタンク『日本再建イニシアティブ』。民主党の議員60人以上からヒアリングをして書いたそうだ。
- 作者: 日本再建イニシアティブ
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2013/09/21
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (15件) を見る
だから、民主党の失敗と言うものをよ〜く検証しておかなければ、 日本にまともな政府ができるなんて夢のまた夢でしかない。
この本では『マニフェスト』、『政治主導』、『経済と財政』、『外交・安保』、『子ども手当て』、『政権・党運営』、『選挙戦略』、それぞれの観点から民主党政権の3年間を検証している。
マニフェストは『歴代のトップが替わるたびに内容が膨らんでいったが、その反面 予算の裏づけはほとんど取ってなかった(小沢一郎と元大蔵官僚で財務大臣になった藤井裕久が大丈夫と安請合いした)』、政治主導の点では『鳩山は官僚を拒否、菅は官僚を怒鳴るだけ、野田は官僚の言いなり』、経済では『財務大臣は3年で6人変わって一貫性がなかった。また景気が上昇しかけたところで大震災に襲われた』、外交・安保は『政策の継続性も ないまま、素人が引き継いだ』、政権・党運営では『党内でまったく融和が取れていなかった』などの問題点が挙げられている。時折指導力を発揮した小沢一郎も含め、結局は政権運営に対して『何もかも準備不足』だったという。
終章で、船橋洋一はある議員のこんな証言を挙げている。『民主党政権を担った国会議員の殆どが議員になるまで中間管理職の仕事をした経験がなかった』。要するに彼らは官僚組織を動かすどころか党を動かすことすら、できなかった。権力の使い方も含めて、組織のマネジメントが全然できていなかったのだ。仙石由人ですら『3人の首相に共通した課題はそれぞれに違った意味で国家経営意識が弱かったこと』と証言している。
それはボクもすごく感じる。政治主導だかなんだか知らないが、民主党政権はいきなり官僚を敵視して政権運営を始めた。それじゃあ、うまくいくわけがない。会社や部門を引き継いでも、最初は前任者のやってたとおりに運営する。それから徐々に変えていく、というのが普通のやり方だ。まして最初から部下(官僚)を敵に回してどうする。はっきり言って幼稚だ。
例えば安倍や麻生と民主党の歴代首相と比べてみても、また個々の議員の質も、方向性は別にして個人の能力の差はあまりないと思う。特に鳩山なんか実行力は別にして、かなり頭が良いだろう(お勉強という意味)。だけど組織のマネジメントという点に関しては、周囲の人材も含めて政党の能力はかなり差があることは認めざるをえない。
ボクは民主党の政権交代が100%無駄だったとは思わない。情報公開と言う面では風穴を開けたし、高校の無償化とか生活保護の母子加算復活などの数少ない成果もある。かと言って今のままでは政権担当能力はない。民主党だけでなく、共産、生活、社民、緑の党など他の政党も全くダメだろう。選挙でお互いの小異を罵り合ってるようじゃ問題外だ(笑)。修正主義と怒る人もいるかもしれないが(笑)、現実の政権運営を考えれば、結局 これらの政党のなかに居るマトモな政治家が自民の一部と連携して政策単位で再編していくしか現実的な解はないように思えるのだ。
最後は映画『オンリーゴッド』(原題はOnly God Forgives)
2年前の年間ベストだった映画『ドライブ』の監督、スウェーデンの鬼才ニコラス・ワインディング・レフンが前作と同じくライアン・ゴズリングの主演で撮った作品となると、それは期待せざるをえない。

舞台はタイ。暗黒街で兄と一緒に麻薬の密売に勤しむ主人公(ライアン・ゴズリング)。ある日 彼の兄が現地の警察に殺されて、アメリカから彼の母がやってくる。復讐に乗り気でない彼に、母はしきりに兄の仇討ちを強要する。
●男前のライアン・ゴズリングだが- - -

だけど、あらすじはあんまり意味がないのかも。相変わらず映像が美しい。バンコクの夜を彩るエキゾチックな青や緑の明かり。そして様々な赤色。時には噴水のように噴出す鮮やかな赤色、ある時は床に流れるどす黒い赤色、勿論、血の色だ。それらを覆い隠すようにオレンジや青色の深い深い陰影が画面を支配している。
この映画は台詞も殆どない。観客は深い陰影の中に時折浮かぶ主人公たちの表情を伺うしかない。だからこそ主人公たちの心理が深く伝わってくる。まるで監督はこう言っているようだ。こんな世界で今更 多言を弄しても仕方ないじゃないか。ボクもそう思うよ。
●ここでは世界はオレンジや青色に覆われているように見える。


前作『ドライブ』はお洒落な映像に散りばめた暴力描写の中に、主人公とキャリー・マリガンちゃんとのロマンスという解毒剤があったけど、今作ではそれはない。ダークな画面の中に時折挿入される暴力描写が作品全体のトーンを象徴している。色彩はあるが、モノクロ映画を見ているように見える。
●仇討ちを強要する母親。スタイリッシュで狂った世界(鈴木清順みたいだ)

主人公が住む犯罪と隣り合わせのバンコクのストリート、警察のボスが住む平和で穏やかな農村、母親が滞在する豪華で近代的なシティホテル、これらのギャップを対比させるかのようにお話は進んでいく。敵役の警察のボスは圧倒的な力で残虐さを発揮する。だが、彼の行動はどこか道徳的だし、表情はまるで高僧のようだ。短刀を背負った彼は彼自身が神であるかのように悪人たちに残虐な裁きを下す。
●高僧のような警察のボス

後半に至って、この作品のテーマは暴力とはかけ離れたところにあることがわかってくる。暴力は幻想でしかなく、幻想は幻想でしかない。だが幻想は現実を徐々に侵食していく。映画の冒頭ではどこか所在無げだった主人公は警察のボスに抗争を挑むことで自分を取り戻していく。だが彼は敢て敵である警察のボスに跪く。まるで自分と言う存在の許しを請おうかのようだ。この映画はギャングの抗争や暴力の話ではなく、自分自身の存在を疑う人間の物語だったのだ。そう考えると、この映画のオレンジと青の深い陰影はまるで自分の心の中の光景を覗いているかのようにも見えてくる。
哲学的と言うか結構 難解なので絶対に万人向けの映画ではないが(笑)、スタイリッシュな映像で精神的な世界を描いた作品で、ボクは大好きだ。