注:本記事は新型コロナウイルス感染拡大後の情報を元にしています
【概要】

北九州スタジアム(ミクニワールドスタジアム北九州)は、2017年開場、福岡県北九州市にあるギラヴァンツ北九州のホームスタジアム。
ギラヴァンツ北九州は元々北九州市立本城陸上競技場をホームとしていたが、キャパシティの少なさ、アクセスの悪さ、そして陸上競技場特有の見にくさが問題となっていた。
そこで、ギラヴァンツ北九州のホームとして使用することを前提として作られたのがこの北九州スタジアムである。
新幹線全停車駅である小倉駅から徒歩圏内とアクセス抜群、そしてサッカーやラグビー観戦に最適化された、日本でも屈指のスタジアムが出来上がった。
さすが政令指定都市北九州市、本気を出せばこれくらいは余裕なんだなあ。
そんな最高のスタジアムが出来上がった北九州であるが、ここである大きな問題が立ちはだかった。
ギラヴァンツ北九州の成績低迷である。
ギラヴァンツ北九州は1947年に創設された三菱化成黒崎サッカー部を源流とするクラブで、2010年に九州で5番目のJリーグ入りを果たした。
しかし初めて参戦したJ2では大苦戦。
なんと2010年から2011年にかけて、35試合連続未勝利という地獄の時期を過ごすことになった。
丸一年近く勝利がないとか、精神的に参ってしまいそうだ…。
とはいえ2011年は20チーム中8位とそこそこの成績を上げ、2014年には5位に入るなどJ1昇格の兆しを見せていた。
そんな中2017年に念願の新スタジアムが完成、一気に上昇気流に乗ると思われた。
が、現実はそう甘くはなかった。
2016年、J2リーグ22チーム中22位の最下位で終え、新スタジアム開幕となる2017年シーズンをJ3で迎えることになってしまったのである。
更に2018年には17チーム中17位の最下位となり、J3でも非常に厳しいシーズンが続いた。
ところが2019年、小林監督のもと科学的かつゴリゴリにフィジカルを鍛え、突然J3優勝を果たす。
ギラヴァンツ北九州としては初の戴冠であった。
この勢いで一気にJ1へ!と行きたいところだったが、やっぱり現実は甘くなかった。
2020年は5位と健闘したものの、2021年は22チーム中21位で2度目のJ3降格。
以降も苦戦が続き、2023年にはとうとうJ3で最下位、いよいよJFL降格もかなり現実的になってきてしまった。
JFLから昇格できるチームがいなかったため難を逃れたが、これではJ1どころかプロリーグにすらいられなくなる。
このままではJリーグのトラウマとして、地方のクラブがますます新スタジアム建設に二の足を踏む大きな動機になる。
ギラヴァンツ北九州にはこれ以上の地獄を見てほしくないところだが…。
【アクセス】
最寄まで★★★★★

最寄りはJR小倉駅。
新幹線は全停車、特急もバンバン止まる、博多に次いで九州第二の乗降客数を誇るビッグターミナル。
Jリーグスタジアムの最寄り駅では最も大きいと言っても過言ではない。

小倉駅の駅ビルにそのまま突き刺さっている北九州モノレールはあまりにも印象的。
モノレールにも乗りまくった北九州旅の記録はこちら。
最寄から★★★★★

小倉駅からは徒歩10分。
モノレールとは反対側の新幹線口から。

小倉駅の栄えてない側の出口とはいえ、オタク文化の集うあるあるCityなど商業施設もそろっている。
さすが政令指定都市北九州。

そして何より、屋根があるうえ動く歩道まであるのがあまりにもらくちん。
傘をさす必要もなければ歩く必要すらない。


動く歩道の先は西日本総合展示場につながっており、スタジアムへの通り道にもなっている。
この先はスタジアムまでほんの少し外を歩くが、それでもここまで屋根があるのは雨の日にはありがたい。
【観戦環境】★★★★★

北九州スタジアムのすばらしさはなんといってもそのロケーション。もはや野暮な言葉はいらない。
久保建英も日本代表としてこのスタジアムで試合を行い、その素晴らしさを絶賛した。

後ろには時折船が通っていく。
船とサッカーが楽しめるスタジアムはここだけ。まさにオンリーワン。
こういう光景を見ていると、まるで超巨大豪華客船の甲板で試合を楽しんでいるかのような気分になる。
もしかしたら世界にはこういう船もどっかにはあるのかなあ…。

もちろんサッカーの見やすさも折り紙付き。客席にも角度がついていてどの席からでも見やすい。
ただ一点気になるのは、手すりがどうしても視界に入ってくる点。
場所によってはそれなりに邪魔になってしまうことがある。ここだけはなんとか…。
あと季節によっては潮風がめっちゃ寒い。

ビジョンは隅っこに一枚。大きさは過不足なく標準的。
このスタジアムに関してはビジョンはこのくらいで十分だ。最高の景色があるからね。

ホームギラヴァンツ北九州側のスタンド、

そしてアウェイ側のスタンド。大きさや構造はほぼ同じ。
何より、ピッチのすぐそば以外は屋根があるのが本当にありがたい。

後方には新幹線も駆け抜けていく。
このスタジアムだけで日本の公共交通機関は大体抑えられる。北九州には空港もあるしがんばれば飛行機も見えるかも…。

こちらがメインのスタンド。普通に試合を見るだけならここに限る。

コンコースはこちら。ピッチも見えるしLEDビジョンもあって鮮やかだしいうことなし。
そしてグルメもここに集約されていて、スタジアムの外に出る必要がないのも非常にありがたい。
外に出て買いに行くのやっぱめんどくさいんだよね…。

メインスタンドの外にも通路があって、混雑も抑えられる。
]
メインスタンドを離れて見たところ。
これを作るためにわざわざ道路を少し曲げたとのことなので、ギリギリアウトな限界まで大きくしたスタンドだ。

そしてバックスタンドへ。完全に海の真横である。
ボールが海ポチャしたらボートで取りに行くようだ。

ゲートも完全に海の真横。日本一海が近いゲートであることは間違いない。

バックスタンドの裏側はこんな感じ。ここ砂浜にしたい。
ちなみにバックスタンドは柱を海に突き立てることでもう少し大きくできるらしい。

バックスタンドからの眺め。ただひたすらサッカーだけを見たい人はここもアリ。
ただ若干のっぺりしている。

ゴール裏からの眺め。いびつなスタジアムの構造を堪能したい場合はこちら。

コンコースはバックスタンド以外どこへでもぐるっと回れて回遊性抜群。ロケーションだけでなくスタジアム自体も本当によくできている。
ちなみにバックスタンドも階段を降りれば行けます。

スタジアムで使われている設備には地元北九州の企業製品が使われている。
北九州と言えば日本有数の工業地帯だ。
もちろんトイレは北九州が世界に誇る高級ブランドTOTO。
ユニフォームの胸スポンサーも務める、北九州を代表する企業の一つ。
【雰囲気】★★★★☆

試合前、早速選手のバス待ちに遭遇。

大旗も多くゴール裏の見栄えも良い。

屋根があるおかげで声が反響し、応援にはかなり迫力が出る。
どこをとってもスタジアム自体は本当に完璧。
ただ北九州スタジアム唯一にして最大の弱点…
それはギラヴァンツ北九州が弱いこと。
どんなにスタジアムが良くても、チームがJ3で断トツの最下位では、そりゃお客さんはなかなか行く気がしないですよね…。

敗戦した試合後のあいさつではブーイングの嵐かと思ったが、まばらな拍手がパラパラと起こるくらいな感じで終わった。
個人的にはこれでいいんじゃないかなと思う。
ふがいないチームに対してブーイングやヤジを浴びせ、時には怒号が飛んだりして鼓舞するのはJリーグ、あるいはサッカーの文化ではある。
ただ、これからの時代にはそれはそぐわない。
プロ野球で汚い言葉遣いを排除しようとしているように、Jリーグも安心して楽しめるスタジアムづくりにそろそろ本気で取り組む時期ではないだろうか。
ちょっと話がそれました。つまり比較的歴史の浅いチームには、ぜひこのままの雰囲気を継続して欲しいという話です。
ただもしかしたらギラヴァンツの場合、どうしようもないことをサポーターが悟ってしまってるだけかもしれないけれども…。
【グルメ】★★★★☆

コンコースをうろうろして気になるグルメを購入。
まず一番上はホルモン丼。
見た目よりは量があるが、とはいえホルモンが少ないし、味噌だれという割に味噌感全然ないし、何よりご飯がべちょべちょなのが厳しい。
丼はあくまでご飯を食べる料理なんよ…。
左下はホットプレートで焼いてくれるソーセージ。肉汁が飛び出てきてかなりウマイ。
これは買い。
右下は関門海峡名物のたこを使ったたこめし。
大と小でサイズが選べるのがいいし、味も漁師さんが出してる店だけあって確かなおいしさ。
これも買い。

でもやっぱり食べるべきは小倉駅名物のかしわうどん(写真は駅で食べたやつ)。
九州では鶏肉を煮込んだものをかしわと言い、このお店の最もスタンダードなうどんがかしわうどんである(かけうどんというメニューがない)。
このお店を経営する北九州駅弁当株式会社は130年もの歴史があり、かしわうどんも60年以上の歴史がある北九州市民のソウルフードだ。
福岡を舞台とするクッキングパパでも取り上げられている。
何かが圧倒的においしいとか、そういうものではない。
でも何度でも食べられる、何度でも食べたくなる、そんな優しいうどんである。
もちろんスタジアムでも、一番行列ができていたのはかしわうどんだった。
スタジアムでもいいし小倉駅でもいいが、とりあえずかしわうどんを食べずには帰れない、帰らない。
【街との一体感】★★★★☆

街中を歩いていたら、15枚もポスターが並んでいる場所があった。チームにオフィシャルスーツを提供しているお店らしい。
圧が強い。

オフィスビルの一角にもポスターが貼られていた。

砂津バスセンターの近くでギラヴァンツ北九州の応援メッセージを発見。
ひろたさんありがとうございます。ぜひ本社にも電凸させていただきます。

北九州モノレールはギラヴァンツと一蓮托生の関係らしい。
スタジアムとは全く関係ない駅なのに神社が設けられていた。


至る駅に目立つ看板も設置されている。

そしてスタジアム最寄の小倉駅にも自販機を設置。
考えてみればモノレールは市民とスタジアムをつなぐ一番身近な公共交通機関だし、力を入れるのも当たり前か。
船でスタジアム行く人がいたら面白いけど…。

街中にも自販機が見られる。

小倉駅のスクリーンにも試合情報が映し出される。

駅北側の商業施設の入り口にもポップが。

駅からスタジアムに行く途中にはユニフォームが飾られている。

スタジアム近くにはマンホールが設置されている。

北九州の繁華街魚町商店街にもフラッグが散見される。
このように街中でプッシュされているギラヴァンツではあるが、街の一体感を生み出せているかというと疑問が残るところである。
それはなぜかと言ったら、おそらく弱いからだろう…。
そもそも福岡には福岡ソフトバンクホークスがあるし、サッカーで言えばアビスパ福岡もある。
そんな中でわざわざJ3で最下位のチームを応援するなんてのは、もはや修行のようなものだ…。
実際駅前のスーパーではホークスの応援歌が流れていたし、テレビでもずっとホークスを扱っていたくらいだ。
北九州も福岡である以上スポーツにはさほど困っていないというか、むしろどちらかというと恵まれた土地だったのだ。
Jリーグクラブの大きな目的の一つに地方創生があるはずだが、このままではギラヴァンツは北九州を盛り上げるどころか北九州と一緒に衰退してしまう、という笑うに笑えない状況になってしまう。
どうにかして強くならないものか…。

なお小倉から電車で3駅の観光地、門司港の商店街には結構たくさんポスターが貼ってあった。
小倉は大都会すぎて目立ちにくいから、こういう場所で地道に宣伝するのはいいかも。愛着もわきやすそうだし。
【満足度】★★★★★
もう文句なし、スタジアムに関しては満点中の満点である。
それはもう、言わずもがなだろう。Jリーグが求めているスタジアムはまさに北九州スタジアムである。
しかしこれだけ最高すぎるスタジアムを作ってしまったおかげで、ギラヴァンツ北九州にはある責任が生まれてしまった。
それは「Jリーグの成功例」を示さなければならなくなったことである。
多くのサッカーファンは、私も含めて、「サッカー専用スタジアム幻想」を抱いている。
それは以下の通りだ。
①Jリーグの規格にあったサッカー専用スタジアムを作る
②サッカーは見やすいし雰囲気も良くなるしで満足感が高まり、自然とお客さんが増える
③自然と収入が増え、自然と強化費が増え、自然と強くなり、自然とお客さんが増える
つまりいいスタジアムを作ればみんながハッピーになる、という幻想である。
この幻想をもとに、多くのサッカーファンは専用スタジアムを求めている。
だが、この幻想を見事に打ち砕いてしまっているのが、あろうことか最高すぎるスタジアムを作ってしまった北九州なのだ。
なぜなら、こんなに最高の専用スタジアムを作ったのにお客さんはたいして増えていないし、強くなってもいないからだ。
北九州スタジアム、そしてギラヴァンツ北九州の存在こそが、身をもって具体的な失敗例を示してしまっている。
ただこれは北九州の責任というより、Jリーグのそもそもの仕組みの問題かもしれない。
今のJリーグにおいて上のカテゴリに昇格するには
①規格にあったスタジアムを作る、②サッカーで好成績を上げる
の主に二つが必要である。
しかしこれをタイミングよくそろえるのは、あまりに難易度が高すぎるのだ。
だから、例えば北九州スタジアムのようなJリーグの求めるスタジアムを作ることができたクラブは無条件に降格しない、
あるいは上のカテゴリに自動的に昇格できるといったような、「努力への報い」は何らかの形で必要ではないだろうか。
でないと、このままではサッカー専用スタジアムを作るメリットがあまりに感じられない。
「もしサッカーでいい成績を挙げられたとしたら、新しく作ったスタジアムを有効活用できます!」というのは、もちろんその逆もあり得るわけだ。
そりゃ投資先としてはリスクがデカすぎて、躊躇するのは当たり前である。しかもギラヴァンツ北九州という悪い見本も出来てしまっている。
このあたりの問題点を現在進行形で解決しようとしているのがBリーグである。
詳しいことは下記の記事にまとめているが、Bリーグではアリーナや観客数などで一定の基準を達成したチームは、無条件に上のカテゴリで戦えるルール作りが進んでいる。
Jリーグも全く同じにする必要はないが、今のJリーグが抱える問題をBリーグ方式で解決できる点はたくさんあるはずだ。
制度を変えたBリーグの行く末を見届けながら、Jリーグにも必要なところは取り入れるべきである。
いずれにせよギラヴァンツ北九州は幸か不幸か、最高すぎるスタジアムを作ってしまったばっかりにJリーグの運命を握らされてしまった、実はJリーグの最重要クラブだったのだ。
大げさかもしれないけど、大げさじゃないかもしれないよ。
索引を作りました!
他のスタジアム・アリーナは↓からどうぞ